スティーヴ・エリオヴソン、コリン・ウォルコット『Dawn Dance』岡田拓郎の“Radical Guitarist”第10回 スティーヴ・エリオヴソン、コリン・ウォルコット『Dawn Dance』岡田拓郎の“Radical Guitarist”第10回

スティーヴ・エリオヴソン、コリン・ウォルコット『Dawn Dance』
岡田拓郎の“Radical Guitarist”第10回

岡田拓郎をナビゲーターに迎え、カテゴライズ不可能な個性派ギタリストたちの作品を紹介する連載、“Radical Guitarist”。第10回は南アフリカ出身のジャズ・ギタリスト、スティーヴ・エリオヴソンによる演奏が聴ける唯一の作品、『Dawn Dance』。ECM作品らしい美しい音像、息を呑むほど繊細な旋律をぜひ味わってほしい。

文=岡田拓郎 デザイン=山本蛸

今回紹介する作品は……

『Dawn Dance』
スティーヴ・エリオヴソン、コリン・ウォルコット

ECM Records/ECM-1198/1981年リリース

―Track List―

01. Venice
02. Earth End
03. Awakening
04. Song For The Masters
05. Wanderer
06. Dawn Dance
07. Slow Jazz
08. Africa
09. Memories
10. Eternity

モーダルな和声の上を鮮やかに飛び跳ねるギター

1954年生まれ。南アフリカ出身のジャズ・ギタリスト、スティーヴ・エリオヴソン。本盤は、オレゴンやエレクトリック期のマイルス・バンドにシタールやタブラといったインド音楽の要素を持ち込んだコリン・ウォルコットとのデュオ作。素晴らしい才能を持つギタリスト、エリオヴソンのプレイを聴くことのできる唯一のアルバムだ。

当時インド音楽に傾倒していたエリオヴソンとウォルコットは最高の組み合わせだった。出会うべくして出会った2人。モーダルな和声の上を鮮やかに飛び跳ねるギターとパーカッションによるインプロヴィゼーションは、張り詰めた緊張感を漂わせつつもどこか温かな印象を受ける。アコースティック・ギターを抱えたジャズ・アルバムということでラルフ・タウナーを引き合いに出されることも多いが、指弾きの柔らかな音色が印象的なタウナーに対して、エリオヴソンはピックを用いた芯のくっきりしたプレイを聴かせている。

本作で高い評価を得たエリオヴソンだが、2作目の録音のために渡欧。束の間の休暇で訪れていたアルプスでのスキー事故での怪我で録音は中止となり、そのまま音楽業界から完全に姿を消してしまう。その後も再発見されることのないまま、惜しくも2020年5月に逝去。エレキ・ギターを抱えた写真も残っているが、そのサウンドを耳にできる機会はなくなってしまった。

著者プロフィール

岡田拓郎

おかだ・たくろう◎1991年生まれ、東京都出身。2012年に“森は生きている”のギタリストとして活動を開始。2015年にバンドを解散したのち、2017年に『ノスタルジア』でソロ活動を始動させた。現在はソロのほか、プロデューサーとしても多方面で活躍中。

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