こだわりの逸品を試奏レビュー!
ここからはルオカンガス・ギターズのモデルを実際に試奏して、その実力をチェックしていこう。各モデルの特色はもちろん、“Valvebucker”の音色についてのインプレッションはぜひご一読いただきたい。
試奏/文=井戸沼尚也 写真=星野俊
※本記事はギター・マガジン2020年4月号に掲載された『北欧フィンランドが世界に誇るルオカンガス・ギターズのすべて。』に書き下ろしを加え再編集したものです。
Duke Classic “Valvebucker”
真空管駆動ピックアップ搭載のフラッグシップ・モデル
本器は、ユハ・ルオカンガスの最初のオリジナル・ギターであり、ルオカンガス・ブランドのフラッグシップ・モデルであるデュークに、真空管駆動のピックアップ=バルブバッカーを搭載したモデルだ。アコースティック・ギターのサウンドホールのように、バルブバッカーはボディ中央部分に取り付けられており、見た目のインパクトは強烈! もちろん外観だけでなく音も個性的で、ほかのどのギターにも似ていないサウンドを持っている。そのサウンドはトーン・スイッチにより変化し、太くオーガニックなサウンド、エレアコのようなナチュラル・サウンド、ブライトで切れ味鋭いサウンドの3種の切り替えが可能。特に3つ目のブライトなサウンドが独特で、スパークルではじけるようなニュアンスを持っている。それぞれの音はブースト・スイッチでゲイン・アップできるので、エフェクターの歪みとの相性も良い。
さらに、特筆すべきは材の良さと作りの良さ。高級アコースティック・ギターで使われるスパニッシュ・シダーをボディとネックに惜しげもなく使い、アンプラグドの状態でもピアノのように端正な音で鳴る。作りの丁寧さはこれぞハイエンド・ギターといった趣で、弾きやすさ、ピッチの良さも抜群だ。
COLUMN/真空管搭載ピックアップ=バルブバッカーって何?
世界で最初の、そして唯一の真空管駆動のピックアップ。もしも最初のエレクトリック・ギターが1890年代に発明されていたら─という発想のもと、ユハ・ルオカンガスは真空管を使って“当時開発できたであろうピックアップ”を作ることを決意。そして完成したのがバルブバッカーだ。特徴は、豊かなトーンとはじけるようなレスポンス。オーダー時にオプションで注文すれば、すべてのモデルに取り付け可能だ。真空管への電源供給は専用のアタッチメント(下写真)にXLRケーブルをつなぐだけで、そのままアンプに出力できる。
Aeon Deluxe
ゴージャスな空気を纏うイーオン
小ぶりで女性にも弾きやすいイーオン・シリーズ。本器はアークティック・バーチのボディ・トップが美しい“デラックス”だ。ボディ・バックはスパニッシュ・シダーで、メイプル・ネック、アークティック・バーチの指板という仕様。アコースティックのように鳴るギターで、アンプにつないだ音も太く豊かだが、アタックが明るく抜けが良いという絶妙なサウンドを持っている。PUセレクターは5ウェイで、フロントPUのシリーズ/パラレル、フロントPU+リアPUのノーマル/スプリットを選択可能。もちろんリアPU単体も使用可能だ。
Hellcat Deluxe
テクニカル系向きモデルは圧倒的弾きやすさ
ネック周りの仕上げが丁寧で、とにかく弾きやすいヘルキャット・デラックス。スパニッシュ・シダー・バック、アークティック・バーチ・トップのボディに、メイプル・ネック、エボニー指板の組み合わせが、明るいアタックを生み出す。歪みを深くしても音が潰れず、ヘヴィ系のテクニカルなプレイヤーに最適だ。本器はDチューナーの装備など多くのカスタム・オプションが実装されており、全音下げチューニングにも対応。トレモロ・ユニットの動きは、ボディ裏のノブでハードテイル/ダウン・オンリー/フリー・フローティングが選べる“Tremol-no”システムを搭載する。
Unicorn Classic
圧倒的なプレイアビリティの一角獣
トラディショナルなスタイルに見えるだけに、ルオカンガスの実力がよくわかる一本。ボディ・トップにアークティック・バーチ、バックとネックにスパニッシュ・シダーを採用しており、材構成は一般的なLPタイプとは一線を画している。サウンドは太さがありつつ洗練された印象で、ピッチの良さや、手にした時の重量バランスの良さは特筆モノ。ネックのグリップは厚く太いが、フレット周りの処理が巧みで弾きやすい。本器の、アタックの瞬間よりも途中から音量が上がるような管楽器的なサステインは、ビンテージLP以外ではほとんど体験したことがない感覚だった。
Unicorn Super Sonic “Valvebucker”
多彩なサウンドのバルブバッカー搭載器
シンプルなユニコーン・スーパーソニックに、バルブバッカーを搭載したモデル。3種のサウンドを切り替えるスイッチ(ウォーム・サウンド、エレアコ的サウンド、ブライト・サウンド)と、ブースト・スイッチの効果で、サウンド・バリエーションは驚くほど広い。ボディ材は、トップにアークティック・バーチ、バックにスパニッシュ・シダー、ネックにもスパニッシュ・シダーを採用。杢目の凹凸が触れてわかるほど薄く仕上げられた塗装や、ボディ裏までブッシュが貫通しているがっしりとしたラップアラウンド・ブリッジも、このギターの良質なサウンドに貢献している。
Mojo King
トゥワンギーに遊べるニューTLタイプ
まずはレトロフューチャーなデザインと華やかなパープルローズ・フィニッシュに目を奪われる。TLミーツSTといった趣だが、それにとどまらないオリジナリティが随所に溢れている。アルダーのボディ・バックには大胆なチェンバー加工が施され、トップにはアークティック・バーチを採用。やや細めで薄めのナローなネックはメイプル材で、指板はフィギュアの入ったアークティック・バーチだ。基本的なサウンドはトゥワンギーなものだが、5ウェイのピックアップ・セレクターの2と4のハーフ・ポジションでは直列のハムバッカー・サウンドが得られる。
Aeon Classic
ユニセックス・デザインの高性能ギター
本器は“初心者の女性にも優しいハイエンド・ギター”というコンセプトで、通常のイーオンよりやや小ぶりなボディを持つ個体。フィット感抜群のコンター、635mmの弦長、400Rのフラットな指板、丁寧なフレットの処理など、とにかく弾きやすい。そしてこのギターも、やはりサウンドが素晴らしい。倍音の出方が美しく、サステインの途中でオクターブ上の音がきれいに乗ってくる独特のサウンドはほかのギターでは味わえない。アルダー・ボディ、サーモ処理されたメイプル・ネック、アークティック・バーチ指板という材も、音に大きく影響している。