山内総一郎(フジファブリック) 2021年『I Love You』の使用機材! 山内総一郎(フジファブリック) 2021年『I Love You』の使用機材!

山内総一郎(フジファブリック)
2021年『I Love You』の使用機材!

“愛”をテーマにした11枚目のアルバム『I Love You』をリリースしたフジファブリック。JUJU、幾田りら、秦 基博といった豪華なゲスト・ボーカルを鮮やかに彩るバンドのポップ・センスが光る一方、ハネまくるカッティング・ギターやメロウなソロを取り入れた楽曲が並んでおり、ギタリスト・山内総一郎のファンク・プレイを存分に堪能できるバラエティ豊かな1枚となっている。今回は山内の使用機材やサウンドメイクから『I Love You』に込められたこだわりを深堀りすべく、インタビューを行なった。本記事では、レコーディングで使用したギターとアンプ、そしてライブ用のペダルボードを紹介しよう。マニアックな機材トークは、先日公開したインタビュー記事にてお楽しみ下さい!

取材・文=小林弘昂 機材写真=星野俊 人物写真=nishinaga “saicho” isao


Guitars

Fender
Stratocaster

Fender Stratocaster

良いとこ取りのストラトキャスター

 お馴染み山内のメイン・ギター……なのだが、実はネックが63年製、ボディがマスタビルダー製のシグネチャー・モデル、そしてピックガードや電装系パーツが62年製、ブリッジが61年製という組み合わせに変更されている(もともとは62年製のボディと63年製ネックの組み合わせだった)。本人曰く“まずネックを決めて、次にボディを決めて、みたいな感じで、色んなパーツを組み合わせていったんですよ。今回こういう作業をやってみて、エレキ・ギターのサウンドのほとんどはネックの音だったんだな、ということがわかりましたね(笑)。”とのこと。今作のレコーディングでは「LOVE YOU」や「SHINY DAYS」などでファンキーなカッティングを披露した。

1954
Fender Telecaster

1954 Fender Telecaster

圧巻のオーラを放つブラックガード

 今作のレコーディングで最も使用頻度が高かったという54年製のテレキャスター。いわゆる“ブラックガード期”の最終年の個体だ。「LOVE YOU」以外のすべての楽曲で本器のサウンドが使われている。5年ほど前に入手し、ピックアップはカレント配線(フロント/フロント+リア/リア)に変更されているが、“フロントを使うことがほとんどないので、オリジナルの状態に戻そうかと考えています”とのこと。重量は軽く、山内曰く“3キロちょうどだったような気がします”。最近は新品のブラックガードが欲しくなっているそうで、“これはもうボロボロで(笑)。新品のほうがフォーマルというか、スーツに合うかなと思ってるんですよ”と語ってくれた。

Fender
Souichiro Yamauchi Telecaster “Maroon”

Fender Souichiro Yamauchi Telecaster “Maroon”

阪急電鉄カラーに注目

 2019年にデジマートにて15本限定で発売された山内のシグネチャー・モデル。“2019年がフジファブリックの15周年だったんです。その時に地元の大阪で大きいライブをする予定があったので、憧れの阪急電鉄の色にしました”と、ボディ・カラーに“マルーン”を採用した理由について語ってくれた。当時、使えるだけのホンジュラス・マホガニーとブラジリアン・ローズウッドをかき集めて作ったという貴重なギターだ。今作ではピックアップをセンター・ポジションにし、「たりないすくない feat. 幾田りら」と「Dear」でコロコロとしたクリーン・サウンドを演出。山内曰く“これは音の立ち上がりも速いし、チューニングも合うんです”とのこと。

1960’s
Teisco SS-4L

1960's Teisco SS-4L

ネット・オークションで入手!

