エリック・クラプトンの『Unplugged』という世紀のアコギ名盤のリリース30周年を記念し、作中ブルース・カバー曲をその元となったバージョンとともに紹介していく。今回は最新作『The Lady In The Balcony: Lockdown Sessions』でもカバーしている「Nobody Knows You When You’re Down and Out」。ベッシー・スミスを筆頭に様々なビッグ・アーティストがカバーしてきが楽曲だが、クラプトンのルーツは?
文=青山陽一
スクラッパー・ブラックウェルの影響
1923年にジミー・コックスによって書かれた本曲は29年にベッシー・スミスが吹き込んだことで広く知られ、後年ニーナ・シモンやサム・クック、オーティス・レディングらが秀逸な録音を残した。エリックは70年にデレク&ザ・ドミノズで一度取り上げたが、あれは72年になって『デュアン&グレッグ・オールマン』に収録されたオールマン兄弟による68年録音デモのアイディアをデュアンから伝授されたのではという気もする。
そして22年後のアンプラグド版では何よりスクラッパー・ブラックウェルの弾き語りがエリックをインスパイアしたはずだ。
リロイ・カーのサポートも知られるスクラッパーだが、彼自身のソロではベース・ノートをクロマティックに動かしつつストラムやメロディを織り交ぜる巧みな演奏。武骨ながら洗練も感じさせ、ここでのエリックに通じる局面も多い。
ベッシー・スミス版を思わせるアンサンブル
マーティン000-42を爪弾いてエリックがイントロをがリード。スティーヴ・フェローン(d)、ネイザン・イースト(b)、アンディ・フェアウェザー・ロウ(g)、レイ・クーパー(perc)のリズムとチャック・リーヴェルのよく転がるピアノがベッシー・スミス版(キーも同じCだ)を思い出させるノスタルジックなムードを盛り上げ、ケイティ・キッスーンとテレサ・ナイルズのコーラスも加わる。
中盤のギター・ソロはディミニッシュの部分も余計な事は考えずにペンタトニック一発で歌い切るエリックならではのスタイルだ。
作品データ
『Unplugged』
エリック・クラプトン
リプリーズ/1992年8月18日リリース
―Track List―
01. 「Signe」
02. 「Before You Accuse Me」
03. 「Hey Hey」
04. 「Tears in Heaven」
05. 「Lonely Stranger」
06. 「Nobody Knows You When You’re Down and Out」
07. 「Layla」
08. 「Running on Faith」
09. 「Walkin’ Blues」
10. 「Alberta」
11. 「San Francisco Bay Blues」
12. 「Malted Milk」
13. 「Old Love」
14. 「Rollin’ and Tumblin’」
―Guitarists―
エリック・クラプトン、アンディ・フェアウェザー・ロウ