ネイティブ・アメリカンの中で“愛と美と幸せのシンボル”であるハチドリをピックガードに宿したギブソンのハミングバード。完成されたデザインは今なお色あせることなく、キース・リチャーズからトム・ヨーク、ジャスティン・ビーバーまで、世代を問わず幅広く愛されている。その魅力とは?
文=久保木靖 Photo by Nigel Osbourne/Redferns/Getty Images
オシャレだけど鳴りは深い、ハミングバード
愛と美と幸福の象徴とも言われるハチドリ(=Humming bird)がピックガードに舞うギブソンのハミングバードは、スタンダードなアコースティック・ギターの中では最もオシャレで印象的なモデル。世界的なフォーク・ブームの到来を受けて、1960年にギブソン初のスクエア・ショルダー型として発表された。
それまでギブソンは、J-45のようにラウンド・ショルダー型を基本としていたが、より音量を稼ぐ意味もあり、ショルダー部がやや角ばったスクエア・ショルダー型を採用する。つまり、J-45と比べた場合、同じ16インチのボディ幅であっても、ボディ内の容積がより大きいハミングバードのほうがパワーがあり、かつ低音も豊かに鳴るというわけだ。
トップ=スプルース、サイド&バック=マホガニー、ネック=マホガニー、フィンガーボード=ローズウッドと、基本的な仕様はJ-45と同じ。クラウンのヘッド・ロゴやダブル・パラレログラムのポジション・マーク、そして冒頭で述べたハチドリが描かれたピックガードが特徴だ。
もともと弾き語り系ミュージシャンのために設計されたというだけあり、歌いながらコードを弾くと、歌声を包むように音が広がっていく。また、豊かな箱鳴りを活かした力強いストロークにもうってつけだ。
現行品の価格は40万円前後。1960年代のビンテージ・モデルとなると、状態にもよるが、相場は50〜100万円といったところか。ちなみに、1962年にはハミングバードの上位モデルにあたる、ピックガードに鳩が描かれた“Dove(ダヴ)”が発売されている(こちらは、サイド&バック=メイプル)。
“ジャキジャキ”サウンドを活かしたギタリストたち
ハミングバードを使ったプレイヤーで印象深いのは、何と言っても1960〜1970年代のキース・リチャーズ。エド・サリバン・ショーでの「Lady Jane」やPV「Angie」で赤みの強いサンバースト・モデルを弾いていたのは忘れられない。
ほかには、ジョン・レノンやシェリル・クロウ、グラム・パーソンズといった、かき鳴らしながら歌うギタリストに愛用者が多い。やっぱり、ハミングバードのジャキジャキしたストローク・サウンドは最高だ。
『ギター・マガジン2021年2月号』
特集:ギター・ヒーローが愛した、アコースティックの世界。
クラプトン、デュアン、フルシアンテ。キースにピートにジョン・メイヤー。Jマスキスにガルシアにハウ。コイツら全員、アコギもヤバい!!!