旅するシンガー・ソングライターとして活動し、レーベルの主宰やプロデューサー業を始め、多方面で活躍する大柴広己。彼が新作『LOOP8』でも使った、愛用のビンテージ・ギター4本を紹介しよう。
取材・文=辻昌志 撮影=星野俊
※本記事はギター・マガジン2023年2月号にも掲載されたものに一部コンテンツを追加したものです。
Electric Guitars
1962 Fender Jazzmaster
リフィニッシュの赤が眩しい62年製
クレイドットのポジション・マークが打たれた、ラウンド張りローズウッド指板の1962年製ジャズマスター。キャンディ・アップル・レッドの塗装はリフィニッシュされたものだそう。金属パーツはオリジナルの状態でゴールド・パーツが搭載されていたというレアな1本。ブリッジをMastery製に、ペグを現行のクロームのものに交換し、チューニングが安定したとのこと。また、プリセット・スイッチの配線はカットしている。今作では「がらんどう」や「さよならグローリーデイズ」など、メインのエレキ・ギターとして活躍。ピックアップはフロントをおもに使用した。
1966 Fender Telecaster
タバコのヤニによる経年変化
メイン器である66年製テレキャスター、通称=DON SNOW。本来のボディ・カラーはソニック・ブルーだが、前オーナーのタバコのヤニによりブロンドのような色味に変化している。ブリッジはMastery製に交換済み。フロントのハムバッカーはナンバードPAFで、購入時から交換されていたそう。トーン・ツマミがプッシュ/プルできるように改造されており、コイル・タイプが可能。サウンドについては“キンキンとしたテレキャスの音はしない。低音がブーミーなのに抜けてくる”と大柴談。今作では「がらんどう」のカッティングなど、多くの曲のバッキングで使用した。
Acoustic Guitars
1945 Gibson L-50
恐ろしく鳴る作曲用のアコギ
10年ほど前に入手したというスクリプト・ロゴの45年製L-50。購入時にはペグとブリッジが交換されており、テイルピースも本来のトラピーズではなく、このフリークエンセーター・テイルピースが取り付けられていたそう。今作のレコーディングでは使用していないが、作曲用として活躍。家でギターを弾く時にも重宝するそうで、本人曰く“ほかのギターだと「よしっ、ギターを弾かないと!」ってなるけど、コレはならない(笑)。酒を飲んで夜中とかに弾いて、作曲してましたね。気張らないギターです”とのこと。また、“ゴリゴリに鳴る”こともお気に入りポイント。
1982 Martin D-28
自己主張しない品のある音
自分と同い年だということで購入した82年製のマーチンD-28。スプルース・トップにローズウッドのサイド&バックという、マーティン王道のモデルだ。先日、とあるライブの待ち時間で楽器店に行き、たまたま本器を見つけ、試奏後に即決で購入したそうだ。ピックアップ&プリアンプはFishmanのMatrixをサウンドホール内に取り付けている。今作で聴けるアコギの音はすべてこのD-28によるものだ。サウンドは大柴曰く“ちゃんと品がある音”とのことで、今作では“エレキがわりとガチャガチャしているから、アコギは自己主張しない音のD-28を使いたかった”ため採用したそうだ。
ギター・マガジン2023年1月号
『SUGIZO&MIYAVI(THE LAST ROCKSTARS)』
本記事はギター・マガジン2023年1月号に掲載されたものに一部コンテンツを追加したものです。
作品データ
『LOOP8』
大柴広己
ZOOLOCATION/ZLCT-1007/2022年12月28日リリース
―Track List―
- がらんどう
- さよならグローリーデイズ
- ピアノマン
- 何( ゚д゚)しとん?
- 猫が来た
- ベーコンエピ
- 一秒でも長く
- 愛に戻る
- LOOP 8
―Guitarist―
大柴広己