ギター・マガジン40周年記念特別連載企画=『ギタリストなら絶対に聴くべき! 40枚の偉大な◯◯◯名盤』はギタマガWEBでも展開中! 2021年5月号では“モダン・ジャズ編”を掲載しています。ここでは本編で紹介された40枚の必聴名盤をベースに、編集部が“入門編”として厳選した40曲をまとめました。また、“そもそもモダン・ジャズってどの時代のどんな曲のこと?”という人のためにジャンルの解説もつけちゃいます! 聴いて、読んで、弾いてみて下さい!
文=久保木靖 プレイリスト作成=編集部
ビバップ革命を経て、“最もジャズらしいジャズ”へ
ロックにブルース・ロックやヘヴィ・メタル、プログレ、パンクなどがあるように、ジャズもその歴史の中で多くのスタイルが誕生した。“モダン・ジャズ”は、誤解を恐れずに言うならば、“最もジャズらしいジャズ”。お洒落なバーで流れている、あの音楽をイメージしてもらえばOKだ。それは具体的にどういったものを指すのか。まずは、ざっくりとジャズのスタイル変遷を見てみよう。
ディキシーランド・ジャズ(≒ニューオリンズ・ジャズ)[1910年代〜]
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スウィング・ジャズ[1930年代〜]
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ここがモダンジャズ
ビバップ[1940年代半ば〜]
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クール・ジャズ[1940年代終盤〜]
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ハード・バップ(≒ファンキー・ジャズ)[1950年代半ば〜]
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モード・ジャズ[1950年代終盤〜]
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フリー・ジャズ[1950年代終盤〜]
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クロスオーバー(≒ジャズ・ロック/フュージョン)[1960年代半ば〜]
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コンテンポラリー・ジャズ[1980年代〜]
※スタイル区分には諸説あります。
スウィング・ジャズまでは、“アドリブ=メロディを崩す”というのが基本だったため、Cメジャー曲の場合、Cメジャー・スケールでメロディを奏でるのが当たり前だった。これは、はずれた音が出てこないので耳馴染みはいいが、その分、緊張感がないのも事実。
そこに革命を起こしたのが、アルト・サックス奏者のチャーリー・パーカーだった。パーカーは、例えば、Cメジャー曲の中のG7コードの時にA♭音やE♭音といったCメジャー・スケールにない音を使うことで不安定な響きを作り、緊張感を生んだ。これにより、“アドリブ=まったく新しいメロディの創造”となっていく。
これは当時のプレイヤー/リスナー共に支持され、あっという間にジャズの主流へ。それがいわゆる“ビバップ革命”だ。このようなオルタード・テンションの使用のほか、コードの細分化(G7を[Dm7─G7]に分けるとか)や代理コードの使用(G7は増4度にあたるD♭7に置き換え可能)といったリハーモナイズ手法は、ジャズのみならず現代のポピュラー音楽の基礎にもなっている。
その後、ビバップへのアンチテーゼでクール・ジャズやモード・ジャズが生まれ、また、ファンキーな要素(と言っても16ビートではなく、ブラック・フィーリングが濃厚なものを指す)を取り入れたハード・バップも登場するが、いずれも音楽的な基礎はビバップにあり、上に示したスタイル変遷の中のビバップ〜モード・ジャズをひと括りにしてモダン・ジャズと呼ぶことが多い。
半世紀以上前に誕生した音楽をいまだにモダン・ジャズと呼ぶのは矛盾を感じるが、それとあえて区別するために、近年のジャズをコンテンポラリー・ジャズと呼ぶ慣わしだ。
“2人のチャーリー”という共通項を持つギタリストたち
モダン・ジャズの代表格としては、チャーリー・パーカーのほか、マイルス・デイヴィス(tp)やソニー・ロリンズ(ts)、オスカー・ピーターソン(p)、ビル・エヴァンス(p)、ジョン・コルトレーン(ts)、アート・ブレイキー(d)らの名前があがる。彼らはいわゆる“ジャズ・ジャイアント”と呼ばれる面々で、少なくとも現代の多くの日本人がイメージする、“もっともジャズらしいジャズ”を演奏した人たちだ。
おっと、チャーリー・クリスチャンは? クリスチャンはスウィング・ジャズ期の最終盤にシーンに登場し、ビバップ誕生前に他界している。ただし、それまで主に伴奏楽器とされていたギターで大々的にソロを弾いたクリスチャンのインパクトは大きく、同時にCメジャー曲の中のG7コードの時にFmの音を弾く(スケールにないA♭音が緊張感を生む)などの先進的な一面もあったため、“モダン・ジャズ・ギターの開祖”と呼ばれるわけだ。
実は、パーカーがサックスで提示したエネルギッシュで速いフレーズをギターで再現するのは非常に困難で、後進のギタリストがプレイの参考にしたのはクリスチャンその人。そのため、バーニー・ケッセルやタル・ファーロウ、ケニー・バレル、ウェス・モンゴメリー、ジム・ホールといったモダン・ジャズ期に登場したギタリストのほとんどが、クリスチャン奏法を発展させながらビバップの要素を取り込み、自己のスタイルを築いていった。
この、パーカーとクリスチャンという“2人のチャーリー”は、多くのモダン・ジャズ・ギタリストの共通項なのである。
*本記事はギター・マガジン2021年5月号に掲載されている企画、『ギタリストなら絶対に聴くべきモダン・ジャズの名盤40』と連動しています。
『ギター・マガジン2021年5月号』
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