The Birthdayのギタリスト、フジイケンジのライブ機材と、 『サンバースト』と「ヒマワリ/オルゴール」、そして年内リリース予定の最新シングルのレコーディングで使用した機材をご紹介。
取材・文=小林弘昂 機材写真=新保勇樹
Live Gear
不動のラインナップ
こちらはライブでのフジイのセット。左から・1976 Marshall Model 2100 Lead & Bass ・Music Man 112 RD One Hundred ・1959 Fender Jazzmaster が並んでいる。
フジイのメイン・アンプは、2017年頃から愛用している76年製のLead & Bass。本モデルは75年から2年間のみ製造されていたレアなコンボ・アンプで、50W出力、12インチ・スピーカー2発という仕様。本機にはCelesion製G12Mが搭載されていた。フジイは斉藤和義が使用していたLead & Bassの音の良さを気に入り、自らも探して購入したという。基本的に今作のレコーディングでもメイン的に使用され、楽曲によってSuper BassかBand-Masterどちらかのサウンドをミックスしていたとのこと。 この日のライブではインプットⅠのHIGHに接続。各ツマミは、PRESENCEが0、BASSが3、MIDDLEが2、TREBLEが3、VOLUME Ⅰが1程度 にセッティングされていた。アンプ自体でメインの歪みを作っており、本機は常に鳴らしっぱなし。
112 RD One Hundredはプリ部がトランジスタ、パワー部が真空管というハイブリッド構造のアンプだ。100W出力、12インチのスピーカーを1発搭載。ライブではギター・ソロやサビなどでオンし、ブースター的に使用する。 インプットはHI GAINを選択し、BRIGHTスイッチとDEEPスイッチはオフに。各ツマミは、GAINが3、VOLUMEが2.5、TREBLEが3、MIDDLEが8、BASSが3.5 に設定されていた。今回のレコーディングでは未使用。
そして59年製のジャズマスターは、フジイのメイン・ギター。ジャズマスターを複数本所有しているフジイだが、その中でも本器は“音が一番太くて、ドスが効いている”と語る。おもな改造点として、プリセット・スイッチの配線をカットしているほか、ブリッジをムスタング・タイプへ交換。ピックアップはフロントのみを使用する。以前、フロント・ピックアップが断線してしまい、応急処置としてリアと交換したが、問題がなかったため、そのままにしているとのこと。弦はErnie Ball製の.011〜.048を愛用していたが、最近は.010〜.046のゲージも試しているそうだ。本器も今作のレコーディングでは未使用。
Recording Guitars
1961 Fender Jazzmaster
切れ味バツグンの61年製
今作のレコーディングでは、メインの59年製ではなく61年製のジャズマスターが活躍。『COME TOGETHER』(2014年)の頃にメインで使われていたギターだ。こちらのほうが“エッジのある音”とのことで、「息もできない」、「レボルバー」、「晴れた午後」、「ショートカットのあの娘」、「ギムレット」、「バタフライ」の6曲で登場。本器のブリッジもムスタング・タイプに交換されている。ジャズマスターは1弦のみ弦をペグ穴に入れずに巻くのがフジイ流。
1956 Gretsch Duo Jet
Photo:星野俊
大活躍のデュオ・ジェット
「月光」、「アンチェイン」で使われた56年製のデュオ・ジェット。本器は2018年のシングル「青空」のレコーディングから使われだし、前作『VIVIAN KILLERS』では「青空」を含む「KISS ME MAGIE」、「DIABLO〜HASHIKA〜」、「THIRSTY BLUE HEAVEN」の4曲で登場した。ピックアップはミックス・ポジションを使用。ブリッジはアジャスト・マティックに交換し、位置が動かないようにテープで固定している。
1967 Gibson ES-355TDSV
Photo:星野俊
エアー感をまとった箱モノ
オリジナル・ブラック・カラーが精悍な67年製ES-355TDSV。今作では「ラドロックのキャデラックさ」で使用された。レス・ポール・カスタムよりも軽いハムバッカー・サウンドが欲しい時に手に取るそうで、おもにレコーディング専用ギターとなっている。バリトーン・スイッチの回路はバイパス済み。本器はナロー・ネックなのだが、フジイはそれが苦手だったため、リペア・ショップに依頼し、クリアを吹いてネックを太くしてもらったそうだ。
1972 Gibson Les Paul Custom ’54 Reissue
Photo:星野俊
「12月2日」のサウンドはこれ!
