岡田拓郎をナビゲーターに迎え、カテゴライズ不可能な個性派ギタリストたちの作品を紹介する連載、“Radical Guitarist”。今回登場するのは、ギターを最も実験的に扱うアーティストの1人、ケヴィン・ドラム。かろうじて“ギター的な音”が聴き取れる、セルフ・タイトル作をご紹介しよう。
文=岡田拓郎 デザイン=山本蛸
今回紹介する作品は……
『Kevin Drumm』
ケヴィン・ドラム
Perdition Plastics/per007/1997年リリース
―Track List―
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多様な道具を使って生み出す新しい音
ケヴィン・ドラムは長いギター史の中でも最もラディカルなギタリストの1人だろう。弦を押さえて弾くこともなく、独創的なボイシングやエフェクト・ペダルを用いるわけでもない。そのサウンドは、ギターから発せられるサウンドを思い描くよりは、スーパーで品物を詰め込んでる際にビニール袋が立てる摩擦音であったり、真夏の室外機、線路の高架下、米びつに米を流し込んでいる時に聴こえる音に近いかもしれない。
これまでに200以上の作品をリリースしているが、ソロ1枚目に当たる本作『Kevin Drumm』は、その中でも“かろうじてギター的な要素が聴き取りやすい1枚”と言って差し支えないだろう。
ギターは特殊な改造がされた物ではなく(おそらく特殊なペダルも使われていないように聴こえる)、磁石、バインダー、クリップ、鎖、バイオリンの弓、電気ドリル、さらには爪切りなどを弦に挟んだり擦りつけたりして演奏される……といっても一体どうやってこの音が発せられているのかは皆目見当もつかない。
高速でカットアップされる金属摩擦、接触不良、強烈なフィードバック、静寂の合間に時折、緩んだギターの弦のような音が確認できるが、そのほとんど物音がギターによって発せられているとは驚きだ。
著者プロフィール
岡田拓郎
おかだ・たくろう◎1991年生まれ、東京都出身。2012年に“森は生きている”のギタリストとして活動を開始。2015年にバンドを解散したのち、2017年に『ノスタルジア』でソロ活動を始動させた。現在はソロのほか、プロデューサーとしても多方面で活躍中。