Live Report|Tak Matsumoto Tour 2024 -Here Comes the Bluesman-@豊中市立文化芸術センター大ホール Live Report|Tak Matsumoto Tour 2024 -Here Comes the Bluesman-@豊中市立文化芸術センター大ホール

Live Report|Tak Matsumoto Tour 2024 -Here Comes the Bluesman-@豊中市立文化芸術センター大ホール

2020年にリリースされたTak Matsumotoの12枚目のソロ・アルバム『Bluesman』。もともと2020年に予定されていた本作のリリース・ツアーがコロナ禍で延期になり、2024年5月に“Tak Matsumoto Tour 2024 -Here Comes the Bluesman-”としてようやく実現した。ここでは、5月25日(土)、26日(日)に行なわれた大阪・豊中市立文化芸術センター大ホールでのライブ・レポートをお届けしよう。

文=西本勲 ライブ撮影=VERMILLION

出身地である大阪・豊中市で
ツアー・ファイナルを敢行

Tak Matsumoto
©VERMILLION
©Dynamic Planning・TOEI ANIMATION

松本孝弘の8年ぶりとなるソロ・ツアー、“Tak Matsumoto Tour 2024 -Here Comes the Bluesman-”が今年5月に開催された。国境を超えて高く評価される音楽性とポピュラリティを兼ね備えた松本らしいパフォーマンスで、長い間待ちわびたファンを喜ばせたツアーとなった。中でも、5月25日(土)・26日(日)に松本の出身地である大阪府豊中市で行なわれた最終公演は、地元をあげて凱旋ライブを盛り上げる温かいムードもあって大盛況だった。

もともとこのツアーは、2020年リリースのソロ・アルバム『Bluesman』に合わせて実施されるはずだったが、コロナ禍で延期に。2021年に振替公演が発表されるも再び延期となり、それが今年ようやく実現した。会場は延期前と異なり、BLUE NOTE TOKYO、Billboard-Live東京&大阪、そしてツアー・ファイナルが豊中でのホール公演。松本は豊中市立文化芸術センター大ホールには2017年にB’zのツアーで一度訪れており、地元への凱旋というだけでなく、このホールにも“帰ってきた”ことになる。ホール内のコーヒーショップには、“おかえりなさい 松本さん”と書かれたメッセージボードが掲出されていた。

隣接するアクア文化ホールでは、豊中市の高校生バンドによる軽音楽フェスティバルが昼間に開催されていた。実は、松本は2018年から同市の市文化芸術振興基金に寄付を行なっており、寄付金は市内高校の軽音楽部で機材の購入などにあてられている。そんな松本に対する感謝の気持ちを込めて高校生たちが企画したこのイベントには、松本からサプライズで花のプレゼントが贈られていた。

さらにその2階には、普段は市役所に展示されている松本の手形やパネルなどを集めた“豊中凱旋公演応援コーナー”を設置。ライブ開場時間のかなり前から多くのファンが集まり、長い列を作っていた。

レア曲や最新カバーも織り交ぜた
ツアーの完全版とも言えるセットリスト

Tak Matsumoto
©VERMILLION
©Dynamic Planning・TOEI ANIMATION

会場内に入ると、ステージの背後に広がったゴージャスなドレープ・カーテンと2基のシャンデリアが本番への期待を高める。やがて客電が落ち、関西弁で“帰ってきたで!”という挨拶と共に松本が登場。昨年配信リリースされた「EPIC MATCH〜the match everyone wanted〜」でライブが始まった。一聴して彼のギターとわかる、伸びやかで力強いトーンがホールを満たす。BLUE NOTEやBillboard-Liveのような親密さ、一体感も大きな魅力だが、1つ1つの音が輪郭を保ったまま広い空間に響きわたり、それに包まれる快感はホールだからこそ味わえるものだ。

この日のセットリストは、BLUE NOTEとBillboard-Liveで公演別に演奏されたラインナップに+αを加えた、ツアーの完全版と言える選曲。『Bluesman』からは5曲が散りばめられ、そこに昨年〜今年にかけてリリースされた配信シングル3曲と、以前のアルバムからの曲が絶妙な組み合わせで披露された。その中には、“ライブで演奏するのはリリース以来ほとんど初めて”という「Long Distance Call」(1992年)のようなレア曲もあり、序盤のハイライトとなっていた。

