崎山蒼志の未知との遭遇 第7回:憧れのギタリストと私のマスト・ペダル 崎山蒼志の未知との遭遇 第7回:憧れのギタリストと私のマスト・ペダル

崎山蒼志の未知との遭遇
第7回:憧れのギタリストと私のマスト・ペダル

新世代のシンガー・ソングライター/ギタリスト、崎山蒼志の連載コラム。1人のミュージシャンとして、人間として、日々遭遇する未知を自由に綴っていきます。 月一更新です。

デザイン=MdN

ジャズ・ギタリスト、ジェフ・パーカーに胸打たれて。

 最近、ジェフ・パーカーというジャズ・ギタリストがとても好きです。トータスというグループのメンバーとしても知られる人で、ほかにも多岐にわたる活動をされてきた方ですね。ジェフ・パーカー氏の魅力、私がまず感じるのはピッキングの心地良さ、そしてジャズをルーツとして感じさせながらもジャンルの垣根を超えたフレージングで、聴くたびにいつも唸らされています。また最新作『Forfolks』での即興性における一音一音の間合い、豊かなメロディと美しいアンビエンス、内省的かつ開放的なアプローチには、より深く心を掴まれました。

 ジェフ・パーカー氏はモダン・ジャズにおいて、1人のミュージシャンとしての貢献(技巧的で飛び抜けて素晴らしい!など)よりも、音楽全体としての素晴らしさ、その音楽の中で表現しているアイディアのほうが大切だと仰っているそうで、確かに彼のフレーズは音楽に融和し、それでいてよりその音楽全体の旨味を引き出しているように思います。ソロの作品でも音楽全体としての素晴らしさを意識するジェフ・パーカー氏だからこそ、『Forfolks』はすべての音が相乗効果となるような即興演奏が繰り広げられているのだと感じます。

 Jeff Parker and The New Breed(作品名であり、この作品を演奏する際の編成名)では、わりとエッジの効いたブルージィな側面も見せていて、特にライブ映像などで時たま見られる鋭利に弾き倒すような姿もこれまたカッコいいです。ジェフ・パーカー氏のギター・プレイのアプローチはその時々の音楽によって変化し、けれど、どれもジェフ・パーカー味が強くあります。

 ジャンルレスでメロディックなフレージングだからというだけでなく、その弦へのタッチ感、強弱でも唄っているようなピッキングに、私は胸打たれています。また、フレージングの休符に妙があるように感じ、前の音の余韻と次に鳴る音への期待といいますか、「間」が素晴らしいジェフ・パーカー氏のギター・プレイが大好きです。

 音もいつも素晴らしく、楽器はギブソンES-335とギブソンES-150 がお気に入りなんだそうです。ES-150とルーパーなどを駆使し作られた『Forfolks』のような、演奏したものをそのまま使ったギターの独奏への憧憬が強まります。ですが、まだまだ私には到底できないと思いますのでコツコツと音楽の深淵に身を委ね勉強し、なによりもギターをもっと練習してゆきたいです。

 そんな私は、ワンマンでの東名阪バンド・ツアーが2月にありました。その中でエレキを弾く曲もたくさんありまして、ギターはギブソンの1973年製SGスペシャル、アンプはJC-120を使用しました。基本的な歪みはEarthQuaker DevicesのPlumesで、ブースターとしてRAT、そしてもっと暴れたい時にBeetronicsのSWARM(下の写真)というペダルを配置していたのですが、そのBeetronicsのSWARMが改めて面白すぎてご紹介したくなりました。

 これはファズを2オクターブでハーモナイズさせるペダルでして、ツマミも独特で、例えば「QUEEN」というツマミはハーモニーのレベルで、「FRIGHT」というツマミはフリーケンシー・モジュレーションのレスポンス調整、といった具合です。実を言えばイマイチよくわかっていないのですが、だからこそイジリがいがあると言いますか、買って一年、その引き出しにずっと魅了され続けているペダルです。サウンドはとにかく激烈で、メーカー名がBeetronicsなだけあって蜂を意識して作られているそう。ファズ自体の音は野太くジューシーでハーモナイズの音はシンセサイザーのような印象も受けます。確かに蜂のイメージはわかりますが、私は比較的耳障りの良い、破壊的サウンドだと感じます。このツアーを通して感じたことはたくさんあるのですが、あえてギターに絞ればBeetronicsのSWARMは、私にとってマスト・ペダルです。

著者プロフィール

崎山蒼志

さきやま・そうし。2002年生まれ、静岡県浜松市出身のシンガー・ソングライター。現在19歳。2018年、15歳の時にネット番組で弾き語りを披露、一躍話題に。独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。

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