2年4ヵ月ぶりとなる新作『サンバースト』をリリースしたThe Birthday。最新インタビューや使用機材を通してギタリスト=フジイケンジの魅力に迫る特集の初めは、『サンバースト』のディスク・レビューからスタート。今回はThe Birthday、そしてフジイケンジをリスペクトする爆弾ジョニーのギタリスト、キョウスケに筆を執ってもらった。
文=キョウスケ(爆弾ジョニー)
楽曲の振れ幅の広さに加え、
“らしさ”と“新しさ”を混ぜ合わせる巧みさを感じた。
The Birthdayの新譜を聴くと必ず思うことがある。1曲目から“ギターの音、良いな……”と。そして最後の曲が終わった時に“こんな風にギターが弾けたらな……”と。良い楽器を、良い弾き手が鳴らした時のサウンドがスピーカーから聴こえてくる。当たり前のように聞こえるかもしれないが、このように感じさせるアーティストはなかなかいない。ケンジさんのギターはいつも本当に素晴らしい。
今作は楽曲の振れ幅の広さに加え、“らしさ”と“新しさ”を混ぜ合わせる巧みさを感じた。何年もかけて研ぎ澄ましたような、まさに職人技と呼ぶにふさわしいギターが、時として歌に絶妙に絡み、時としてバンド・サウンドをより引き立たせ、時としてグルーヴをリードしている。
オープニング・ナンバーの「12月2日」では、のっけからまさにケンジさん節全開のリズムとニュアンスでギター・ソロが炸裂。続く「息もできない」では、歌の隙間と裏に散りばめられたオブリが彩りを加え、チバさんが弾くL ch.のギターと重なった瞬間、見事なまでにバンドに疾走感をもたらす。
「月光」のイントロにはエモーショナルさと瑞々しさが、「レボルバー」にはニューウェイブのような雰囲気があり、目新しさを感じたが、どちらの楽曲も若者には怖くてできないくらいムダが削ぎ落とされ、引き算のフレーズがバンドのダイナミクスを際立たせている。
「スイセンカ」では、12弦ギターの繊細なプレイが、どことなくUKパンク・バンドがアルバムの中で不意に放り込んでくる、泣けるナンバーを想起させる。かと思えば「ショートカットのあの娘」では一転し、それらを全部振り払うかのように、ラウドにドライブしながら突き進んでいく。
ギター・サウンドは今までのアルバムに比べて重心が下がり、ミドル寄りになった気がしたが、これがもし『サンバースト』というタイトルどおり、曇り空の雲の分厚さの表現としてギターのハイを落とした結果……というのは、さすがに深読みしすぎだろうか(笑)。
そういえばケンジさんがバンドに加入して今年で10周年と聞き、The Birthdayが結成10周年の時にキュウさんが“ミッシェルはデビューして9年で解散したから、もうキャリアで一番長いバンドになっちゃったよ”と話してくれたのを、ふと思い出した。ということは、ついにお互いがミュージシャン・キャリアの中で最長のバンド・メンバー同士になったのかと考えると、色々と感慨深かったりもする。しかし、本人たちにとっては“あー、そーなんだ”くらいどーでもいいことで、特に変わらずこの先もThe Birthdayとして演奏を続けていくのだろうな。
バンドが続いていくのは、特別だ。そんなことを思わせてくれる作品だった。
Profile
キョウスケ
1994年生まれ。北海道出身。2010年に爆弾ジョニーを結成し、2014年にメジャー・デビュー。バンドの楽曲制作を行なうほか、a flood of circle、忘れらんねえよ、町田康などのサポート・ギタリストも務めるなど、多方面で活躍。2019年には爆弾ジョニーのりょーめー(vo)、挫・人間/中華一番の金子声児(b)とSAMURAIMANZ GROOVEを結成した。
作品データ
『サンバースト』
The Birthday
ユニバーサル/UMCK-1690/2021年7月28日リリース
―Track List―
01.12月2日
02.息もできない
03.月光
04.ラドロックのキャデラックさ
05.レボルバー
06.アンチェイン
07.晴れた午後
08.スイセンカ
09.ショートカットのあの娘
10.ギムレット
11.バタフライ
―Guitarists―
チバユウスケ、フジイケンジ