『ソブ・ロック』 ジョン・メイヤー
【参加クレジット】
ジョン・メイヤー(vo,g,b,k)、ショーン・ハーレイ/ピノ・パラディーノ(b)、アーロン・スターリング(d)、レニー・カストロ(perc)、グレッグ・フィリゲインズ(k)、他
【曲目】
①ラスト・トレイン・ホーム
②シュドゥント・マター・バット・イット・ダズ
③ニュー・ライト
④ホワイ・ユー・ノー・ラヴ・ミー
⑤ワイルド・ブルー
⑥ショット・イン・ザ・ダーク
⑦アイ・ゲス・アイ・ジャスト・フィール・ライク
⑧ティル・ザ・ライト・ワン・カムズ
⑨キャリー・ミー・アウェイ
⑩オール・アイ・ウォント・トゥ・ビー・ウィズ・ユー
80年代ポップスのサウンドを
現代の解釈で再構築
本号で特集しているように、ジョン・メイヤーの最新テーマは80年代ポップスのリバイバル。77年生まれの彼にとって幼少期に聴き馴染んだ、音楽の原体験とも言えるサウンドに正面から向き合った形だ。とはいえ、パロディとして再現するのではなく、あくまで現代の音楽として再構築している点はさすが。80年代を意識したシンセの音もむしろ新鮮に響いてくる。ギター的にも突出して派手な部分こそ少ないものの、アグレッシブな①⑦⑩のソロや、③④⑤を始めとしたニュアンスたっぷりのソロ、多くの曲に彩りを与えるアコギ・ワークなど“オイシイ”要素は盛り沢山で、ギター・ファンの期待を裏切らない。偶然かもしれないが、5月に発売されたセイント・ヴィンセントの最新作も70年代初期〜中期をテーマにしたものだったことを考えると、今後の音楽シーンのトレンドが古き良き時代の懐古に向き始めているようにも思える。 (田中雄大)
『パラベラム』 イングヴェイ・マルムスティーン
【参加クレジット】
イングヴェイ・マルムスティーン (vo,g,b,k,etc)、ローレンス・ランナーバック(d)
【曲目】
①ウルヴズ・アット・ザ・ドア
②プレスト・ヴィヴァーチェ・イン・C#・マイナー
③リレントレス・フューリー
④平和を望むなら、戦いに備えよ
⑤エターナル・ブリス
⑥トッカータ
⑦ゴッド・パーティクル
⑧マジック・ブレット
⑨(ファイト) ザ・グッド・ファイト
⑩シー・オブ・トランキュリティ
まさにネオ・クラシカル・メタル究極形!
2年半ぶり新作に滲む“王者”の美学と情熱
自身が影響を受けたクラシック・ロック名曲カバー&ブルーズのルーツ探求の結晶たる前作『ブルー・ライトニング』から一転、約2年半ぶりの今作では『ライジング・フォース』以降脈々と研ぎ澄ませ続けてきたネオ・クラシカル・メタルの美学が壮麗に咲き乱れている。スラッシュ・メタルの中にラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」を超絶ソロ・プレイで織り込んだ①のドラマチックな疾走感。交響曲の歴史を己のギターで体現し尽くそうとするような②の速弾きの全能感。妖しくうねるリフ・ワーク、激しく音階を昇降するフレージングがBPM以上の加速度を描き出す④のスリル……。ボーカル曲もインスト曲も織り交ぜながら、音楽の枠組みも限界も超越するギター・オーケストレーションを展開するイングヴェイ。卓越したギター奏法はもちろん、個々の楽曲の構築美からも、音楽家としてのさらなる情熱を感じさせる意欲作。(高橋智樹)
『レイラ・リヴィジテッド』 テデスキ・トラックス・バンド
【参加クレジット】
マイク・マティソン/マーク・リヴァース/アリシア・シャコール(vo)、スーザン・テデスキ/トレイ・アナスタシオ/ドイル・ブラムホール2世(vo,g)、デレク・トラックス(g)、ブランドン・ブーン(b)、タイラー・グリーンウェル(d)、他
【曲目】
①アイ・ルックト・アウェイ
②ベル・ボトム・ブルース
③キープ・オン・グロウイング
④だれも知らない
⑤アイ・アム・ユアーズ
⑥エニーデイ
⑦ハイウェイへの関門
⑧テル・ザ・トゥルース
⑨恋は悲しきもの
⑩愛の経験
⑪小さな羽根
⑫イッツ・トゥー・レイト
⑬いとしのレイラ
⑭庭の木
⑮アイ・アム・ユアーズ(リハーサル)
至高のギタリストたちが魅せる
『いとしのレイラ』完全再現ライブ
デレク・アンド・ザ・ドミノスの大名盤『いとしのレイラ』を、トレイ・アナスタシオらスペシャル・ゲストを交じえて完全再現したライブ盤(2019年LOCKN’ Festivalの録音)。③の冒頭で聴ける、ギター四人囃子のチョーキングが唸りまくるソロの掛け合いから、後半にかけてムーディな即興演奏へと変わりゆくさま、④でのトレイ&ドイルによる甘く切ないソロのリレーなど聴きどころは多数だが、至高なのはやはりデレクの燃え上がるようなスライド・ギター・ソロ、これに尽きる。その規格外の表現力は言うまでもないが、何よりも楽曲に対しての深い愛情が込められているように感じてならないのだ。特に⑬の火を噴くようなソロは感涙モノ。デレクにとって『いとしのレイラ』とは、これほどまでにDNAに深く刻みこまれた作品なのかと、思わず圧倒されてしまう。両者の間にある深い繋がりが導いた熱演をご堪能あれ。(髙山廣記)
『662』 クリストーン・“キングフィッシュ”・イングラム
【参加クレジット】
クリストーン・“キングフィッシュ”・イングラム(vo,g)、他
【曲目】
①662
②シー・コールズ・ミー・キングフィッシュ
③ロング・ディスタンス・ウーマン
④アナザー・ライフ・ゴーズ・バイ
⑤ノット・ゴナ・ライ
⑥トゥー・ヤング・トゥ・リメンバー
⑦ユアー・オーレディ・ゴーン
⑧マイ・バッド
⑨ザッツ・オール・イット・テイクス
⑩アイ・ゴット・トゥ・シー・ユー
⑪ユア・タイム・イズ・ゴナ・カム
⑫ザッツ・ワット・ユー・ドゥ
⑬サムシング・イン・ザ・ダート
⑭ロック・アンド・ロール
⑮エンプティ・プロミセズ
次世代の“超大型”ブルースマン
“洗練”とは真逆の“ダウンホーム”が炸裂!
かれこれ7〜8年前、SNSに流れてきた巨体少年のとんでもなく熱のこもった演奏動画に思わずのけぞったっけ。その後、『Kingfish』で華々しくデビューした彼は今や22歳。この2ndは自身のルーツへ敬意を込めて、出身地ミシシッピ州北部の電話市外局番を冠した。ディープなボーカルとエッジの立った強烈なトーンで咆哮するギターは、ブラインドで聴いたら大御所の未発表テイクかと思ってしまうほどの貫禄だ。軽快なロックで幕を開けるものの、小細工のないバッキングを含めシンプルなセンスはやはりブルース。そんな中、フロントPUでジャジィなラインをくり出す④、ギターがソウルフルに歌い上げて感涙必至な⑨、マジック・サムの影が見え隠れするシカゴ・スタイルの⑫などに耳が吸い寄せられる。⑬で借用される「Key To The Highway」のコード進行は不滅だ! 順調に成長する本格派の動向に目が離せない。 (久保木靖)