「12月2日」のダーティなサウンドは、この72年製レス・ポール・カスタムによるもの。レコーディングではアルニコVのフロント・ピックアップを使用したそうだ。本モデルは54年製レス・ポール・カスタムを72〜73年の間に限定復刻したもので、近年さらに人気が高まっている。オリジナルと同様に1ピース・マホガニー・ボディ、1ピース・マホガニー・ネックを採用。プレイアビリティを考慮し、背の低いフレットレス・ワンダー・フレットは交換されていた。
1960’s Coral Scorpion 2N12
Photo:星野俊
初登場の12弦ギター
コーラス・サウンドのような効果を狙い「スイセンカ」で使用されたのが、こちらの12弦ギター。12弦ギターはThe Birthdayでは初登場となる。本モデルは67年にスタートしたCoralブランドから発売されたもので、同社の有名なエレクトリック・シタールのデザインも手がけたヴィンセント・ベルが共同開発者として関わっている。フジイ曰く“12弦のイメージはザ・フー初期のピート・タウンゼント。12弦じゃなくてもいい曲で使ってるのが印象的(笑)”と語っていた。
1963 Fender Jaguar
今年手に入れたニュー・ギター
今年手に入れたばかりだという63年製のジャガー。オリジナルのブラック・カラーは、かなり貴重である。ピックアップは初期仕様のフラット・ポールピースのものを搭載。今年11月にリリース予定のシングル曲では本器をメインで使用したとのこと。フジイはフロント・ピックアップで弾いたらしいのだが、“音がペラペラで……”と少し苦戦していた様子。ジャズマスターのブリッジはムスタング用に交換されているが、本器はオリジナルのまま。
1981 Greco TL500
藤井家で最も古いエレキ・ギター
その昔、兄である藤井一彦が購入し、その後フジイが買い取ったというGrecoのTL500。THE BARRETT時代はメイン・ギターとして使用していた。ボディがシルバーっぽくリフィニッシュされているほか、ネックを72年製シンラインのものに付け替え、ピックガードをべっ甲で製作したものに交換。さらにフロント・ピックアップにP-90を搭載するなど、多くのカスタマイズが施された1本。「ヒマワリ」と「オルゴール」のレコーディングで使用され、最近ではライブでの出番も多い。
1966 Fender Telecaster
リフィニッシュの66年製
ラウンド貼り、ローズウッド指板の66年製テレキャスター。ボディのブラック・カラーはリフィニッシュされたもので、サドルとブリッジ・プレートが6wayに交換されている。また、よく見るとボリューム・ノブも新しいものに変わっているのがわかる。今作のレコーディングでは「アンチェイン」で使用したそうだが、最終的に採用されたテイクは56年製デュオ・ジェットで弾いたものとのことで、次作での登場に期待しよう。
Recording Amplifiers
1975 Marshall Model 1992 Super Bass
Photo:ほりたよしか
加入当初から愛用するベース・アンプ
2010年に知人から譲り受け、2011年からライブやレコーディングで愛用してきた75年製のSuper Bass。本機はバック・パネルにマスター・ボリュームが増設されている。昨年のホール・ツアーでは、約3年ぶりにライブで使用された。今作のレコーディングでは楽曲によってLead & Bassのサウンドとミックスして使われたそうで、ベース用のアンプということもあり、ロー感が欲しい時に採用したという。フジイはインプットIのHIGHを使用。耳に痛いサウンドにならないよう、PRESENCEとTREBLEはほとんど上げないそうだ。
1975 Marshall Model 1992 Super Bass (Back)
バックにはジム・マーシャルの直筆サインが。真空管を冷やすためのファンが取り付けられているほか、パネル中央にマスター・ボリュームが増設されていることがわかる。ツマミを3時方向まで上げており、かなり大きい音量で鳴らしているのだろう。
1967 Fender Band-Master
The Birthday初登場!
