ギター・マガジンが注目するイコライザー4機種を紹介! グラフィック/パラメトリックEQの違いだけでなく、各社で独自の機能やサウンドを持つ個性派ばかりだ。エンジニア/アレンジャー/ギタリストの鈴木Daichi秀行氏によるレビュー&サンプル・セッティングを参考に、EQで自分だけの音を作ってみよう!
取材/文=編集部 図版デザイン=須藤廣高 撮影=小原啓樹
※本記事はギター・マガジン2023年1月号『ギターの旨みを引き出す! EQ&コンプ・レシピ』から一部抜粋/再編集したものです。
①BOSS/EQ-200
接続順が自由自在な2基のグラフィックEQを搭載
10バンドのグラフィックEQ×2基を搭載するEQ-200。CHANNEL AとCHANNEL Bでそれぞれ違った設定のイコライジングが可能で、それらは直列または並列で使用できる。
さらに、外部エフェクターをインサートして、その前段/後段に2基のEQを使うこともできるという高機能さを持つ。入出力と内部処理は32ビット/96kHzで優れた音質になっており、さらに超低ノイズ設計も兼ね備えている。
各バンドは、最大で15dBのブースト/カットが可能。アウトプットのレベル・スライダーもスタンバイしており、バイパス時との音量バランスを調整できる。グラフィックEQではあるが、各バンドの中心周波数を3タイプから選択でき、エレキ・ギターだけでなく、アコギやベースなど、楽器に合わせた設定が可能だ。
また、調整したEQの状態は本体上のLCDディスプレイにカーブが表示されるので、視覚的にもわかりやすくなっているのが嬉しい。
セットアップしたEQ設定はユーザー・メモリーに保存ができ、合計128の設定を切り替えることが可能。本体のフット・スイッチは、メモリーを順送りに切り替えるだけでなく、切り替える範囲の選定やメモリー番号を指定してダイレクトに呼び出すなど、スイッチのアクションも設定できる。
MIDI入出力端子(ステレオ・ミニ)を使えば、MIDIによるプログラム・チェンジでメモリーの制御も可能だ。外部フット・スイッチ用の端子もあり、エクスプレッション・ペダルを使うことでボリューム・ペダルとして全体またはCHANNEL Aのみの音量をコントロールするといったこともできるようになっている。
Suzuki’s Impression
細かく設定を追い込める機能性が魅力
スライダーに加え、LCDディスプレイでのEQカーブ表示があるので、とても視認性が良いです。スライダーに対する画面表示の追従性も優れています。
グラフィックEQのコツとしては、調整したいバンドの隣のバンドも一緒に動かし、ゆるやかなカーブを描くようにすること。周波数帯域は音のピッチにも影響するため、例えばあるバンドだけを大胆にカットすると、特定の音を弾いた時に急に音量が下がる、といったことも起こりえます。とはいえEQ-200の各バンドは極端な設定をしても自然な音色をキープしてくれますね。
やはり特徴的なのは2基のEQを同時に使えるということです。間に外部エフェクターをインサートできるので、歪み系との相性が良いと感じました。サウンドメイクにこだわりたい人は、前段のEQで歪みペダルに合わせたキャラクターを作り、歪みを通ったあとの音の補正を後段で行なうのがオススメです。
また、各バンドの周波数設定が3タイプから選べるので、前段と後段で違うタイプを使うことも可能。サウンドに合わせて細かく設定を追い込んでいける機能性がこのEQ-200の魅力だと言えます。
Sample Setting
歪みを活かすEQサンドイッチ
CHANNEL A(左)とB(右)を使い、間に歪みペダルをインサートするシチュエーションを想定したセッティングです。前段のCHANNEL Aでは中域を少し上げ、歪みによって耳障りになりやすい高域部分を抑えるために、3.2kHzと6.4kHzを下げています。後段のCHANNEL Bでは、歪みによって膨らみすぎた低域を抑え、さらに中域をブーストしておいしい帯域を出しました。
②EarthQuaker Devices/Tone Job
シンプルな操作で奥深いEQが可能
クリーン・ブースターとしても活躍
2004年にオハイオ州でスタートしたEarthQuaker Devices。ビンテージ精神溢れるものからモダンなスペックまで、多種多様なペダルをラインナップしている。その中で唯一のEQペダルが、このTone Jobだ。
オーディオ・グレードを謳っており、ライブやレコーディングといった使用シーン、楽器を問わずに優れた音質でイコライジングが行なえる。
3つの帯域をコントロールできる3バンドEQで、パラメーターはいたってシンプル。アウトプット・レベルを調整するLevelのほか、各帯域のレベルをコントロールするTreble、Bass、Midが並ぶ。
各バンドは最大で±20dBのブースト/カットが可能となっている。Trebleは2kHzより上の帯域に対応するシェルビング(一定の周波数より上または下をまとめて調整できるEQタイプ)、Midは1kHzあたりをブースト/カットできるピーキング(特定の周波数ポイントを山なりに調整できるEQタイプ)、Bassは500Hzあたりから下の帯域をコントロールするシェルビングだ。
