DOPHIXサウンドの核心に迫る4機種をレビュー！

イタリアのフィレンツェにて2015年に創業したペダル・ブランド＝DOPHIX。今回は高品位な同社製ペダルから厳選4機種を試奏＆レビュー。セッティング例もぜひ参考にしてほしい。

取材・文：井戸沼尚也　撮影：菊池真平
＊本記事はギター・マガジン2022年10月号の特集『DOPHIX〜妥協なきオリジナリティに圧倒される情熱のペダル』を再編集したものです。

Michelangelo／ミケランジェロ
Overdrive Plus

その名に恥じない万能な歪みが生み出せるオーバー・ドライブ＋ブースター

　絵画や彫刻など幅広く才能を発揮した“万能の人”ミケランジェロの名を持つ、オーバードライブ＋ブースター。特徴はその名のとおり、歪みに関して万能なところで、プリ・ゲイン〜メインのドライブ・セクション〜アウトのブーストまでこれ1台で音作りが完結できる。

　まずはドライブ・セクションのミニ・スイッチで、3種のキャラクターのダイオード（暖かみのあるゲルマ／しっかり歪むシリコン／音が強く前に出るFET）から好みの音を選ぶ。そこにゲインの前段階で歪みを調整するプリ機能や、効きの良い2バンドEQを絡めて、多彩な音作りが可能だ。

　さらに、歪みに原音をミックスできるブレンド機能が効果的。どんなギターを合わせてもニュアンスがしっかりと出てくれて、ご機嫌なドライブ・サウンドを生み出すことができる。ここまでで、オーバードライブとしての完成度の高さに驚かされること必至だ。そして、その音をアウトプットの段階でプッシュするブースター・スイッチ（単独での使用も可能）を備え、ギター・ソロやオブリガートで瞬間的に音量アップができる。

　本当に至れり尽くせりの機能が満載で、メインのオーバードライブ、前段プッシュ用のドライブ、ブースターの三役を1台でこなし、これを使えばボードの省スペース化も実現できるだろう。

【セッティング例】　シリコンを選択し、深い歪みを生む

Michelangeloのセッティング例 — ※センターになっているツマミは好みでセッティング。

非常に多彩だが、一例としてダイオードはよく歪むシリコンを選択、gainも15時以上で強めの歪みを作っておき、blendをフルから下げて原音を混ぜていくと、よく歪んでかつニュアンスが出やすい音になる。

【スペック】
コントロール：BOOST、GAIN、PRE、LEVEL、PREスイッチ、B、BLEND、H、FETスイッチ
入出力：インプット、アウトプット
電源：9Vアダプター（センター・マイナス）、006Pバッテリー
外形寸法：124（W）×60（H）×95（D）mm
重量：約450g

【価格】
48,400円（税込）

【問い合わせ】
ゼンブジャパン　TEL：06-6441-2263　http://www.zenbu-jp.com/

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David／ダビデ
Overdistortion

暖かなクランチからワイルドなハイゲインまで完結

　オーバーディストーションと銘打った歪みペダル。ロー・ゲインのオーバードライブからハイゲインのディストーションまで、これ1台でカバーできる。

　ロー・ゲイン時はややブルージィな暖かい音で、ゲインを上げると本機の個性であるワイルドさが際立つ。ゲインを深くした場合、メタル系やハード・フュージョン系などで使われるようなクリーミーな歪みというよりは、歪みの粒がわずかに粗い音で、70年代のクラシック・ロック、あるいは90年代のグランジなどとの相性が抜群だ。粒がやや粗いといっても、弾きにくさや扱いにくさはまったくない。

　コントロールに関してはgas（ゲイン）、tone、levelというシンプルな設計なので、使い方に迷うことはないはずだが、gasを12時以降に設定すると歪み量が増えるだけでなく、同時に低域のコンプレッションが強くなるのが特徴。さらにgasを上げるとミドルも良い具合に張り出してくる。このgasのコントロールで、歪み量と全体の“暴れ感”を調整するイメージだ。

　トーンの効きも実用的な範囲に設定され、特に10時方向からフルまでの範囲はどこでも扱いやすい。倍音が飛び散るような華やかな高域も、本機の魅力の1つだ。シングルコイル、ハムバッカーを問わず、どちらでも心地良い歪みを作り出せる。

