今さら聞けないレス・ポール・レコーディングの基本。 今さら聞けないレス・ポール・レコーディングの基本。

今さら聞けないレス・ポール・レコーディングの基本。

レス・ポール氏本人が自身のシグネチャー・モデルとして最も理想を反映し、実際に愛用していたレス・ポール・レコーディング。ここでは、1971年~79年の間に製造されたこのモデルのスペック面を徹底解説しよう! 

撮影=星野俊 文=菊池真平
*本記事はギター・マガジン2022年1月号に掲載された記事『ギブソン・レス・ポール・レコーディング ~レスの理想を体現した究極のレス・ポール・モデル』を一部抜粋/再編集したものです。

1972 Gibson
Les Paul Recording

提供:イシバシ楽器御茶ノ水FINEST GUITARS(☎︎03-5244-5210) ※ピックガードは欠品

実に幅広い音作りができる1本

1971年に登場した“レコーディング”は、先行して69年から発売された“パーソナル”、“プロフェッショナル”よりも1/2インチほど小さなボディだったが、それでも一般的なレス・ポールよりも幅の広い13 1/2インチ幅のボディだ。薄いメイプルを挟んだパン・ケーキ構造を採用し、トップにはソリッドのマホガニーが使われている。さらにバックにコンター加工が施されている点も特徴だ。

今回紹介するギターは72年製で、ロー&ハイ・インピーダンスをスイッチで切り替えられる1stバージョン。ギブソン・ロゴがエンボス加工されたロー・インピーダンス・ピックアップが2つマウントされ、フェイズやディケイド、トレブル&ベースの各EQのセッティングで幅広いサウンドメイクが可能だ。

最大の特徴、ロー・インピーダンスPU!

もともとレス・ポールが開発したピックアップを再現したロー・インピーダンス・ピックアップ。2つのアルニコ5が使われているが、それぞれのコイルは仕切り板で分断され、24AWGの銅線が約300ターンずつ逆に巻かれている。コイルはエポキシでコーティングされ、フィードバックを低減。レンジの広い出力を生む。

ワイド・トラベラー・ブリッジ

1971年に登場した“レコーディング”には、当初ABR-1ブリッジが使われていたが、新開発された写真のようなワイド・トラベル・チューン・オー・マティック・ブリッジ(※ワイド・トラベラー、もしくはハーモニカ・ブリッジと呼ばれることもある)へと置き換わった。よりピッチの調整幅が増え、サドルが脱落しないのが長所だ。

“ディケイド”などを有したツマミ

メタル・ノブが用いられた4つのコントロール。ネック側からマスター・ボリューム、ディケイド(※ロー・インピーダンス出力時のみ作動し、11段階のロータリー・スイッチでハイを削っていく)、トレブル、ベースとなっている。

フェイズ・スイッチ

ピックアップの位相を切り替えることができるスイッチ。フロント&リアのミックス・ポジションでは、ミッド・レンジに特徴が出るフェイズ・アウト・サウンドを簡単に生み出せる。

HI/LO出力切り替えスイッチ

一般的なギター・アンプへと出力できるハイ・インピーダンス出力と、ミキサーなどに直接プラグインできるロー・インピーダンスを切り替えるスイッチ。“レコーディング”以前に発売された、“プロフェッショナル”や“パーソナル”には付いていない。

4ノブの組み合わせを選ぶ3WAYレバー

通常のトーン・コントロールのように音色を変更するためではなく、特定の回路をバイパスできるスイッチ。ポジション1では、ボリューム&ディケイドのみ機能。2では、すべての回路が作動。3では、トレブルとベースの回路のみがバイパスされるように設計されている。

3ウェイPUセレクター

フロント、ミックス、リアを切り替えるための3ウェイ・トグル・スイッチ。1977年前後から、コントロールの配置が変更された後期バージョンへ移行するタイミングで、ピックアップ・セレクターはショルダーへ移動された。

複雑なサーキット

複雑なサーキットが組まれた“レコーディング”だが、それを格納するためのキャビティもかなり面積が大きい。またノイズを低減するためにアルミ箔が貼られている。ハイ・インピーダンスで出力するために、小型のトランスが使われている点も特徴と言える。

パン・ケーキ構造のマホガニー・ボディ

ボディ材はパン・ケーキ構造で、トップにはメイプルではなくマホガニーが用いられ、重い個体が多い。フィニッシュはウォルナットがレギュラーで、75年頃からホワイト、78年頃にはエボニーとチェリーがオプションに加わった。ボディ・サイズは13 1/2インチ(342.9mm)と通常のレス・ポールよりも幅が広い。

3ピース・マホ・ネック&ローズ指板

本器は72年製のため、ネックは3ピースのマホガニー。他モデル同様、75年頃から3ピース・メイプルへ変更された。ナット幅は実測で約42.5mm。程良いグリップで演奏性も高い。指板はローズウッドで、カスタム同様ブロック・ポジション・マークが入っており高価なモデルであることを伺わせる。

おもな仕様変遷

71年:ブリッジがワイド・トラベル・チューン・オー・マティック・ブリッジに変更/75年:白フィニッシュがオプションとして加わり、途中からメイプル3ピース・ネックに/76年頃:サーキットが見直されて2ndバージョンに。ハイ/ロー・インピーダンスが分かれた2つのジャックを有するモデルへ変わっていく(下の78年製を参照)。

1978 Gibson Les Paul Recording

78年製の“レコーディング”。ジャックはボディ側面へ移動し、HI/LO出力切り替えスイッチが消滅。コントロールの配置も変更された。
78年製の“レコーディング”。ジャックはボディ側面へ移動し、HI/LO出力切り替えスイッチが消滅。コントロールの配置も変更された。

ギター・マガジン2022年1月号
続・もしも、ペダル3台だけでボードを組むなら?

本記事はギター・マガジン2022年1月号に掲載された記事『ギブソン・レス・ポール・レコーディング ~レスの理想を体現した究極のレス・ポール・モデル』を一部抜粋/再編集したものです。本誌ではレス・ポール・レコーディングの誕生秘話や現代の音楽への親和性について考察した記事などのほか、本モデル愛用者である徳武弘文による特別寄稿文も掲載しています。

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