2022年12月に新作『Hotel Insomnia』をリリースした4人組バンドFor Tracy Hyde。eureka(vo,g)のキャッチーなボーカル・メロディと並び、巧みなギター・アレンジで表現されるドリーミーなシューゲイザー・サウンドも彼らの魅力の1つだ。今回はその世界観を司るリード・ギター、夏botの使用ギター&エフェクター・ボードをご紹介。
取材/文=伊藤雅景 本人写真=renzo masuda 機材撮影=星野俊
Guitars
Rickenbacker/360/12
バンド・サウンドのカラーを決定づける12弦ギター
前作『New Young City』(2019年)のリリース・ツアー前まで使用していたリッケンバッカー330/12に替わり、今作『Hotel Insomnia』でメイン・ギターを務めた360/12。“前より音作りがしやすくなった”そうで、今作の担当エンジニアからは“330/12と比べてレンジ感が広くなった”と言われたという。なお、レコーディングではほぼフロント・ピックアップを使用。
ライブではカポタストを使う頻度が多いため、カポ装着時にオクターブが合うようにセッティングされていることが特徴。また、複弦のチューニングは“気持ちシャープめ”の音程を狙っているとのこと。
Fender/Alternate Reality ELECTRIC Ⅻ
“エイプリルブルー”で使用するメイン・ギター
夏botがリード・ギターを務めるもう1つのバンド、“エイプリルブルー”でメインとして使用するフェンダー製12弦ギター。For Tracy Hydeでの使用はないが、取材日に調整から上がってきた本器を持参していたため、撮影させてもらった。
リッケンバッカー360/12と比べると、トレブルの成分が強くソリッドな音色が特徴とのこと。ピックアップはフロント・ポジションのみ使用。なお、オクターブのセッティングやセットアップは前述の360/12と同様だ。
Pedalboard
【Pedal List】
①BOSS/BD-2(オーバードライブ)
②BOSS/DS-2(ディストーション)
③ProCo/RAT(ディストーション)
④BOSS/CS-3(コンプレッサー)
⑤Electro-Harmonix/Ram’s Head Big Muff Pi(ファズ)
⑥KORG/DT-10(チューナー)
⑦Jim Dunlop/GCB-95 Cry Baby Wah(ワウ・ペダル)
⑧BOSS/CH-1(コーラス)
⑨TC Electronic/Spark(ブースター)
⑩BOSS/PS-5(ピッチ・シフター)
⑪BOSS/TR-2(トレモロ)
⑫BOSS/LS-2(ライン・セレクター)
⑬Behringer/RV600(リバーブ)
⑭Behringer/EM600(ディレイ)
⑮BOSS/PH-3(フェイザー)
⑯strymon/blueSky(リバーブ)
⑰Electro-Harmonix/Superego+(ギター・シンセサイザー)
⑱Behringer/DD400(ディレイ)
⑲DigiTech/Digiverb(リバーブ)
⑳VOCU/Baby Power Plant Type-B(パワーサプライ)
㉑VOCU/Baby Power Plant Type-B(パワーサプライ)
大量の空間系ペダルが並べられた夏botのエフェクター・ボード。信号は①〜⑲まで番号順に進み、そのままアンプへと向かう。反時計回りに信号が進むように組まれているのが特徴的だ。なお、アンプは限りなく“どクリーン”に近いセッティング。
ここからはサウンド・メイクのポイントを解説していこう。
まず歪みペダルは、①BOSS/BD-2がクランチ・サウンドを担い、②BOSS/DS-2と③ProCo/RATの2台はゲインを最大まで上げ、轟音を出すセクションで踏む。②は“ほぼ輪郭がわからなくなる”ような音色で、③は“粒が立つ過激なオーバードライブのような印象”とのこと。
④BOSS/CS-3は①〜③の音量差を整える目的で使用しており、常時ONの状態。ギター・ソロで音量をプッシュする際は、④の後段につながれた⑤Ram’s Head Big Muff Piが活躍する。⑨TC Electronic/Sparkはクリーン・ブースターとして使用。また余談だが、ボード中央に置かれたBOSS/MT-2は故障中のため結線されておらず、スペースを埋めるために配置している。
そして、特徴的なのは空間系の使い方だ。⑭Behringer/EM600、⑯strymon/blueSky、⑲DigiTech/Digiverbの3つを常に掛けっぱなしにしており、そのサウンドがFor Tracy Hydeのドリーミーなギター・アンサンブルの“要”となっている。カオスなセクションではそれら以外のペダルも含めて“全踏み”することもあるそうだ。
作品データ
『Hotel Insomnia』
For Tracy Hyde
P-Vine/PCD-25351/2022年12月14日リリース
―Track List―
- Undulate
- The First Time (Is The Last Time)
- Kodiak
- Lungs
- Estuary
- Bleachers
- Friends
- Natalie
- Sirens
- House Of Mirrors
- Milkshake
- Subway Station Revelation
- Leave The Planet
―Guitarists―
eureka、夏bot