岡田拓郎をナビゲーターに迎え、カテゴライズ不可能な個性派ギタリストたちの作品を紹介する連載、“Radical Guitarist”。第9回はポルトガル生まれのギタリスト、ラファエル・トラルが1994年にリリースした『Sound Mind Sound Body』をピックアップ。
文=岡田拓郎 デザイン=山本蛸
今回紹介する作品は……
『Sound Mind Sound Body』
ラファエル・トラル
AnAnAnA/DDD001/1994年リリース
―Track List―
01. A E R 4
02. Loopability I
03. A E R 7 E
04. Loopability II
05. A E 2(Live)
濁り気のない透明感のある和声、
緩やかな変化がもたらす無時間性。
1967年、ポルトガルはリスボンに生まれたラファエル・トラル。1980年代後半からポスト・パンク/エクスペリメンタル・バンドPop Dell’Arteで初期のキャリアを積み、その後アンビエント、コンテンポラリー、エレクトロニック、フリージャズなどの音楽に深く関わっていくこととなる。
1994年にリリースされた本作は、トラルにとって初のソロ名義のアルバムであり、ギター・ドローンの金字塔として長く親しまれている。「A E R 4」は、ギターの金属的な摩擦音がゆったりと漂うドローン。濁り気のない透明感のある和声が時間をかけて静かに変化していく様子に目を閉じて耳を傾けていると、遅回しで再生された美しい旋律が浮かび上がってくるようで、時間の感覚が麻痺したのかと錯覚させる。ブライアン・イーノ『Discreet Music』(1975年)をギターで演奏したかのような穏やかさだ。
断片的なギターの旋律が静寂の間を挟みながら爪弾かれる「A E R 7 E」も、20分という長尺ながら、すべての音が的確にあるべき所に配置されているような感覚を覚える。佐々木敦氏がトラルのドローン作を”マイブラ・ミーツ・アルヴィン・ルシエ”と評しているのは言い得て妙。
著者プロフィール
岡田拓郎
おかだ・たくろう◎1991年生まれ、東京都出身。2012年に“森は生きている”のギタリストとして活動を開始。2015年にバンドを解散したのち、2017年に『ノスタルジア』でソロ活動を始動させた。現在はソロのほか、プロデューサーとしても多方面で活躍中。