アイヴィン・オールセット『Dream Logic』岡田拓郎の“Radical Guitarist”第20回 アイヴィン・オールセット『Dream Logic』岡田拓郎の“Radical Guitarist”第20回

アイヴィン・オールセット『Dream Logic』
岡田拓郎の“Radical Guitarist”第20回

岡田拓郎をナビゲーターに迎え、カテゴライズ不可能な個性派ギタリストたちの作品を紹介する連載、“Radical Guitarist”。第20回は、ノルウェー出身のセッション・ミュージシャン、アイヴィン・オールセットがECMに残した『Dream Logic』。彼の内面に秘めたる不思議な魅力が、澄んだテクスチャーの中から浮かび上がってくる1枚だ。目を瞑って、その世界観に没入してみよう。

文=岡田拓郎 デザイン=山本蛸

今回紹介する作品は……

『Dream Logic』
アイヴィン・オールセット

ECM Records/ECM 2301/2012年リリース

―Track List―

01. Close (For Comfort)
02. Surrender
03. Jukai (Sea Of Trees)
04. Black Silence
05. Active
06. Close (Variation I)
07. Reactive
08. Homage To Greene
09. The Whispering Forest
10. Close (Variation II)
11. The Beauty Of Decay

様々な風景を想起させるギターの手触り

ノルウェー出身。80年代にセッション・ギタリストとして頭角を現わし、ジョン・ハッセルやニルス・ペッター・モルヴェルからレイ・チャールズ(!)まで、縦横無尽な活動を続けてきたアイヴィン・オールセット。近年は数々の音響派コンテンポラリー・ジャズ作品への参加で注目を集めている。

グリッチやマシンバグを多用した攻撃的な側面もピックアップされるオールセットだが、名門ECMから2012年にリリースされた本作は、内省的で極めてサイレントな一面にフォーカスすることで、彼の不思議な魅力を浮き彫りにする。

ギターはもちろん、ベースやパーカッションといった楽器を用いた彼の1人多重録音が本作の根幹となっている。しかし、はっきりと目にも見えない、掴むこともできない。ある種映画的に展開される中で、寡黙なギターは時に“ぼんやり漂う霧”、“街灯が照らす海辺の波紋”、“迫り来る予感”、“郷愁”……など、多彩なテクスチャーを纏いながら、風景や感情を引き立たせる装置のように静かに聴き手を誘導していくかのようだ。

著者プロフィール

岡田拓郎

おかだ・たくろう◎1991年生まれ、東京都出身。2012年に“森は生きている”のギタリストとして活動を開始。2015年にバンドを解散したのち、2017年に『ノスタルジア』でソロ活動を始動させた。現在はソロのほか、プロデューサーとしても多方面で活躍中。

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