ギタマガWEBがピックアップした注目のディアンジェリコ・ギター3モデルを、Kazuki Isogai (磯貝一樹)に試奏レポートしてもらおう。国内のみならず海外ネオソウル・シーンの雄であり、ディアンジェリコ公式動画にも登場している彼に率直な印象を聞いた。
取材=山本諒 文=久保木靖 撮影=星野俊
Kazuki Isogaiが試奏した3モデルの詳細はこちら!
Premier SS Stairstep
デヴィッド・Tのようなオブリを弾きたくなる。
まず、弾きやすいですね。指のタッチのニュアンスをちゃんと拾ってくれる感じがあります。ちょっと太めのネックですが、この握った感じ、好きなんですよ。低音弦を親指で弾くことがあるんですが、手が小さい僕でも全然いけますね。
ピックアップをフロントにすると、やはりジャジィなトーンが出てくれます。ボリュームを小さめにすると生音も聴こえるじゃないですか。その状態でジャズ・フレーズを弾くのが好きなんですよね。センターにすると、R&Bやネオソウルでのカッティングに向いていますね。このポジションでクランチ気味にしたらもっと雰囲気が出るんじゃないかな。あと、デヴィッド・T・ウォーカーのようなオブリガート・フレーズとかも弾きたくなる。リアにすると、ブルースに合うトーンが出てきます。
軽くて扱いやすいのもポイントです。普段ソリッドを使っていて“箱モノに興味があるな”っていう人は、価格もお手頃だし、持っていてもいいと思いますよ。
Premier SS Stairstep
Excel 59
“温かい”というよりはP-90特有の“元気な”音が出てきます。
見た目がめちゃくちゃカッコいいですね。風格があります。ビンテージみたいな色合いのフィニッシュもいいし、ルックスは100点満点(笑)。ネックは太めで、指板Rがしっかりとついています。親指での押弦は難しそうだけど、弾きやすいのは間違いないですね。
フルアコだけあって、トーンのレンジが広がっている印象。ピックアップがP-90だからだと思うんですが、“温かい”というよりは“元気な”音が出てきます。独特の倍音があるからなのか、僕はP-90を搭載したギターがやっぱり好きなんですよね。あと、出音のバランスがすごくいい。フラットな設定でも十分な鳴りですが、僕だったらやはりボリュームを絞って、ジャズが弾きたいかも。
1ボリューム/1トーンなので音のバリエーションは多くないし、向いているジャンルも限られるかもしれませんが、それが逆に、ギターからのインスパイアにつながるんじゃないですかね。小編成やソロ・ギターに向いていると思います。
Excel 59
Deluxe Atlantic
指で弾いても、箱モノ
みたいな感じで凄くリッチ。
ルックスが斬新ですね。ソリッド・モデルのボディ・デザインって難しいと思うんですけど、これはセンスがあるというか、ちょっと可愛いところがあります。
僕は実際にこのモデルを使っているんですが、まずハイ・ポジションまですごく弾きやすいんですよ。それと一番好きなのは、このフロントの音。クランチにすると、ちょっとジャジィな自分の音楽によく合うんです。あと、指で弾いた時の感じが良いんです。ソリッド・ボディなんだけど、指で弾いても凄く成り立つリッチな音がしていて、箱モノみたいな感覚で弾けるんですよ。
トーン・ノブのコイルタップ機能に関しては、音の太さやパワーのバリエーションが豊富になるので、いろんな場面で使えると思います。ハムバッカーで歪ませたパワー・コードとか、シングルコイルっぽいソロとか。使っているペダルによっては“太すぎるな”みたいになる時もあると思うんですが、そういう場合はコイルタップでパワーを落とす、といった感じでシンプルに対応できますね。
Deluxe Atlantic
TOTAL IMPRESSION~試奏を終えて
“ディアンジェリコの芯を残しつつ、
新しいことに挑戦しているな”と。
Deluxe Atlanticは僕も持っているんですが、自分のソロ作品ではけっこう重要視しているギターなんです。ソリッドだけどしっかりと温かいトーンで。今日の3本の中では一番レンジがわかりやすいですね。僕はクランチの音作りにして、ちょっとボリュームとトーンを絞って弾くのが好みです。リアの場合はトーン全開で、ボリュームを絞って歪み具合を調整していくって使い方ですね。
Excel 59はやはりジャジィなプレイ、あとボーカルとのデュオなんかで使いたいですね。ソロ・ギターもいいかも。今日弾いた3本の中でこのギターが一番優れているのは、P-90を搭載したことによる倍音だと思うんです。あ、シンガー・ソングライター、弾き語りの人にもオススメできると思いますよ。パキッとした音の感じや、見た目のかっこ良さがありますからね。
Premier SS Stairstepはネオソウルとか、デヴィッド・T・ウォーカーのようなR&Bフレーズが弾きたくなってしまいます。プレーン弦をカッティングしても気持ちいい。このギターが3本の中で一番安いというのは信じられません……これで10万ちょいですよね!? そう考えると、めちゃくちゃ良くできています。
僕が初めてディアンジェリコを意識したのは19~20歳頃で、当時カート・ローゼンウィンケルが同ブランドのセミホロウ・モデルを使っていたんです。“すごくいいギターだな”って思ったんですが、当時は別に使っているギターがあったし、ディアンジェリコって高級なイメージもあるから手を出さなかったんですよ。
その後、自分の音楽もジャズばかりではなくポップスなどもやるようになっていくんですけど、同じようなタイミングでディアンジェリコがソリッド・モデルを出してきた。SNSの時代になったこともあって、LAの友達とかがよくInstagramなどでディアンジェリコのギターを弾いていたりして、気にもなっていたんです。それで弾いてみたら、いい意味で昔の伝統をちゃんと持っていて、かつ今の音楽のスタイルも表現できる。“ディアンジェリコの芯の部分をちゃんと残しつつ、新しいことに挑戦しているな”って感じました。
ソリッドのDeluxe Atlanticなど、これまでのディアンジェリコのイメージを打ち破るモデルですよね? しかも、クオリティがとても高い。高級なギターを作ってきた伝統のブランドが、価格を抑え目で作ってくれるので、道具としても手に取りやすいわけです。
使おうと思えば、どのジャンルでも使えると思う。でも僕個人としてはジャジィな方向や、メロウなカッティング、ネオ・ソウルなんかに向いてるなと思っちゃいますね。けど、それは伝統とクオリティを背負ったディアンジェリコの良さだと思うんですよ。3本弾いてみて共通して言えるのは、温かみのあるメロウなトーン。気になった人はぜひ手にとって弾いてみてほしいですね。
Kazuki Isogai (磯貝一樹)
いそがい・かずき◎1990年生まれ、大分県出身。SNSに動画投稿し、総再生数は2000万回超え、国内外から注目を集めるギタリスト。2019年NAMM SHOWでのデモ演奏を皮切りに海外進出。Kazuki自身の活動のみならず、最近ではプロデュース、アレンジ、サポート・ミュージシャンとしてもワールドワイドに活動している。