中盤には、ラリー・カールトンとの共作アルバム『TAKE YOUR PICK』(2010年)から「Tokyo Night」を演奏。2014年以降、松本のソロ・ライブに参加している大賀好修(g)と共に、息の合ったツイン・リードを聴かせた。この曲に限らず、フレーズ単位で松本のプレイを緻密に支える大賀のギターも聴きどころの1つだった。

同じく中盤では、今夏リリース予定のカバー・アルバム『THE HIT PARADE Ⅱ』から、1975年のTVドラマ『俺たちの勲章』のメイン・テーマが披露された。この曲を中学生の頃に聴いたという松本は、演奏前のMCで“当時はまだギターを弾いてなかったけど、ギターの音に凄く惹かれた。今思うと、その時からギターを弾く運命だったのかも”と、楽曲への想いを説明。吉田拓郎の作曲による、どこか郷愁を誘うメロディを歌心たっぷりに奏でる松本。彼のルーツの1つをオーディエンス全員が共有した温かい時間であった。

ピックと指弾きを巧みに使い分け
幅広いニュアンスでギターを歌わせる

Tak Matsumoto & Sensation
©VERMILLION
©Dynamic Planning・TOEI ANIMATION

今回のツアーでバックを務めたのは、前述の大賀を含む4人組インストゥルメンタル・ロック・バンド、Sensation。職人集団らしい安心感がありつつ、聴かせどころではグッと前に出る。その押し引きのバランスが素晴らしかった。

途中、松本が一旦ステージから離れ、Sensationをフィーチャーしたコーナーを挟んでライブは後半へ。ミディアム/スロー系の曲から徐々に温度を上げていき、映像を交えた演出も登場。豊中公演のみ演奏された「Ups and Downs」(2016年)では、ステージ前に下りた紗幕いっぱいに浮世絵モチーフのビジュアルが投影され、これもまたホールだからこそ映える演出で会場を湧かせた。

本編ラストは『Bluesman』冒頭の「BOOGIE WOOGIE AZB 10」を、メンバーのソロ回しも入れて華やかに演奏。アンコールは、松本がボーカルをとる「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」のカバーと、定番曲「#1090 -Million Dreams-」(2016年)で締め括った。メンバー全員で両手を挙げて一礼し、“ホンマおおきに!”と感謝を伝えた松本に観客も総立ちとなり、大きな拍手と歓声で応えていた。

最後に、この日の使用ギターについて触れておこう。ライブの始まりと終わりはギブソンのシグネチャーDCを派手に鳴らし、それ以外はビンテージを含む様々なレス・ポールを表情豊かにプレイ。もちろん、同じギターでもピックと指弾きを巧みに使い分け、幅広いニュアンスで“歌って”いたのは言うまでもない。その結果、ほぼ全編がインスト曲のライブでありながら、決して冗長にならず、ただ音の波に身を委ねて楽曲の世界に浸っていられる。そんな満足感の高い2時間を過ごすことができた。

ギタリストとしての長いキャリアの中で、自身のトーンをひたすら磨き抜いてきた松本。その確信に満ちたフレーズはギター・マニアを唸らせる一方で、特別な知識を持たない人の耳にも届き、心を震わせる。この日、満員のホールでそのことを改めて強く実感した。前述した新しいカバー・アルバム『THE HIT PARADE Ⅱ』や、20年ぶりとなるTMG(TAK MATSUMOTO GROUP) の全国ツアーも楽しみでならない。

なお、豊中公演で使用された機材の詳細は、ギター・マガジン2024年8月号(7月12日発売)でレポートする予定だ。

Tak Matsumoto Tour 2024 -Here Comes the Bluesman-
5月25日(土)・26日(日)

豊中市立文化芸術センター大ホール

【Setlist】
01. EPIC MATCH〜the match everyone wanted〜
02. Here Comes the Taxman
03. BATLLEBOX
04. Wanna Go Home
05. Long Distance Call
06. Island of peace
07. 花火
08. Tokyo Night
09. 俺たちの勲章テーマ
10. Rain Sounds
11. Waltz in Blue
12. 華
13. THE WINGS
14. Rainy Monday Blues〜茨の道
15. Ups and Downs
16. GLORIOUS 70
17. BOOGIE WOOGIE AZB 10

-Encore-
18. 港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ
19. 1090 -Million Dreams-

ギター・マガジン2024年8月号
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7月12日(金)発売のギター・マガジン2024年8月号では、豊中公演で使用されたTak Matsumotoの機材をご紹介!