ジェフ・ベックの数ある名盤から絶対にはずせない5作品を選んでみた ジェフ・ベックの数ある名盤から絶対にはずせない5作品を選んでみた

ジェフ・ベックの数ある名盤から
絶対にはずせない5作品を選んでみた

2023年3月13日(月)発売のギター・マガジン4月号は、1月10日にこの世を去ったジェフ・ベックの追悼総力特集。ギタマガWEBではその導入として、まだ彼を詳しく知らないギタリストのために、押さえておくべき基本的な情報をまとめていく。今回は彼が残した数多くの名盤から、ベック初心者にも絶対に聴いてほしい5作品を厳選した。ひとまずこの5枚からスタートして、自分が好きな時代の作品を探してみてほしい。

文/選盤=近藤正義 Photo by Watal Asanuma/Shinko Music/Getty Images

『Beck, Bogert & Appice』(1973年)
ベック・ボガート&アピス

『Beck, Bogert & Appice』ジャケット画像

歌モノのロック・ファンはこの1枚

ヤードバーズ、第1期ジェフ・ベック・グループ、第2期ジェフ・ベック・グループと、それまでロック・バンドをやってきたジェフ・ベックの集大成と位置づけたい。超ハードなサウンド、3人揃っての超絶テクニック、強力なボーカルとハーモニー、そしてよく聴けば意外にもメロディアスな楽曲の数々。これだけの要素を備えたトリオ編成のロック・バンドはほかに類を見ない。歌モノのロック・ファンがジェフ・ベックを聴き始めるのなら、まず本作から。聴けば、絶対にハマる。

『Wired』(1976年)
ジェフ・ベック

『Wired』ジャケット画像

プレイヤー必聴の最高峰インスト

キチッと作られた前作『ブロウ・バイ・ブロウ』に対して、本作はハードでダイナミックな感触が持ち味。聴けば誰もが、真剣勝負のような鬼気迫る弾きっぷりに圧倒されること間違いなし。各楽器、全部のパートが超絶なので、バンドをやっている人なら尚更のこと。ジャズ/クロスオーバー界のメンバーに囲まれ、バックが複雑なリズムだったり難解なジャズ・コードが使われても、ロックの王道であるペンタトニックで強引に弾き切ってしまうというベックらしさが貫かれている。そこが、ありきたりなフュージョン・アルバムにならなかった理由なのだろう。

『Flash』(1986年)
ジェフ・ベック

『Flash』ジャケット画像

名曲「ピープル・ゲット・レディ」収録!

80年代の半ばという音楽産業の最も華やかだった時期、レコード会社にやらされたという話もあるが、歌モノを中心に産業ロックを極めたベックを味わうのも一興。本作はコアなファンの評判はよろしくないが、ロッド・スチュワートと共演した「ピープル・ゲット・レディ」は最高の出来でPVも大評判。さらにインスト曲「エスケイプ」はグラミー賞にノミネートされるなど、商業的にはなかなかの大成功を収めた。ほぼ全編、指弾きで通した初のアルバムでもあることは、意外にも重要な事実。

『Performing This Week: Live at Ronnie Scott’s』(2008年)
ジェフ・ベック

『Performing This Week: Live at Ronnie Scott's』ジャケット画像

至高のライブ・テイクを味わう

21世紀になってからのベックは以前にもまして精力的なツアーを展開。スタジオ・アルバムがご無沙汰でも、ライブ・アルバムは数枚発表していた。その中で一番話題となった本作は、ロンドンのロニー・スコッツ・クラブで5日間行なわれたライブからベスト・テイクを収録。「レッド・ブーツ」、「哀しみの恋人達」などの有名曲に加えて、「ナディア」、「エンジェル」、「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」、「ホエア・ワー・ユー」といった比較的新しめの美しきキラー・チューンで聴ける、スーパー・テクニックは強烈。

『18』(2022年)
ジェフ・ベック&ジョニー・デップ

『18』ジャケット画像

親しみやすいベック流メロディ・プレイ

“ギター・オタクにしか理解してもらえない凄さ”というのもカッコいいのだが、その凄さを幅広い音楽リスナーにもわかってもらえるようアピールしたアルバムとして、本作は上手く作ってある。意気投合した相棒のボーカリスト、ジョニー・デップと組んで、純粋にやりたいことをやって楽しんでいるのがいい。ロックやソウルのカバー曲が大半なので、ギターでしか成立しないフレーズを弾いているのではなく、親しみやすい歌メロをベック流のトーンとテクニックで聴かせている。これならギターを弾かない人にもお勧めできる。

もう1枚聴くなら

『ジェフ』(2003年)
ジェフ・ベック

『ジェフ』ジャケット画像

このアルバムを含めたいわゆるデジタル3部作(編注:本作、『フー・エルス!』、『ユー・ハッド・イット・カミング』)は、オールド・ロック・ファンからはあまり評判がよくない。しかし、それは打ち込みのバックに拒否反応を示すファン層の場合のこと。むしろ若い音楽ファンには、ハイレベルに進化したデジタル・サウンドは受け入れられやすいのかもしれない。デジタル3部作の最終章である本作で、ジェフとトラックメイカーのコラボレーションは極まった。「ソー・ホワット」、「マイ・シング」の激しさ、「シーズンズ」、「JB’ズ・ブルース」、「ブルガリア」の美しさに酔う。

『ギター・マガジン 2023年4月号 (追悼大特集:ジェフ・ベック)』

定価1,595円(本体1,450円+税10%)