毎週、1人のブルース・ギタリストに焦点を当てて深掘りしていく連載『ブルース・ギター・ヒーローズ』。今回はフレディ・キングのオススメ盤5選を紹介。まずはこれらを聴くべし!
選・文=久保木靖
Freddie King『Freddy King Sings』(1961年/King)
インスト「Hide Away」のヒットを受けて作られた“ボーカル入り”の1st作。収録曲のうち「I’m Tore Down」や「See See Baby」など4曲がヒット・チャート入り。「Have You Ever Loved A Woman」での壮絶とも言える熱唱は、以後スロー・ブルースでの定番スタイルに。ギター・プレイにもシカゴ・ウエスト・サイド派としてライバルたちと切磋琢磨してきた成果が表れ、それはB.B.キング・スタイルにシカゴとテキサスの風味を加え、タメと突っ込みを活かした独自スタイルとして開花。音が聴こえてきそうなジャケットのギターはレス・ポールのゴールドトップだ。
Freddie King『Let’s Hide Away And Dance Away』(1961年/King)
フレディのスロー・ブルースと並ぶもう1つの魅力、“ギター・インスト”。本作は、「Hide Away」と「San-Ho-Zay」の2大ヒットを含むインスト集で、背景には「Honky Tonk」(ビル・ドゲット)や「Rebel Rouser」(デュアン・エディ)といったR&B〜ロックのインスト・ブームがあった。ソニー・トンプソン(p)との共作によるダンサブルな曲が並び、フィンガー・ピックによる鋭利なトーンで絞るように音を放つ。ちなみに、「Hide Away」はハウンド・ドッグ・テイラーが演奏していた曲が元ネタ。なお、『Goes Surfin’』(1963年)はサーフ・ロックの流行を受けて本作に波の音を被せたもの。
Freddie King『Freddie King Is A Blues Master』(1969年/Cotillion)
キング・カーティスが仲間のアラン・トゥーサンらを引き込み、さらにビリー・バトラー(g)やジェリー・ジェモット(b)らNYの一流を揃え、R&B/ファンクを加味した新しいブルースへフレディをアップデートすることに成功。リメイクされた「Hide Away」や「Wide Open」(もとは「(In The Open)」)はその象徴だ。ホーン・セクションをはじめとしたアレンジのメリハリが利いており、完成度が極めて高い。スローなボーカル入りが多い前半ではスクイーズ・チョーキングが端正にキマり、インスト中心の後半ではゴリ押しのシーケンス・フレーズがドライヴする。
Freddie King『Getting Ready…』(1971年/Shelter)
レオン・ラッセルのレーベルに移籍しての第1弾。全体としては、これまでのファンキー・ブルースにスワンプ・ロックなテイストが加味された形だ。とは言え、冒頭のバラード「Same Old Blues」での熱唱と泣きのギターにいきなり魂が大きく揺さぶられる。一方で、第2期ジェフ・ベック・グループで有名な「Going Down」もあり、重戦車のごときパワーとロック・シーンを見据えたかのようなブチ切れ気味の激しいギター・プレイにも圧倒されること必至だ。「Dust My Broom」や「Walking By Myself」ではアコギを手にシカゴ・ブルースをオマージュ。
Freddie King『1934-1976』(1977年/RSO)
晩年契約していたRSOレーベルがフレディの死後にリリースした追悼盤で、1974〜1976年のライブ/スタジオの未発表音源で構成されている。とは言え、個人的には本作がフレディ最大の名盤と断言! のっけからエグい音でチョーキングをキメる「Tain’t Nobody’s Biz-Ness If I Do」を聴けばスクイーズ派の最高峰であることを再認識させられるし、また後半4曲はクラプトンとのハート・ウォーミングなセッションで、特に「Gambling Woman Blues」や「Farther On Up The Road」での掛け合いは至高! スライドをプレイしているのはジョージ・テリーだ。