連載:『Player』盛衰記 第35回|エリック・クラプトン伝説の誕生 連載:『Player』盛衰記 第35回|エリック・クラプトン伝説の誕生

連載:『Player』盛衰記 第35回|エリック・クラプトン伝説の誕生

2023年に惜しまれつつ休刊した音楽雑誌『Player』。楽器を扱う専門誌として『ギター・マガジン』とは良きライバル関係にあっただけに、その不在はやはり寂しい。音楽業界や楽器業界を盛り上げ、読者に大きな影響を与えたその偉大な55年に敬意を表して、元編集長の田中稔氏にその歴史を綴ってもらう。隔週更新。

文=田中 稔

第35回
エリック・クラプトン伝説の誕生

1977年1月号の『Player』は、エリック・ クラプトンの特集号で、表紙は彼のステージ写真だった。

クラプトンは74年10月に日本武道館で初の来日公演(11月に大阪年金会館ホール)を行なって以来、現在にいたるまで海外アーティストによる来日コンサートの日本記録を更新している。その初来日公演でのクラプトンは、まだアルコールやドラッグ中毒から抜け出し切れていない状態で、かなり演奏がよれていたようだが、それも含め賛否両論の評価を受けた。

しかし、その1年後の75年10月に二度目のジャパン・ツアーが行なわれた。その公演でのクラプトンは見違えるほど体調も良く、東京以外に大阪や京都、九州小倉、静岡と、元気な姿で素晴らしいパフォーマンスを披露し、ファンを唸らせた。

僕が初めて観たクラプトンのライブはその75年の武道館で、そのかっこよさにすっかり釘付けになった。『Player』におけるクラプトン伝説は、70年代半ばから始まり、社内では“クラプトンが表紙になれば必ず売れる”という神話となって、2023年の『最終号 No.685』まで続いていた。

1977年1月号は、そんなクラプトン伝説を実証した1冊だった。この号の表紙は、初来日公演で使用しギター・マニアの間で話題となった1958年製ギブソン・エクスプローラーを手にしているライブ写真。長い髭を蓄えたクラプトンは、イエス・キリストを彷彿とさせるほど神々しく見える。この1月号は12月15日に発売されるや否や、全国の書店、楽器店から追加オーダーが来て、瞬く間に在庫切れとなった。

この1月号のメイン記事は、4ページにわたるクラプトンのロング・インタビューだが、これは当時友好関係が深かったアメリカのギター専門雑誌『ギター・プレイヤー』からの転載だった。近年はアメリカやイギリスの有名音楽雑誌でもクラプトンのインタビューを取ることは難しくなったが、当時はどんな質問にも気さくにきちんと答えている若き日のクラプトンの姿がある。

「クラプトン特集」を掲載した77年新年号は売れた。特集はロング・インタビューから始まる。

この1月号では「クラプトン特集」にふさわしく、『461 Ocean Boulevard』(1974年)以降、クラプトン・バンドの良き相棒として知られるギタリスト、ジョージ・テリーのロング・インタビュー。さらに、70年代のクラプトンを支えた名ベーシスト、カール・レイドルのインタビューも掲載され、特集に華を添えている。それらのインタビューは当時『ギター・プレイヤー』誌で活躍したダン・フォートによるものである。余談だが、2022年2月号のリットーミュージックの『ギター・マガジン』にも、全く同じインタビュー記事が掲載されていた。

また1月号は「クラプトン特集」として、インタビュー記事以外でもほかのコーナーと連動している。連載「イージー・ギター講座」では、『461 Ocean Boulevard』から「Let It Grow」と「Please Be With Me (Boyer)」のギター・レクチャーを掲載。『アメリカン・ギター講座』でもクラプトンの名曲3曲のTAB譜の一部を紹介するなど、「クラプトン特集」をトータル的に盛り上げる内容となっている。

さらに、当時クラプトンが愛用していたMusic Manアンプをタイアップ広告として見開きで掲載するなど、当時の音楽雑誌という枠を超えたマニアックな特集を展開している。

連載「イージー・ギター講座」でも、特集と連動してクラプトンの曲を取り上げた。(編集部注:著作権の都合上、譜面部分にぼかしを入れています。
「Ragtimes」というインフォメーション・ページのカバーもクラプトンの手描きイラスト。

クラプトン以外の記事としては、マリア・マルダーやポール・バターフィールドなどの名作で伝説の演奏を残したエイモス・ギャレットのロング・インタビューや、テレキャスターを弾かせたら泣く子も黙ると言われた職人ギタリスト、ロイ・ブキャナンなどの記事を掲載。華やかなクラプトン特集の裏側で、通好みのギタリストにもスポットを当てた特集を行うなど、プレイヤーらしい記事作りが行なわれている。

さらに、人気連載企画「The GUITAR」第4弾として、70年代にフリー、そしてフェイセズでその名を馳せた日本人ベーシスト、山内テツが愛用しているZemaitisベースをカラー1ページで大きく紹介している。このベースは、1974年11月にテツがトニー・ゼマイティスに直接オーダーしたもので、トニーとテツのアイディアを出し合ったコラボレーションによって誕生した。

貫禄あるそのヘッドストック・デザイン、ボディ全体を覆うダニー・オブライエンの見事なエングレーヴィングが、英国ならではの燻銀のような美しさと力強さに満ちている。70年代半ばといえば、まだまだトニーが新たな製作意欲に燃えていた時期だが、そんなトニーらしい勢いが感じられる1本である。

「ザ・ギターVol.4」は山内テツが愛用しているZemaitisベース。かっこいい!

著者プロフィール

田中 稔(たなか・みのる)

1952年、東京生まれ。

1975年秋にプレイヤー・コーポレーション入社。広告営業部、編集部にて『Player』の制作を担当。以来編集長、発行人を経て1997年に代表取締役就任。以降も『Player』の制作、数々の別冊、ムック本を制作。48年間にわたり『Player』関連の仕事に深く関わった。

以後はフリーランスの編集者として活動し、2025年4月、クラプトンに魅せられた10人のE.C.マニアのクラプトン愛を綴った『NO ERIC, NO LIFE. エリックに捧げた僕らの人生.』(リットーミュージック発刊)を制作。2025年9月、電子マガジン「bhodhit magazine(バディットマガジン)」の名誉編集長に就任。

アコースティック・ギターとウクレレの演奏を趣味としている。


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『Player』盛衰記