パラメトリックEQはグラフィックEQと違い、広いQ幅でバンド同士の相互作用が生まれるのが特徴。Tone JobではMidの設定がTrebleとBassに大きく影響を与えるため、シンプルな操作ながら多彩な音色変化を楽しめるだろう。
アウトプット・レベルは入力信号を約5倍まで増幅可能なので、真空管アンプをドライブさせるクリーンなブースターとしても活躍してくれる。また、電源はDC18Vまで対応しており、高い電圧で駆動することで余裕のあるヘッドルームが得られる。こだわり派は試してみよう。
Suzuki’s Impression
直感的に扱えるアンプ・ライクな操作性と音
ギタリストにとって非常に馴染み深いパラメーターのレイアウトになっていますね。Treble、Bass、Midと書かれた3バンドとLevelのみで、アンプ・ライクな操作性です。
EQに慣れていない人でも扱いやすいエフェクターだと思います。感覚的にサウンドメイクができるので、イメージするサウンドへたどり着くのが早いEQだと感じました。
それぞれのバンドは、グラフィックEQのように周波数帯域の調整はできないのですが、3バンドのQ幅はゆるやかなためナチュラルな効き方になっています。ここもまさにアンプ・ライクで、極端なセッティングにしても“エフェクターでイコライジングしました!”というような印象にならず、アンプで音を作っているかのような自然さがあります。
ざっくりとした操作性かと思いきや、微妙なノブの調整にも反応してくれて、音作りの幅は広いです。最大で±20dBもブースト/カットできるので、かなり過激な音色変化も生み出せます。とは言え、どんな設定でも破綻しないという良さがありますね。アンプ的なEQということもあり、Midをグッと上げたサウンドはギタリストにハマると思います。
Sample Setting 1
音像をスッキリさせ抜け感を演出
ここではレス・ポールなどハムバッカーのギターと組み合わせて使うシーンを想定してみました。中低域が出やすいタイプのギターなので、それが魅力でもあり、時には弱点にもなります。Tone JobのMidをカット方向に回すことで不要な中域を削り、音像をスッキリさせることが可能です。さらに、TrebleとBassをブーストし、ラインが聴こえやすいように演出しています。
Sample Setting 2
誰もがハマるミッド・ブースト
インプレッションで語ったように、このTone JobはMidが肝になっています。中域をブーストしたギター・サウンド作りにはぴったりでしょう。このセッティングはMidをフル近くまでグッとブーストさせています。加えてTrebleで抜けの良さをプラスしました。歪みペダルとの組み合わせもバッチリ。前段/後段のどちらでもOKなので、自身の好みに合わせて変えてみて下さい。
③Empress Effects/ParaEQ MKII
レコーディング機器に匹敵する
トランスペアレントなパラメトリックEQ
レコーディング機器レベルのペダルを開発しているEmpressのパラメトリックEQ。Empress製品の中でも高い人気を誇ったParaEQの後継モデルだ。前モデルの操作性を踏襲しつつ、機能がさらにアップグレードしている。
EQは3つの帯域をコントロールできる3バンド仕様。low/mid/highのそれぞれのバンドは周波数帯域を無段階で設定可能だ。lowは35〜500Hz、midは250〜5kHz、highは1k〜20kHzの間で調整するポイントを設定できる。
ブースト/カットするゲイン幅は±15dBまで対応。さらに、各バンドのQ幅が3タイプから選べるので、ゆるやかな音色変化からピンポイントの調整まで、幅広いEQができるのが魅力的だ。
さらにブースター機能も搭載し、0〜30dBまで無段階で増幅可能。ミッド・ブースターやトレブル・ブースターとしての活用もできるだろう。
ParaEQ MKIIは内部昇圧で28Vでの駆動となっており、レコーディング機器にも匹敵するヘッドルームを持つことで、108dBものSN比を実現している。トランスペアレントな音質で細緻なイコライジングができるのはメリットだ。
アドバンス設定として、トゥルー・バイパスとバッファード・バイパスの切り替えが行なえるほか、boostスイッチの挙動も設定可能。boostスイッチを押した際にEQとブースト・セクションを同時にオン/オフするか、EQとブーストを独立したスイッチで操作するかを選べる。
また、ParaEQ MKIIの機能を拡張したモデル、ParaEQ MKII Deluxeもラインナップしている。
Suzuki’s Impression
ギターの音作りがしやすい帯域設定
物凄く良い効きのEQですね。各バンドで3つのQ幅を選べるのもポイントが高いです。ギターのEQエフェクターの多くは広いQ幅に設定されていますが、ParaEQ MKIIのようにコントロールができれば、ピンポイントで周波数の調整が行なえます。
アンプ的な感覚でEQを扱いたい場合はトグル・スイッチを右にして広いQ幅に、細かく補正する場合はトグル・スイッチを上か左にして鋭いQ幅にするのがオススメです。
上位モデルのParaEQ MKII DeluxeはQ幅が無段階になり、フィルターとシェルビングも加わっているので、より音を突き詰めたい人にピッタリでしょう。
