『映帶する煙』
君島大空
君島と“武蔵野”が浮かび上がらせる現代的カウンター精神のサウンド
アルバムとしては初作品。あまりに過剰な君島のこのエネルギーが、心地良さをも感じる音へと昇華されているのはなぜか? それは彼が東京・青梅の出身で、西多摩を拠点として活動していたことを知って腑に落ちた。
実験的なのに都会らしさを感じない、この音像の妙な落ち着き具合は、多摩・武蔵野の風景(特に一層美しい夕暮れ)を情景として持つ君島の心に理由があるのではないか(雑誌『東京人』“反骨の多摩、武蔵野”特集を一読頂ければ、君島の音楽と武蔵野の結びつきが浮かび上がると思う)。
しかし同時に、作中には、多摩・武蔵野=中心ではない周縁から出発する“カウンター精神”=ロックも見て取れるし、それでいてロックの常套手段である“くり返し“=ギター・リフを使わず、一度限りの音を明滅的に出現させて独自の音楽を作り上げる。一回性の音を出すに特化したChase Blissペダルの音、立つ鳥跡を濁さずの引き際が美しいファズのショート・ソロが象徴的。
(辻昌志)
【参加クレジット】
君島大空(vo, g, sitar, syn, prog)、西田修大(g)、新井和輝(b)、石若駿(d)
【曲目】
①映帶する煙
②扉の夏
③装置
④世界はここで回るよ
⑤19℃
⑥都合
⑦ぬい
⑧回転扉の内側は春?
⑨エルド
⑩光暈
⑪遺構
⑫No heavenly
ギター・マガジン2023年2月号
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