『POP MUGIC』 井上銘
【参加クレジット】
井上銘(vo,g)【ゲスト】角田隆太/山本連(b)、石若駿/柵木雄斗(d)、宮川純/泉川貴広/渡辺翔太(k)、福家巌(strings)
“歌”という新たな武器を手に挑む新境地
これまでもジャズ・ギタリストの枠組みに収まらない意欲的な活動を展開してきた井上だが、なんと最新作では自身初のボーカルに挑戦。同世代の気鋭音楽家たちのプレイ、そして自身のギターに支えられ、タイプの違う5曲を歌い上げた。歌という新たな武器を手にしてギターや作曲への意識がどう変化していくのか、今後が楽みだ。
『イグジット・ワウンズ』 ザ・ウォールフラワーズ
【参加クレジット】
ジェイコブ・ディラン(vo,g)、他
優しく寄り添うタイムレスなフォーク・ロック
ボブ・ディランの息子ジェイコブが率いるバンドの9年ぶり7th。ややしわがれた歌声で語りかけるボーカルには確かなDNAを感じる。「Maybe Your Heart’s Not in It No More」でのスライド・ギターによる温かなフレーズや、軽やかなフォーク・ロック「Roots and Wings」の歌うようなアルペジオやオブリなど聴きどころ満載。
『サンバースト』 The Birthday
【参加クレジット】
チバユウスケ(vo,g) 、フジイケンジ(g)、ヒライハルキ(b)、クハラカズユキ(d)
パンク・ロック・ギターの真骨頂
前作からパンク/ハードコアに接近したThe Birthdayだが、今作ではよりシンプルな楽曲の構成へと変化。その中でもフジイケンジのギターが世界観を彩り、特に「ギムレット」での開放感のある力強いストロークとエモーショナルなピッキング・ハーモニクスが、愛と希望と祈りを歌うチバのボーカルに優しく寄り添う。
『Voyage』 FRETLAND
【参加クレジット】
鬼怒無月/竹中俊二(g)、有田純弘 (g,banjo)
日本の凄腕アコギ・トリオが始動!
日本最高峰のアコースティック・ギタリスト3人による1st作は、ジャズやブルーグラス、フュージョンなど幅広いスタイルを網羅したインスト・アルバム。冒頭を飾る「Voice of Calling Sun」では、グルーヴィなバッキングや印象的なメロディ、高速フラット・ピッキングまで飛び出す。アコギのウマみを凝縮した衝撃のデビュー作だ。
『silver lining』 磯貝サイモン
【参加クレジット】
磯貝サイモン(vo,g,etc)【ゲスト】ビクター・リー(g)、ヘンリク・リンダー(b)
コントラストが際立つポップ・チューン
デビュー15周年を迎えるSSW、磯貝サイモンの5th。キラキラしたポップスや、しっとりとしたバラード、ハード・ナンバーから和風ロック・チューンまで、幅広い楽曲が並ぶ。ロックからファンク、そしてカントリーなど、多彩なギター・プレイも楽しげだ。特に「平和ボケのこのシマから抜け出せ」の痛快なリフ・ワークは必聴!
『スーパー銭湯』 お風呂でピーナッツ
【参加クレジット】
樋口可弥子(vo)、若林純(g)
ソロの見どころ大! 異色の新人登場
パリコレでも活躍するモデルの樋口がボーカルという異色の新人ユニット。R&Bテイストのトラックに80s風味のギターがさりげなく華を添える一方で、「sento2」のソロでは速いパッセージを悠々と弾いていたりして、かなりのギター好きとみた。「海の影」もワウによる長尺ソロが出現。次作はさらに弾きまくるギター作に期待大!