各バンドで設定可能な周波数帯域は、ギターのサウンドメイクが行ないやすい範囲になっていると感じました。高域はギターの帯域を越えたエアー部分まで対応していて、レコーディングで重宝すると思います。
ParaEQ MKIIはヘッドルームが高いのも特徴で、EQでかなりブーストしても歪むことがありません。ブースター機能も備わっています。クリーンにアンプをドライブさせてくれるイメージで、高級感があります。
Sample Setting 1
歌とギターのぶつかりを回避
歌ものの演奏を想定したセッティングです。前述したように、ギターとボーカルは帯域がぶつかりやすく、アンサンブルの中での抜けに関わってきます。ここでは、男性ボーカルとぶつかりやすい1kHzあたりをmidで下げました。
女性ボーカルの場合は2kHzあたりに設定すると良いでしょう。加えて、low(100Hzあたり)とhigh(4kHzあたり)を持ち上げ、メリハリを作っています。
Sample Setting 2
相乗効果で作る自然なイコライジング
low/mid/highとノブには書かれていますが、それぞれ対応帯域が被っている部分もあります。あえて近い帯域を2つのバンドでコントロールすることで、相乗効果を生み出せるのもパラメトリックEQの面白いところです。
ここではlowを400Hz、midを800Hzあたりにセット。互いが交じり合い、ゆるやかなカーブでロー・ミッドが自然に持ち上がります。少しだけブーストもしました。
④Source Audio/EQ2 Programmable Equalizer
プラグインEQのような
緻密なコントロールができるペダル
ソフトウェアやアプリ、センサー技術など、先端技術をエフェクターに落とし込んできたSource AudioのEQペダル=EQ2 Programmable Equalizer(以下EQ2)。ディスプレイには10バンドの周波数とEQの様子が表示されており、グラフィックEQのようにも見えるが、実はパラメトリックEQの自由度を秘めている。
各バンドは20〜20kHzの間で自由に設定可能。さらにQ幅もコントロールでき、バンド1と10はシェルビングにすることができる。また、EQは2ch分がスタンバイしており、2系統あるインプットとアウトプットを使うことで直列や並列のほか、外部エフェクターのインサートも可能だ。
さらにEQ2の自由度を高めているのは、Neuro Desktop Editor(Mac/Win)とNeuro Mobile App(iOS/Android)という無償アプリ。
このアプリをインストールしたパソコン/スマートフォン/タブレットをEQ2とUSB接続(TRSケーブル接続も可能)することで、プラグインのパラメトリックEQのような画面で各バンドのコントロールができる。さらに、リミッターやノイズ・ゲートなど、本体だけでは操作できない機能にもアクセス可能だ。
プリセットは計128まで保存できる。本体にはMIDI INとコントローラー用端子が備わっているので、外部スイッチでの切り替えにも対応。また、外部コントローラーにパラメーターをアサインすることも可能で、例えばエクスプレッション・ペダルでバンドの周波数をコントロールすれば、ワウのような効果が得られる。アウトプット・レベルをアサインすれば、ボリューム・ペダルとしても使えるだろう。
Suzuki’s Impression
直感的に扱えるアンプ・ライクな操作性と音
本体上のディスプレイに表示されるライトの感じや、ロータリー・エンコーダーを回しながらバンドを選んでブースト/カットするという操作方法は、昔のアーケード・ゲームを彷彿させますね(笑)。
10バンドをそれぞれ操作するのでグラフィックEQ的ではありますが、実はパラメトリックEQ。各バンドの周波数、Q幅など、本体だけでもかなり細かい調整ができるので驚きました。バンドの周波数設定は自由度が高く、バンド1をバンド2の周波数より上に設定するというようなこともできますね。
EQとしての機能だけでなく、リミッターやノイズ・ゲートが付いているのも親切です。チューナーまで備わっているので、EQ2があればペダルボードがスッキリ収まるんじゃないでしょうか。
専用アプリは完全にプラグインEQの様相です。本体の操作だけでは追い込めなかった部分も、アプリ上で視覚的にわかりやすくコントロールできるので便利ですね。Q幅もアプリ上ではさらに詳細な設定が可能になっているので、自宅でしっかりと音作りをしてライブやレコーディングに臨む、という使い方が合っているかもしれません。
Sample Setting
豊富なバンド数を活かしたミッド・カット・サウンド
クリーン・トーンやカッティングでの音作りをイメージしました。中域をゆるやかなQ幅でカットし、高域のキラッとした成分を持ち上げています。カットは1つのバンドでなく、2つを組み合わせてカーブを作っているのがポイント。
高域は、シェルビングでまとめてブーストすると耳に痛い成分まで出てきてしまうので、ピーキング+細めのQ幅で少しずつブーストしています。
ギター・マガジン2023年1月号
特集:ビートルズ『Revolver』
本記事はギター・マガジン2023年1月号の『ギターの旨みを引き出す! EQ&コンプ・レシピ』内に掲載されています。それぞれの基本的な知識や、効果的な使い方などを注目の機種のレビューと共にお届け!