「Rollin’ and Tumblin」と、エリック・クラプトンとマディ・ウォーターズ 「Rollin’ and Tumblin」と、エリック・クラプトンとマディ・ウォーターズ

「Rollin’ and Tumblin」と、
エリック・クラプトンとマディ・ウォーターズ

エリック・クラプトンの『Unplugged』という世紀のアコギ名盤のリリース30周年を記念し、作中ブルース・カバー曲をその元となったバージョンとともに紹介していく。今回はマディ・ウォーターズの代表曲として知られる「Rollin’ and Tumblin’」。数多のバージョンがあるが、クラプトンの頭の中にあったのはどれだろうか?

文=青山陽一

マディ・ウォーターズの別テイク

オリジナルは「Roll And Tumble Blues」と題されたハムボーン・ウィリー・ニューバーンの29年録音。これを「Rollin’ And Tumblin’」と改題して50年に録音し、シカゴ・ブルースの古典に仕立て上げたのがマディ・ウォーターズだった。

シンプルなドラムとベースを従えてエレクトリック・スライドを聴かせるスタイルは、当時としてはかなり斬新だったはず。また、サブドミナントで始まりトニックの部分を3小節半続ける変則的なブルース進行はジュニア・パーカーの「Mystery Train」あたりとも近いムードを持っている。

しかし、同じ年に録音したベイビー・フェイス・リロイ・トリオ名義のバージョンでは、リトル・ウォルターをフィーチャーして自身はギターとバック・ボーカルでサポートに回っているが、マディの録音がキーAだったのに対してこちらはキーG。ハーモニカとスライド・ギターが並走する感じといい、エリックがイメージしていたのは間違いなくリロイ版(現在はリトル・ウォルター版として扱われることが多い)だっただろう。

馴染みの曲だが、ボーカルをとったのは初?

クリームの66年のデビュー作でもこの曲はジャック・ブルースの歌とハーモニカを前面にフィーチャーして録音され、ライブでも演奏される機会が多かった。当時のエリックはスライドは弾いていないが、明らかにリトル・ウォルター版のテンション感で演奏していたと思う。

そしてこの『Unplugged』ではウォルター、そしてクリームのバージョンと同じGキーだが、自ら公式に歌ったのはこの時が初めてだったはず。

ギターは再びウッドボディのリゾネーターを抱えてスライドをプレイ。フルバンド編成の後押しを受けたパワフルなパフォーマンスだ。

作品データ

『Unplugged』
エリック・クラプトン

リプリーズ/1992年8月18日リリース

―Track List―

01. 「Signe」
02. 「Before You Accuse Me」
03. 「Hey Hey」
04. 「Tears in Heaven」
05. 「Lonely Stranger」
06. 「Nobody Knows You When You’re Down and Out」
07. 「Layla」
08. 「Running on Faith」
09. 「Walkin’ Blues」
10. 「Alberta」
11. 「San Francisco Bay Blues」
12. 「Malted Milk」
13. 「Old Love」
14. 「Rollin’ and Tumblin’」

―Guitarists―

エリック・クラプトン、アンディ・フェアウェザー・ロウ