【セッティング例】　gasの細かな調整で好みの音を探る！

gas14時、tone13時、levelはアンプの音量に合わせて任意という設定で、深めの歪みと低域のほど良いコンプレッションが得られた。この低域がキモなので、gasを細かく調整して好みの音を探ってほしい。

【スペック】
コントロール：gas、tone、level
入出力：インプット、アウトプット
電源：9Vアダプター（センター・マイナス）、006Pバッテリー
外形寸法：72（W）×62（H）×122（D）mm
重量：約290g

【価格】
35,200円（税込）

【問い合わせ】
ゼンブジャパン　TEL：06-6441-2263　http://www.zenbu-jp.com/

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Uomo Vitruviano／ウオモ・ヴィトゥルヴィアーノ
Chorus-Phaser

独特で上質な揺れ感は往年の名器に近いイメージ

　アナログ・モジュレーション・ミキサーを備えたコーラス／フェイザー。揺れもの好きの方には、コーラスやフェイザー単体の音ではなく、往年の名器“Uni-Vibe”のような複合的な揺れを生み出すペダルだと考えてもらうと、本機の音を理解しやすいかもしれない。原音の質感を損なわないファットなコーラス・サウンドを基本に、位相変動効果による“アワアワとしたニュアンスの独特かつなめらかな揺れ”が加わって本機のサウンドを形成している。

　コントロールはspeedとdepthのみと超シンプルで、セッティングに関しては迷いようがない。どのように設定しても心地良く、上質な揺れを体感できる。この上質さが本機の特徴で、depthを最も深くしても数多のUni-Vibeリスペクト製品にありがちな下品さがない。また、そうした製品群に比べて、圧倒的に軽量でコンパクトな点も本機の優れたところだ。

　speedに関しても、デジタル機器のようにBPMに揺れをバチッと合わせるのではなく、揺らぎをなんとなく合わせる、ざっくりとした使い方のほうが本機の魅力が引き立つ。

　本機は単体で使っても十分に楽しめるが、やはり前段にファズをつないだ時のジュワーッとにじむような揺れはぜひ試してみてほしい。ストラトキャスター、ファズフェイスとの組み合わせなら、パーフェクトだ。

【セッティング例】　どんな曲にも合う心地良い揺らぎ

depthは9時位から“アワアワした成分”が目立ち始めて以降どんどん深くなるが、ここでは嫌味のない12時に設定。speedは速すぎず、遅すぎない13時にすると、どんな曲にも合う心地良い揺れが得られる。

【スペック】
コントロール：speed、depth
入出力：インプット、アウトプット
電源：9Vアダプター（センター・マイナス）、006Pバッテリー
外形寸法：72（W）×62（H）×122（D）mm
重量：約285g

【価格】
35,200円（税込）

【問い合わせ】
ゼンブジャパン　TEL：06-6441-2263　http://www.zenbu-jp.com/

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Leonardo／レオナルド
Compressor

アタック感と圧縮感が絶妙なシンフォニーを生む

　本機は、圧縮のダイナミック・レンジを調整できるsensitivityと、音量を調整するlevelという2つのコントロールのみの超シンプルなコンプレッサー。アタックやリリースは固定となっており、セッティングに迷うことはないだろう。しかし、シンプルだからといって侮ることのできない、非常に優秀なコンプレッサーという印象だ。

　固定となっているアタックやリリースのチューニングが秀逸で、コントロールをどう設定しても心地良い音しかしない。sensitivityは、11時方向あたりからはっきりとした圧縮感と長いサステインが感じられ、そこからフルまで、どこに設定してもOK。レベルはかなり大きく音量を上げることができ、ブースターとしても気持ち良く使える。

　一般的にコンプレッサーはかかりが明確なほど弾き初めの感動は大きいが、その分すぐに弾き飽きてくるモデルも多い中で、本機のかかり具合のさじ加減、アタック感と圧縮感のバランスは絶妙としか言いようがなく、試奏を始めると時が経つのを忘れて弾いてしまう。サステインの長さとノイズの少なさも特筆ものだ。

　カッティング、アルペジオ、クリーンなソロなど、どんな場面で使用しても音の粒立ちや和音の解像度が格段に上がり、本機の優秀さを実感できるだろう。派手さはないが、名作といってよい仕上がりだ。