毎週、1人のブルース・ギタリストに焦点を当てて深掘りしていく新連載『ブルース・ギター・ヒーローズ』。今回は“キング・オブ・ザ・ブルース”、B.B.キングのオススメ盤5選を紹介。まずはこれらを聴くべし!
文:久保木靖
B.B. King『Singin’ The Blues』(1957年/Crown)
初期音源をまとめた1stアルバムで、早くも代表曲が目白押し! ギターの音がまだ荒々しいものの、「Sweet Little Angel」などスロー・ブルースでは看板となるスクイーズ・チョーキングがすでに完成の域。「3 O’Clock Blues」や「Every Day I Have The Blues」はローウェル・フルソンのバージョンと比べるとスムーズに洗練されており、オリジナル以上にヒットしたのも頷ける。そんな中、時折顔を出すT-ボーン印のフレーズには思わずニヤリとしてしまうし、飛躍の大きなグリッサンドからはボトルネック奏法からのアイディア転用がうかがえて興味深い。
B.B. King『Live At The Regal』(1965年/ABC)
ブルース界最高の名ライブ盤。1st作から5曲はいずれも洗練度をアップ。ギター・トーンはスイートになり、ボーカルに勝るとも劣らないダイナミクスを見せる。また鋭いチョップ奏法が炸裂するや、水戸黄門に印籠を出された気分に(笑)。B.B.は基本的にバッキングをせず、歌の合間やソロのときだけギターを弾いていおり、この管楽器的な発想がとても新鮮。「Sweet Little Angel」のイントロなど、ギターの1プレイごとに狂乱する女性ファンの声を聞くにつけ、ブルースが黒人たちの大衆音楽であったことも改めて実感する。B.B.の絶頂期を捉えた1枚だ。
B.B. King『The Jungle』(1967年/Kent)
絶頂期のB.B.には捨て曲などないことを証明したばかりか、少なくとも日本ではB.B.のスタジオ録音では1〜2位を争う人気の編集盤。というのも、多くの曲が1961〜1962年に録音されたものだからだ。「Five Long Years」や「The Worst Thing In My Life」といったスロー・ブルースでの凄み、チョーキングの鋭さは右に出る者なし! 「It’s A Mean World」ではオリジナルのT-ボーン風のイントロとハネたリズムで自身のルーツを顕示。ただ、タイトル曲のキメ部分でオーバー・ダビングされたホーンとドラムがズレてしまっているのは残念。
B.B. King『Completely Well』(1969年/Bluesway)
のちにイーグルスなどのプロデュースで知られることとなるビル・シムジクのプロデュースのもと、ヒュー・マクラッケン(g)やジェリー・ジェモット(b)を含むニューヨークの精鋭部隊をバックに、アーバンなファンキー・ブルースを展開した1960年代最後のスタジオ作。B.B.印のギター・プレイに安心すると同時に、「So Excited」などにはマクラッケンにもソロ・スペースが与えられ、「You’re Mean」ではバトル気味のセッションに突入。そして、ブルースをアダルトなポップスに昇華させた「The Thrill Is Gone」は、B.B.を新たなステージへと導いた。
B.B. King & Eric Clapton『Riding With The King』(2000年/Reprise)
『From The Cradle』(1994年)でブルースに回帰していたクラプトンが、満を持して作り上げた夢の1枚。B.B.側から見ても、これまでのロック系ミュージシャンとのセッション色の強い共演作に比して熱が入っている。タイトル曲などロック・テイストもあるが、大半はブルースの有名曲。スロー・ブルース「3 O’Clock Blues」や「When My Heart Beats Like A Hammer」での2人の絡みや表現力は鳥肌モノ。また、共にアコギを爪弾く「Key To The Highway」などの微笑ましさと言ったら! グラミー受賞&B.B.史上最高のセールスなど、良いこと尽くし。