 昨年の自粛期間中にネット・オークションで手に入れたというTeisco製SS-4L。“これは見た目で買いました。ライ・クーダーのファンとしては、ゴールドフォイルが4つも載っているのはお得なので(笑)。そのゴージャス感が良いんですよ。ペグが甘い部分もあるけど、意外とチューニングも狂わなくて、普通にギターとして良い音。ライ・クーダー的なスライドだけじゃなくて、指弾きとかにもめっちゃ合ってる気がします。それと歪ませてもめちゃくちゃ良い”とお気に入りの様子。今作のレコーディングでは、“ちょっとクサイい音”を求めて「赤い果実 feat. JUJU」のソロで使用された。ちなみに、ストラップはReverbの“Wilco Loft Official Reverb Shop”で購入したもの。

Jerry Jones Master
Electric Sitar

Jerry Jones Master Electric Sitar

長らく愛用するエレキ・シタール

 “その昔、歌舞伎町の手前にあったクロサワ楽器に中古で売られていて、ライブに行く前に買いました”というJelly Jones製のエレクトリック・シタール。フジファブリックでは長い間レコーディングの隠し味的に使われており、今作では「楽園」のリフで使用。「若者のすべて」のサビ前のフレーズも本器によるものだ。“自分でブリッジの調整をしながら、色んなところで活躍してきました。今から10年前になりますけど、くるりでサポート・ギターをやらせてもらった時は使用頻度が高くて。曲ごとに1〜3弦で音を出して、その音を伸ばしながら4〜6弦をチューニングしたり……っていうのをやりましたね(笑)。ピッチ的には大変なギターです”と語っていた。

Amplifier

1965
Fender Super Reverb

1965 Fender Super Reverb

信頼のブラックフェイス

 最近の山内のメイン・アンプは、65年製のSuper Reverb。何台も試奏し、一番元気が良い個体を選んだそうだ。“10インチ4発のアンプはローが出ないっていう先入観で使ってなかったんですけど、これはローがめちゃくちゃ出ちゃって、カットしないとダメなくらいなんです。でも、レンジが狭いというか、音が散らからないようにアウトプットしてくれますね。ボリュームはそんなに上げないんです。Volumeツマミは2くらい。パワー管は6L6が2本だけど、Volumeツマミが3くらいで歪み出すんですよ。で、Middleツマミがボリュームみたいになっていて。Volumeで微調整して、そのあとにEQをいじると音量が変わるんです”と、セッティングにはコツが必要なよう。
 NORMAL ch.の各ツマミは、Volumeが2、Trebleが5、Bassが3.5。VIBRATO ch.の各ツマミは、Volumeが2過ぎ、Trebleが4.5、Middleが6、Bassが3.5、Reverbが2、トレモロはオフで使用。ブライト・スイッチはどちらもオフになっていた。両方のチャンネルを使用しており、NORMAL ch.がソロ用、VIBRATO ch.が基本のサウンドとのこと。

1965
Fender Super Reverb(Back)

1965 Fender Super Reverb(Back)

 スピーカーはUtah製の10インチを4発搭載。“古いスピーカーだからというのもあってボリュームを上げると音が割れていくんですが、Oxfordも同様ですけど、UtahのスピーカーはJensenと比べると、そんなに痛い割れ方はしないんです。でも、飽和している感じがカッティングではもったいなかったりする”そうで、アンプのボリュームは抑えめにセッティング。レコーディングではアンプの下にインシュレーターを置いたり、カーペットを敷いたりしてロー感の対策をしたそうだ。

Pedalboard

こだわりを凝縮した
オンリーワン・ペダルボード

Pedalboard
①FREE THE TONE / JB-41S(ジャンクション・ボックス)
②FREE THE TONE / FC-373(ルーティング・コントローラー)
③VOX / Clyde McCoy Signature(ワウ)
④Musitronics / Mu-Tron Ⅲ(オート・ワウ)
⑤Wampler Pedals / Ego Compressor(コンプレッサー)
⑥Klon / Centaur Gold Long Tail Ver.(オーバードライブ)
⑦Pete Cornish / G-2/P-2(ディストーション/ファズ)
⑧Sola Sound / Tone Bender MKⅢ(ファズ)
⑨Musitronics / Phasor Ⅱ(フェイザー)
⑩strymon / FLINT(リバーブ/トレモロ)
⑪TC Electronic / Alter Ego V2 Vintage Echo(デジタル・ディレイ)
⑫Sonic Research / ST-200(チューナー)
⑬Providence / PAE-101P(パワーサプライ)
⑭Musitronics / PS-1(Mu-Tron Ⅲ用パワーサプライ)

