T-ボーン・ウォーカーの名演を堪能するプレイリスト 〜ブルース・ギターをアップデートした革新的な15曲 T-ボーン・ウォーカーの名演を堪能するプレイリスト 〜ブルース・ギターをアップデートした革新的な15曲

T-ボーン・ウォーカーの名演を堪能するプレイリスト 〜ブルース・ギターをアップデートした革新的な15曲

毎週、1人のブルース・ギタリストに焦点を当てて深掘りしていく新連載『ブルース・ギター・ヒーローズ』。今週はT-ボーン・ウォーカーの名演を堪能する、全15曲入りのプレイリストをお届け!

文=久保木靖

ブルース・ギターをアップデートした革新的な15曲

流通して間もないエレクトリック・ギターを手に、画期的なシングル・ノート奏法を開拓した真のパイオニア。その影響はB.B.キング、フレディ・キング、アルバート・キングの3大キングからチャック・ベリーを始めとした多くのロック・ギタリストをとおし、間違いなくあなたの周りにいるロック・ギター入門者にも波及している。

今となってはありきたりの基本中の基本のフレーズ。しかし、それを“発明”した功績はギター史の中でもひときわ大きいものだ。そんなT-ボーン・ウォーカーに思いを馳せ、深い味わいとドライブ感に満ちたギター・プレイを堪能していただきたい!

【プレイリスト収録曲】
①「Strollin’ With Bone」
②「T-Bone Jumps Again」
③「Shufflin’ The Blues」
④「Call It Stormy Monday(But Tuesday Is Just As Bad)」
⑤「Bobby Sox Blues」
⑥「I’m In An Awful Mood」
⑦「Inspiration Blues」
⑧「T-Bone Shuffle」
⑨「I Got A Break Baby」
⑩「T-Bone Boogie」
⑪「Vida Lee」
⑫「You Don’t Love Me」
⑬「Two Bones And A Pick」
⑭「Stormy Monday Blues」
⑮「Riffette」

まずはゴキゲンなインストを3曲連続で。

とびきりかっこいいホーン・アレンジに導かれるジャンプ風味の①「Strollin’ With Bone」(1950年)②「T-Bone Jumps Again」(1947年)、シンプルなコンボをバックにした③「Shufflin’ The Blues」(1955年)、いずれもシグネチャー・リックがてんこ盛りだ。

次の5曲はブラック&ホワイト/コメット期(1940年代)の代表的名演。

大スタンダードの初演である④「Call It Stormy Monday(But Tuesday Is Just As Bad)」における9thコードを使ったバッキングは、T-ボーンを始めとしたテキサス系ブルース・ギタリストの常套パターンだ。

イントロにも注目。⑤「Bobby Sox Blues」でディミニッシュ・コードをベンドする荒技が登場したかと思えば、⑥「I’m In An Awful Mood」では下降する9thコードに13thを織り交ぜている。共にT-ボーンの専売特許。

⑦「Inspiration Blues」⑧「T-Bone Shuffle」はバンドの演奏もさることながら、T-ボーンのプレイもジャジィな要素が満載。特にトランペット・ソロ時のバッキング・リフやシンコペーションを利かせたコンピングがスウィンギーにキマっている。

そして、⑨「I Got A Break Baby」がブルース・ギターの大きな一歩、1つのスケール(マイナー・ペンタトニック・スケール、時にM3rd、6th、9thを付加)を大々的に活用した最初の曲である。1942年のCapitol録音。

⑩「T-Bone Boogie」はロックンロールにそのまま転用できるフレーズをワイルドなトーンで炸裂させた怒涛のジャンプ・ナンバー。1944年のRhumboogie録音。

次の2曲はインペリアル期(1950年代前半)のもの。

夫人の名を冠したスロー・ブルース⑪「Vida Lee」では、「Call It Stormy Monday」で採用されなかった“ストマン進行”が登場。
一方、ホーン・アレンジがより洗練された⑫「You Don’t Love Me」だが、冒頭のソロでT-ボーン印のフレーズが顔を出すたびに思わずニヤけてしまう。

⑬「Two Bones And A Pick」は『T-Bone Blues』(1959年)からで、3人のギタリストのソロ・リレーが白熱! 順番は“T-ボーン・ウォーカーJr”と名乗っていた時期もあるR.S.ランキン→ジャズ・ギタリストのバーニー・ケッセル→T-ボーンだ。

⑭「Stormy Monday Blues」はファンキー路線の同名作(Wet Soul/1970年)からのバージョン。リズムを強調したR&B調にリメイクされており、ジョニー・コープランドがリズム・ギターを担当している。

ラスト⑮「Riffette」はボーナス・トラック的にフレディ・スラック(p)楽団に客演したビッグバンド・ジャズ。ジャズ・ギタリストよろしく4つ刻みをしていたかと思えば、チャック・ベリーに引き継がれる異弦同音フレーズが飛び出す。これ、1942年の演奏である。ロックンロール誕生の13年前!