不規則な生活をずっとくり返してきているわりに、これまで大病にかかることもなく元気に過ごせているし、“これは丈夫な身体に産んでくれた両親のおかげかなぁ、感謝しなくちゃ”などと、綺麗事めいたことをたまに想いながら、まぁ油断しながら息をしてきたナメた人間だったのだ。
それがなぜだろう、バチでも当たったのか、今年の梅雨時期、別に身体に深刻な異常が出たとかではないのだけれど(右手親指の経年不調はあったにせよ)、突然遅れてきた五月病みたいな気分に包まれ、少しの間、難儀していましたとさ。
「体調優れない時にデカい音でギターを弾いて、背中で浴びると意外に復調するんだ」とここで書いた自分だけど(編注:『TAKE A DEEP BREATH』参照)、そのギターを抱えるのもなんか億劫に感じ、さすがに“こりゃマズい”と、予定していたLIVEを延期してもらったりで、その節は一部のヒトに迷惑かけてしまい失敬しました。怪しくない系の魔法にかけられてね。それで今回は、“いまみち復調してます”という夏休み日記を読んでくれっかしら。
コロナ禍でナマでヒトと会うのも難しい状況だし、メールで弱音を吐いたり、ギターを持つのも億劫なので、“鍵盤で曲作りとかしたら気分が変わるかも”と「打ち込み」作業に没頭してみたり、逆に「なにもしない日」を設けたりと、それなりにもがいていたある日、友人が「ランチなら誰にも遠慮しないでできるし」と誘ってくれてね。
とりとめないことを話しながら、野郎2人がおしゃれカフェで2時間ばかり過ごしたのだけど、あら不思議、ナマの力はすごいね。それまでの鬱々とした気分がウソのように消し飛んでしまった。それどころか、“やる、やる、と言っては、まるで夏休みの宿題のように先延ばしにしていたソロ・アルバム制作をしてなかったストレスも影響していたのかも……”ってな、前向きな気分まで湧いてきて。
「感情も音楽も、出口や目的のないまま、溜めているだけだと良くない。吐き出したらスッキリするんじゃないの?」という友人の一言に、“そうだなぁ、発酵/熟成なら喜ばしいけど、腐ったらしまいだしな”と思っていると、ダメ押しの一言。
「あのね、だいたいがいつまでも先延ばしにできる歳でもないこと自覚しないと」
わぉ! ケツ蹴られた。
そんなこんなの六月七月を経て、今月からプリプロに入ったことを報告したら「なんだ、元気じゃん。心配してランチ誘って損した。こんど奢り返しなさい」と笑われました。
まぁ、ギター持つのも億劫だからと「打ち込み」していた時も、キーボード叩く前にアコギでコード確認していたしなぁ。自分はギターから離れられないタイプだってことに、イマサラ気付かされたりもしたという、ショート・サマー・ダイアリーでござい。
そうそう、プリプロ作業中「打ち込み」オケ内のパートがナマに差し替わった瞬間の “血が通った” って感じはホントに魔法のようだ。写真の世界で言うマジックアワーみたいに尊いね。
ではまた!
いまみちともたか
Profile
いまみちともたか
いまみちともたか◎1959年生まれ。BARBEE BOYSのギタリストとして1984年にデビュー後、佐野元春や井上陽水のレコーディングに参加するなど、多方面で活躍。ほかにも、椎名純平らとのヒトサライ、自身がホストとなってゲストを迎えるスタジオ・ライブ・シリーズ=“カメを止めるな”を主催するなど、精力的に活動中。