『ネイティヴ・サンズ』 ロス・ロボス
【参加クレジット】
デヴィッド・イダルゴ(vo,g)、セザール・ロサス(g,cho)、ルイ・ペレス・ジュニア(g,d,cho)、コンラッド・ロザーノ(b,cho)、スティーヴ・ベルリン(k)
カバー作で魅せるいぶし銀の渋み
LAの5人組バンド=ロス・ロボスの最新フルは、バッファロー・スプリング・フィールドやザ・ビーチ・ボーイズなど、LA出身アーティストのカバー作となった。作品全体にレイド・バックした雰囲気が漂うが、いぶし銀のギターはさすが。タメの効いたブルージィなオブリや、トレモロを効果的に用いたフレーズ作りに、渋みを感じてほしい。
『fuzzy knot』 fuzzy knot
【参加クレジット】
田澤孝介(vo)、Shinji(g)
シドのShinjiがロック・ユニットを新たに始動!
シドのギタリストであるShinjiが新ユニットを結成。相方はRayflowerなどで知られる実力派の田澤孝介(vo)で、自身が影響を受けたという90年代J-POP全開のバラエティ豊かな楽曲はどれもクオリティ高し。伸びやかな歌声と絡み合うギターのオブリやソロがまさしく“アノ時代”を思わせるハードドライヴっぷりで好感度大。
『TOKYO MUNCH』 山弦
【参加クレジット】
佐橋佳幸/小倉博和(g)
日本最高のギター・デュオ、17年ぶりのアルバム
小倉と佐橋というスタジオ・ギタリスト界の頂点によるアコギ・デュオ、山弦がなんと17年ぶりにアルバムを発表! 2人それぞれのプレイに関しては今さら語るまでもなく絶品だが、やはり山弦が素晴らしいのはこの横綱2人による自在な押し引きの妙だろう。「Polka Dots And Moonbeams」のカバー、美しすぎて泣きました。
『ノーロラ〜冀望の色彩』 デワ・ブジャナ
【参加クレジット】
デワ・ブジャナ(g)【ゲスト】イミー・ウーイ(vo)、マテウス・アサト(g)、カリートス・デル・プエルト/ジミー・ジョンソン/ベン・ウィリアムス(b)、サイモン・フィリップス(d)、他
緊張感が張り詰めるジャズ・フュージョン作
インドネシアのロック・バンドGIGIのギタリストの11th。スピリチュアルなムードが加わったジャズ・フュージョンという意欲作だ。マテウス・アサトとの白熱したソロ・バトルを展開する「Swarna Jingga」や、不穏なリフから音階を降るフレーズがもたらす緊張感がある「Blue Mansion」を味わえば病みつきになること間違いなし!
『リトル・ブラック・フライズ』 エディ・ナイン・ヴォルト
【参加クレジット】
エディ・ナイン・ヴォルト(vo,g)、コーディ・マトロック(g)、レーン・ケリー/ブランドン・ブーン/マーヴィン・マハネイ(b)、アーロン・ハンブリック(d)、チャド・メイソン(org,etc)、他
土臭さ全開のブルース・ギター!
ジョージア発のシンガー&ギタリスト、“エディ・ナイン・ヴォルト”によるサザン・ソウル&ブルース・アルバム。土臭い匂いが全篇から立ち上がり、50s〜60sにタイムスリップしたかのような感覚へ陥る。白眉は「Dog Me Around」。カバー元はハウリン・ウルフだが、一音半チョーキングの連打など、荒ぶるソロはかなりバディ・ガイ的!
『ライブ・オン・ビール・ストリート:トリビュート・トゥ・ボビー・“ブルー”・ブランド』 ロッド・ブランド&ザ・メンバーズ・オンリー・バンド
【参加クレジット】
ジェローム・チズム/アシュトン・リカー(vo)、クリス・スティーヴンソン(vo,k)、ハロルド・スミス(g)、ジャッキー・クラーク (b)、ロッド・ブランド(d)、カーク・スモーザーズ(sax)、他
父へ手向ける往年のメンフィス・ブルース
ロッド・ブランドが、父であるボビー“ブルー”ブランドの名曲を演奏したライブ作。ボビーのバックを務め上げたメンバーとともに奏でる本場のメンフィス・ブルースが堪能できる。グルーヴィなドラムに絡みつくワウ・カッティングを繰り返す「Sittin’ On A Poor Man’s Throne」など、地味ながら気の利いたプレイも味わい深い。
※本記事はギター・マガジン2021年8月号にも掲載されています。