 今年1月に完成したばかりの②スイッチャーを中心にしたペダルボード。なんと②は2年の歳月をかけてFREE THE TONEで製作されたもので、10のエフェクト・ループに加え、2系統のアウトプットを搭載。出力先をA/Bで切り替えられるほか、それぞれにブースターが搭載されており、Super ReverbのNORMAL ch.とVIBRATO ch.で適切なブースト量を決めることができる。

 ギターからの接続順は①ジャンクション・ボックスを通り、②スイッチャーへ。スイッチャーからは2系統のアウトが出ており、片方はSuper ReverbのNORMAL ch.へ、もう片方はVIBRATO ch.へ接続される。

 スイッチャーの各ループには、
Loop 1=③Clyde McCoy Signature
Loop 2=④Mu-Tron Ⅲ
Loop 3=⑤Ego Compressor
Loop 4=⑥Centaur
Loop 5=⑦G-2/P-2
Loop 6=⑧Tone Bender MKⅢ
Loop 7=⑨Phasor Ⅱ
Loop 8=⑩FLINT
Loop 9は未接続
Loop 10=⑪Alter Ego V2
が接続されている。

 基本のサウンドはSuper Reverbで作っており、歪ませる際は⑥Centaurを、“ここぞ!”というソロでは⑧Tone Bender MKⅢを使用。Pete Cornish製の⑦はカスタム・メイドの1台で、同社製のG-2とP-2がまとめられた2 in 1ペダル。写真だとG-2のSustainツマミが10時方向まで上がっているが、これは先日、マカロニえんぴつの“はっとり”(vo,g)とUNICORN「ヒゲとボイン」を演奏した際のセッティング。“フェンダー・アンプでテッシー(手島いさむ)さんみたいな音が出したくて(笑)”と語っていた。そのほか、「若者のすべて」のソロもG-2で弾いている。P-2は⑧Tone Bender MKⅢとキャラが被っているため、ほとんど使用しないそうだ。以前、ファズはTriangle Big MuffやRam’s Headなどを使用していたが、インピーダンスの関係でスイッチャーのループに入れると音が変わってしまい、悩んでいたとのこと。しかし、⑧だけはスイッチャーを通してもカッコ良い音がするそうだ。

 ⑤Ego Compressorはスライド・プレイの際や、Jelly Jonesのエレクトリック・シタール、12弦ギターを使用する際にオン。“ノスタルジックな響きにしたい時にコンプを使っていますね。これは原音を混ぜることもできるんですけど、それがあんまり嘘臭くない”とのこと。

 ④Mu-Tron Ⅲと⑨Phasor Ⅱは長年ボードに組み込まれている2台で、“癖のある音が好き”だそう。④は「SHINY DAY」でも使われたほか、「星降る夜になったら」や「LIFE」などでオンに。⑪Alter Ego V2はスラップバック・ディレイとしてセッティング。

 山内はこのペダルボードについて、“ギターのオイシイところを出してくれるペダルと、変な音を出すペダルが分かれてる感じですよね。もっと変なボードにしたいな……このボードは実用的すぎる(笑)!”とコメントしてくれた。

作品データ

『I Love You』 フジファブリック

『I Love You』
フジファブリック

ソニー/AICL-4025/2021年3月10日リリース

―Track List―

01.LOVE YOU
02.SHINY DAYS
03.赤い果実 feat. JUJU
04.たりないすくない feat. 幾田りら
05.楽園
06.Dear
07.あなたの知らない僕がいる feat. 秦 基博
08.手
09.光あれ

―Guitarist―

山内総一郎