今作のレコーディングで2台のマーシャル・アンプと並んで用意されていたのが、ブラックフェイスの67年製Band-Masterだ。40W出力で、2×12キャビネットのピギーバック・スタイルが特徴的。これまでThe Birthdayでの出番はなかったが、2015年あたりの斉藤和義のライブ現場で登場していたアンプである。フジイは楽曲によってNORMAL ch.とVIBRATO ch.どちらかのインプットを使用し、BRIGHTスイッチをオンに。本機も楽曲によってLead & Bassのサウンドとミックスされている。
1967 Fender Band-Master (Back)
キャビネットはクローズド・バック。
1965 VOX AC30 Bass
貴重なビンテージAC30
コントロール部分はJMIロゴのグレー・パネル、入力電圧切り替えセレクターは回転式のドーム型、そしてシリアル・ナンバーの19200 Bから、65年製のAC30だと推測。シリアルの後ろに“B”と付いているので、本機はBass仕様ということになる(Bのほかに、NormalのN、Top BoostのTが付いている個体が存在する)。スピーカーは2発ともリイシューのCelestion製VOX Alnico Blueへ交換。フジイはBRILLANTのHIGHにインプットし、ボリュームを上げて歪みを作っている。今回のレコーディングで用意はされていたが、未使用。
1965 VOX AC30 Bass(Back)
裏には“No.1”というステンシル・スプレーが。フジイはAC30を複数台所有しているそうで、おそらく本機は一番のお気に入りなのではないだろうか。また、スピーカーが交換されているのがわかる。
1966 Fender Deluxe Reverb AB763
フェンダーの大人気モデル
AB763回路を採用した66年製のDeluxe Reverb。今年の11月にリリース予定のシングルでは、本機と63年製ジャガー、そしてBOSS BD-2の組み合わせでレコーディングを行なったそうだ。フジイはNORMAL ch.の1を使用。Oxford製の12インチ・スピーカーを1発搭載、約20Wという小さな出力ながら、ボリュームをアップした際にはきらびやかな歪みが得られる。
1966 Fender Deluxe Reverb (Back)
スピーカーは12インチのOxford 12K5-6が1発搭載されている。スピーカー・コードは465-543で、65年製のスピーカーということがわかる。
Pedalboard
新機材を導入したニュー・ボード
①BOSS / CE-1(コーラス) ②BOSS / BD-2(オーバードライブ) ③JHS Pedals / SuperBolt(オーバードライブ) ④DOD / FX10(ブースター) ⑤BOSS / TR-2(トレモロ) ⑥下村音響株式会社 / 飛飛機械 compact11(デジタル・ディレイ) ⑦Maxon / AD-900(アナログ・ディレイ) ⑧Shin’s Music / Perfect Volume Hybrid(ボリューム・ペダル) ⑨Radial / Bones TwinCity(アンプ・セレクター) ⑩KORG / Pitchblack mini(チューナー) ⑪FREE THE TONE / PT-1D(パワーサプライ)
ギターからの接続順は①〜⑨の番号通りで、⑨Bones TwinCityからマーシャル製Lead & BassとMusic Man製112 RD One Hundredの2台のアンプへ分岐される。⑩Pitchblack miniは⑧Perfect Volume Hybridのチューナー・アウトに接続。
①CE-1は昨年のホール・ツアーから導入されたもので、「オルゴール」で使用。入力はlowを選択し、level controlツマミは3時方向に設定。chorus intensityツマミは9時手前になっていた。
②BD-2はギター・ソロ用のブースター。ハイ・ポジションを弾いた際の耳に痛い高域を抑えるため、TONEツマミは9時と控えめに、そしてLEVELツマミは1時で固定。GAINツマミにはプラモデル用のタイヤが取り付けられており、楽曲によりゼロ〜9時までの間で足で調整する。
③SuperBoltは最近導入したもので、こちらもブースターとして使用。
④FX10は長年ボードに組み込んでおり、“今さらはずせない”との理由でセットし続けているという。②BD-2よりエッジが欲しい時に使用していたが、本機より③SuperBoltを踏む回数のほうが増えてきたそうだ。
⑤TR-2はチバユウスケのものを借りているという。今作では「ラドロックのキャデラックさ」でオンに。
⑥飛飛機械は飛び道具的な役割。リアルタイムでF.BACKツマミやD.TIMEツマミを操作し、「Red Eye」や「SUMMER NIGHT」の間奏で発振音を演出する。フット・スイッチ部分がボードに収められており、コントロール部分はフジイのマイク・スタンドに設置(画像2、3枚目)。
⑦AD-900も長年セットし続けている1台で、本機も曲によってD-TIMEツマミとD-LEVELツマミを足で操作し、ショート・ディレイとロング・ディレイを切り替える。ショート・ディレイとして使用することが多く、「Red Eye」、「レボルバー」、「月光」などでオンに。REPEATツマミは9時に固定。
⑧Perfect Volume Hybridはインピーダンスのハイ/ローを切り替えられるモデル。①CE-1などバッファ搭載のエフェクターの後段に接続しているため、フジイはロー・インピーダンス(アクティブ)を選択している。
⑨Bones TwinCityのアウトには2台のアンプを接続。Lead & Bassは常に鳴らしており、112 RD One Hundredはギター・ソロやサビでオンにするのがフジイ・スタイル。本機の左側のBOTHスイッチを踏むと2台同時に鳴らすことができるため、踏みやすいように角度を付けてボードに固定しているのがポイントだ。
『サンバースト』 The Birthday
ユニバーサル/UMCK-1690/2021年7月28日リリース
―Track List―
01.12月2日 02.息もできない 03.月光 04.ラドロックのキャデラックさ 05.レボルバー 06.アンチェイン 07.晴れた午後 08.スイセンカ 09.ショートカットのあの娘 10.ギムレット 11.バタフライ
―Guitarists―
チバユウスケ、フジイケンジ