『ダイアグノウシス』
セン・モリモト
パーソナルからソーシャルへ視点を転換したロック・アティチュードに満ちた傑作
シカゴを拠点とするマルチ・プレイヤーの3年ぶりの新作。
ジャズに軸足を置きながらも、様々なジャンルをしなやかにミックスする才気抜群の作曲センスはさらに自由度を増す一方、リリックは社会システムへの懐疑や怒りのこもったソーシャルなものに仕上げられており、アーティストとしての強い野心と意欲を感じる。
それゆえか、過去作と比してよりロック的なアティチュードがあり、これまで以上にギターにフォーカスを当てた印象を受ける。
そのプレイは楽曲同様にユニークなアプローチに満ちており、ファズでうねりまくる①はオルタナティブ・ロック的なダイナミズムをはらんでいるし、プログレッシブな⑤ではリバーブを効果的に用いて楽曲の爆発感をより高めている。
ほんのりルーズなタイム感も実に心地良く、⑦での甘くマイルドなコーラス・サウンドによるバッキングや、不穏に歪んだギターをかき鳴らす⑨の痙攣具合などは官能的ですらある。
(山塚リキマル)
【参加クレジット】
セン・モリモト(vo, g, b, k, sax, syn, prog)、カイナ(vo, syn)、マイケル・カンテラ(b)、ライアン・パーソン(d)、他
【曲目】
①If The Answer Isn’t Love
②Bad State
③St. Peter Blind
④Diagnosis
⑤Pressure On The Pulse
⑥Naive
⑦Feel Change
⑧What You Say
⑨Surrender
⑩Deeper
⑪Pain
⑫Forsythia (レンギョウの旋律)
⑬Reality