ディアンジェリコは2011年のリボーン以前と以後で愛用者が大きく変わる。これまでどんなギタリストたちが、彼らのギターを弾いてきたのか。ブランド創設期から現在までのディアンジェリコ・ラバーズたちを、新旧まとめてご紹介しよう。
文=久保木靖
ジャズ・ギタリストに愛されたビンテージ期
ディアンジェリコ・ギターに最初に魅せられたのは、当初はホロウ・ボディのアーチトップ・モデルだけだったこともあり、おもにジャズ・ギタリストであった。
洗練されたブルージィ・プレイが持ち味のケニー・バレルは『Blues : The Common Ground』(1968年)のジャケットに写るNew Yorkerを、クール派のビリー・バウアーは『Plectrist』(1956年)のジャケットに写るExcelを、それぞれ愛用した。ジョージ・ベンソンの『In Concert : Carnegie Hall』(1976年)のジャケットに見えるのはNew Yorkerであろう。そのほか、マンデル・ロウやオスカー・ムーアといった名手が手にしたことも知られている。
正確なピッキングとロマンチックな表現で人気を博したジョニー・スミスは、ギルドやギブソンから自身のシグネチャー・モデルをリリースする前にディアンジェリコのギターを手にしており、新たなギター構想をジョン・ディアンジェリコと意見交換していたという。カントリー・ギターのスター、チェット・アトキンスもグレッチとのコラボレーション以前の1950~1954年、Excelをメイン・ギターとしていた。
ジャンルを超えて広がった近年の愛用者
セミホロウ・モデルやソリッド・モデルがラインナップした近年はプレイヤーの幅が飛躍的に広がった。
まずジャズ系では、コンテンポラリー・スタイルの覇者カート・ローゼンウィンケルがあげられる。デビュー当初からしばらくメイン・ギターとして使っていたのがディアンジェリコのセミホロウ・モデルであったが、近年はDeluxe Atlanticなども手にしているようだ。
ロック・フィールドに目を向けてみると、それまで様々なギターを弾いてきた元グレイトフル・デッドのボブ・ウェアーが、2017年にディアンジェリコとコラボレーションを開始。Deluxe Bob Weir Bedfordなどのシグネチャー・モデルを世に送り出している。
そして見逃せないのが、ここ数年SNSを中心に大変な盛り上がりを見せているネオソウル界隈のギタリストの使用だろう。メラニー・フェイがSNS上でしばしば手にしているのはExcel DCで、ナチュラルに歪んだ瑞々しいサウンドはこの上なく魅力的だ。同様にアイザイア・シャーキーはDeluxe Bedford、コーシャス・クレイはDeluxe Bedford SHを、トム・ミッシュはDeluxe Bob Weir SSを手にする。
そして現在の最注目株、“次世代のジミヘン”とも称される2003年生まれのブランドン・ニードラウアーは、自身のシグネチャー・モデルDeluxe Brandon Niederauer Atlanticでフレーズを咆哮させる。実力のある新進気鋭に愛されること、これすなわち新たな時代のスタンダードになっていくという証でもあるのだ。