ESPエンタテインメント東京 ギタークラフト科 × 鈴木重伸(THE ORAL CIGARETTES)  第2回:木工・塗装 ESPエンタテインメント東京 ギタークラフト科 × 鈴木重伸(THE ORAL CIGARETTES)  第2回:木工・塗装

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ESPエンタテインメント東京 ギタークラフト科 × 鈴木重伸(THE ORAL CIGARETTES) 第2回:木工・塗装

ギター製作に必要な技術を総合的に学ぶことができる専門学校“ESPエンタテインメント東京”。この連載では、本校のギタークラフト科の学生が、鈴木重伸(THE ORAL CIGARETTES)とコラボしたオリジナル・ギターを製作する様子をお届けしていく。第2回は、木工をメインにその製作工程を紹介しよう。今回は、鈴木自身が木工作業の一部を実際に体験!

取材・文:錦織文子 撮影:星野俊
※本記事はギター・マガジン2023年8月号に掲載された同名の記事を再編集したものです。
※上写真右がゲスト・ギタリストの鈴木重伸氏、左が柿木幸之助さん、中央が菱山陽向さん。

これまでの学びで培った“手の感覚”が活きる製作

 ESP学園ギタークラフト科の学生たちが、THE ORAL CIGARETTESの鈴木重伸(g)のためのオリジナル・ギターを製作していく本連載。本誌6月号の第1回では、鈴木が思い描く理想のギターの仕様に関して打ち合わせを行ない、その設計図を学生たちが完成させていく様子をお届けした。

 今回は、本器の木工作業をメインに一部工程を紹介していこう。

製作学生 柿木幸之助さん
製作学生 柿木幸之助さん
製作学生 菱山陽向さん
製作学生 菱山陽向さん

 まず、次の写真で鈴木が手にしているのが、前回の取材後1ヵ月弱の期間で学生たちが仕上げたギターの現在の状態だ。

ゲスト・ギタリストの鈴木重伸(THE ORAL CIGARETTES)
ゲスト・ギタリストの鈴木重伸(THE ORAL CIGARETTES)

 ボディやネックの全体的な加工は大半が済んでおり、アーチ・トップやヘッドの形状など、設計図で思い描いたシェイプがほとんど実現されつつある。ネックにはすでにトラスロッドとその両端のカーボンロッドが仕込まれており、ライブなどでの使用に耐えうる強度も考慮された仕様になっている。

 また、ヘッドにはこれからトップ材が貼り付けられていくのだが、鮮やかな“アカンサス・インレイ”は本器のアイコン的な要素になりそうだ。全体の緻密な作りに、“短期間でこんなに繊細な作業ができるのは凄い!”と鈴木も驚いていた。

着々と完成に近付いていく鈴木重伸オリジナル・ギター!

アカンサスの葉をイメージしたヘッド・インレイ。
菱山さんが製作を担当したヘッド・インレイ。アカンサスの葉をイメージしたデザインを考案し、パールやアバロンを絶妙なバランスで組み合わせて見事に表現。

この出来栄えに“めちゃくちゃキレイ! 伝統工芸みたいな仕上がり”と鈴木。
指板のR加工を経たキレイなポジション・マーク。
柿木さんが最も神経を注いだのが、指板上へのインレイ加工。指板に均等な深さの溝を堀り、そこへぴったりとはまるようにインレイの形状を1つ1つ手作業で調整。

指板のR加工を経て、キレイなポジション・マークへと仕上がった。
“重さもちょうどいいし、形状もいい感じに仕上がってますね!”と驚く鈴木。
ボディやネックの加工・接合、トラスロッドの仕込み、指板のインレイ装飾やメイプル材のバインディング、溝切りを終えた鈴木のギター。

学生たち曰く“ライブでの軽量感が得られつつ、サウンドの重厚感を確保できるいい塩梅の重さの個体を選んだ”そうで、材選びから慎重にこだわっていったという。

“重さもちょうどいいし、形状もいい感じに仕上がってますね!”と驚く鈴木。ここから木工の最終仕上げや塗装の工程に進んでいく。

 そして、この日は実際の木工作業を鈴木にも体験してもらうことに! 学生のお手本を見ながら、ネック部分とボディ・トップの切り込みをカンナで削っていく作業の一部を行なう。“ネックの太さや形状はギタリストにとって特に大事な部分ですよね。これほど責任重大な作業をやってくれていると思うと本当に頼もしいです”と学生たちの努力を噛み締めていた。

木工作業の一部を鈴木が体験!

木工作業の一部工程を鈴木も体験!
本日は木工作業の一部工程を鈴木も体験!

学生のお手本を参考にして、ネック部分の削り加工に挑戦。平カンナで削りつつ、ジグ(鈴木のメイン・ギターのネック形状をもとに、レーザー・プリンターで製作したオリジナルの定規)を当てて形を確かめていく作業を丁寧にくり返していく。

鈴木は、“この果てしない作業をいかに慎重にやるかが大事なんですね”とその難しさを実感していた。

職人さながらの緻密な手作業が要。

ボディ・トップのコンター部分を平カンナで削り出していく。
ボディ・トップのコンター部分も平カンナで削り出していく。ここには最終的にローズウッド材を貼り付ける予定だ。

ちなみに、削る部分によってカンナの種類を使い分けており、カーブのついた形状へと削る際にはカンナ台に丸みのある“外丸カンナ”で仕上げることもあるそう。
緻密な仕上がりのアーチ・トップ。
学生たち曰く、“アーチ・トップ形状を整える作業が一番難しかった”とのこと。しかし、その職人さながらの緻密な仕上がりには鈴木も感心。

木工を仕上げていよいよ塗装開始!

生地着色後のボディをサンドペーパーで研磨。
取材の後日、木工作業が完了し、塗装の工程へ。まずは塗装の下準備として生地着色を行ない、サンドペーパーで研磨していく。これにより杢目の色味や塗装の具合が決定される重要な作業だ。
塗装作業を開始。
その後、いよいよ塗装作業を開始。最初に“ウッドシーラー”という塗料を吹き付ける。木材から出るヤニを止めるための作業で、ギター製作に不可欠な工程だ。

 今回の製作で最も重要な作業について学生たちに聞いてみると、“木工は機械による作業ももちろんありますが、あくまで手作業が大事になると思います。カンナで削りながら、手触りで何度も確かめることが重要ですね。このギターについても、アーチ・トップやインレイ、指板の加工などは特に繊細さと集中力が必要でした”とのことで、これまでの学びで培ってきた手の感覚がギター作りの要となるそうだ。その技術は鈴木のオリジナル・ギターにもしっかりと活きていた。

鈴木重伸プロフィール

すずき・しげのぶ●1990年生まれ、奈良県出身。THE ORAL CIGARETTESのギタリストとして2014年にメジャー・デビュー。ヘヴィでグルーヴィな楽曲を彩るロックなギターが持ち味。最新シングルは「Enchant」。

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