毎週、1人のブルース・ギタリストに焦点を当てて深掘りしていく連載『ブルース・ギター・ヒーローズ』。今回はT-ボーン・ウォーカーのオススメ盤を5枚紹介。まずはこれらを聴くべし!
選・文=久保木靖
T-Bone Walker
『The Complete Capitol / Black & White Recordings』
(1995年/Capitol)
絶対的な入門盤として日本で編集された『モダン・ブルース・ギターの父』(東芝EMI→ユニバーサル)があるが、個人的に“キャピトル/ブラック&ホワイト期に捨て曲なし!”なので、この3枚組をチョイス。ブルース界に衝撃を与えた「I Got A Break Baby」、大スタンダードとなった「Call It Stormy Monday」、インストの「T-Bone Jumps Again」など、伝説を築き上げた1940〜1947年の音源を網羅。ジャジィなコンボを従え、4ビートやシャッフルでクールに歌い、そしてシングル・ノートのソロをくり出す。パターン化されてはいるが、これが深い味わいというもの!
T-Bone Walker
『The Complete Imperial Recordings, 1950-1954』
(1991年/EMI)
1950年代前半のインペリアル期の全録音をまとめたもので、前掲のキャピトル/ブラック&ホワイト期同様、レジェンダリーな演奏が連なる必聴盤! 力強くドライブするインストの「Strollin’ With Bone」、イントロから“シグネチャー・リック”が炸裂する「You Don’t Love Me」、儚げなプレイが印象的なスロー・ブルース「Life Is Too Short」など、よりパワー・アップした演奏がぎっしり。強化されたホーン・セクションとギターの絡みなど、綿密なアレンジもかっこいいことこのうえない。「Vida Lee」や「Strugglin’ Blues」では「Stormy Monday」で採用されなかった“ストマン進行”が聴ける。
T-Bone Walker
『T-Bone Blues』
(1959年/Atlantic)
T-ボーンの活動初期はSP盤時代だったので、アルバムとしては本作が1st作で、シカゴ録音(1955年)とロサンゼルス録音(1956〜57年)からなる。ギターを弾き倒すインスト「Shufflin’ The Blues」も良いが、輪をかけて面白いのは、R.S.ランキンとバーニー・ケッセルとのリレーが炸裂する「Two Bones And A Pick」と「Blues Rock」だ。ジュニア・ウェルズやジミー・ロジャースらシカゴ勢が加わった「Play On Little Girl」はミスマッチ感が否めないが、これはこれで貴重。「Why Not」をヒントに、ロジャースは自身の「Walking By Myself」を作ったという。
T-Bone Walker
『Funky Town』
(1968年/Bluesway)
プレイ・スタイルのマンネリ化の打破と、健康不安により鈍化していた活動からの再起を賭けて放ったファンキー作。ロイド・グレン(p)やポール・ハンフリー(d)ほか、のちのJB’sを彷彿するブラス・セクションが御大をバックアップ。メル・ブラウンによる野暮ったい音色の16ビート・カッティングも意外なほどキマっている。T-ボーン自体はボーカルもギターもいつもどおりなのだが、なんら違和感ない……つまり、もともとファンキーな要素を備えていたということ。プロローグ的な「Goin’ To Funky Town」はタイトルに反して、アダルトな4ビート・インスト。
T-Bone Walker
『Every Day I Have The Blues』
(1969年/Bluestime)
セールス的に不発だったことから見逃されがちな隠れ名盤。ギブソンのBarney Kessel Modelを掲げたジャケットがクールだ。ルイ・シェルトン(g)やトム・スコット(sax)ら若手とのジャム的な雰囲気の中、確かな存在感を誇示するT-ボーン……それを示すことで、ロック世代にアピールする狙いがあったと思われる。ジョン・リー・フッカーの「Shake It Baby」ではディストーション・ギターと外連味たっぷりなサックスを向こうに回して我が道を行く。艶っぽくアレンジされたタイトル曲や社会派の「Vietnam」などで、まだまだ現役であることを誇示した。