進化を続ける、ミヤ(MUCC)の巨大なサウンド・システム 進化を続ける、ミヤ(MUCC)の巨大なサウンド・システム

進化を続ける、ミヤ(MUCC)の巨大なサウンド・システム

渾身のフル・アルバム『新世界』の続編となる、『新世界 別巻』を2022年12月にリリースしたMUCC。今回は、その発売記念公演『MUCC TOUR 2022 「新世界」〜Beginning of the 25th Anniversary〜』のリハーサル現場に潜入し、ギタリストのミヤがライヴで使用するペダルボード、アンプ、ラック・システムを撮影。彼のサウンド・システムの秘密を紐解いていこう。

取材/文=伊藤雅景 写真=小原啓樹

ギターからミキサーまでのすべてのシステムを管理する、ミヤの巨大なライブ・セット。おおまかな信号順は、ギター→ボードA→ヘッド・アンプ(アンプ・セクションAorB)→マイク→各種マイクプリ(アンプ・セクションA)→ミキサーという順番になっている。

複雑なシステムのため、アンプ、ミキサー、各種エフェクト類と、順を追って解説していこう。

AMPLIFIER SECTION

まずはアンプ・セクションを見ていこう。メインのサウンド・システムをA、KEMPER+エフェクト・ペダル類が載ったラックをBとする。

アンプ・セクションA

アンプ・セクションA

A1ーSHURE/UR4D+(ワイヤレス・システム)
A2ーShadow Hills Industries/Mono Gama(マイク・プリアンプ)
A3ーNEVE/1073DPA(マイク・プリアンプ)
A4ーMesaBoogie/Triple Rectifier Solo Head(アンプ・ヘッド)※メイン
A5ーMesaBoogie/Triple Rectifier Solo Head(アンプ・ヘッド)※サブ

ミヤのギター・サウンドの核となるアンプ・セクションA。A1はギターの信号を受信するワイヤレス・システムで、A1を通過後、後述するボードCのクリーン・ブースター(C8)へと向かう。

その下にはマイクプリのA2〜3が並ぶ。“レコーディングとなるべく同じ環境を作る”という目的で用意されたシステムだ。

A4はミヤのメイン・アンプ。クリーン(CH1)、リード(CH2)、ディストーション(CH3)という使い分けだ。チャンネルごとの各ツマミは、以下に掲載。なお、A5はサブとして用意されていた。

CH1CH2CH3
GAIN9時9時過ぎ9時
MASTER8時過ぎ14時10時
PRESENCE10時前12時前9時
TREBLE14時14時12時
BASS11時12時14時
MIDDLE11時12時過ぎ13時過ぎ
トグル・スイッチCLEANVINTAGEMODERN

アンプ・セクションB

アンプ・セクションB

B1ーBlack Lion Audio/PG-1(パワー・コンディショナー)
B2ーKEMPER/Profiler Head(プロファイリング・アンプ・シミュレーター)
B3ーBOSS/SE-70(マルチ・エフェクター)
B4ーNEVE/3415X(マイク・プリアンプ)

アンプ・セクションBにはKEMPER、パワー・コンディショナー、マイクプリ、ラック型マルチ・エフェクター、ボードD&Eが配置されている。

マルチ・エフェクター(B3)はギター用のミキサー=Solid State Logic/BiG SiXのセンド・リターンへ接続。マイク・プリアンプ(B4)は以前、メイン・アンプのマイクプリだったが、現在はKEMPER用として使用しているようだ。

MIXER & MIC

続いて、ミヤが新たに導入したミキサー&マイクを紹介しよう。

Solid State Logic/BiG SiX

Solid State Logic/BiG SiX

MIC

MIC

1ーRoyer Labs/R-121(リボン・マイク)
2ーSHURE/Beta 56(ダイナミック・マイク)
3ーSENNHEISER/BLACK FIRE 521(ダイナミック・マイク)

3本のマイクで収音したギター・サウンドは、アンプ・セクションAの各種マイクプリ(A2、A3)へ送り音色を整えてから、Solid State Logic/BiG SiXへ入力される。また、本機のセンド・リターンには後述するボードCのリバーブ(C9)、ボードEのディレイ(E1)などの空間系エフェクターが接続されていたりと、レコーディング・スタジオの環境をそのままステージに持ってきたかのようなシステムだ。サウンド・エンジニアもこなすミヤならではの機材チョイスだろう。

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PEDALBOARD SECTION

ここからは気になるペダルボード・セクションを見ていこう。まずはボードA〜Eまでの写真を見て、全体像を俯瞰してから、詳細解説へと進んでほしい。

ボードA+ボードB

こちらがミヤの足下に置かれるボード。左側のボードAがメイン・システムで、右側のボードBは空間系&飛び道具系などが配置されている。

ボードC

バック・ステージに配置される、テック操作用のボード。

ボードD

前出アンプ・セクションBのラック内に配置された、KEMPERに接続される空間系エフェクトを担うペダル類。

ボードE

前出アンプ・セクションBのラック内に配置された、Solid State Logic/BiG SiX(ミキサー)のセンド・リターンに接続されるディレイ。

ボードA+ボードB(ミヤの足下)

ボードA

A1ーFREE THE TONE/JB-82S(ジャンクション・ボックス)
A2ーFREE THE TONE/ARC-4(プログラマブル・スイッチャー)
A3ーFREE THE TONE/EFS-3(EXスイッチ)
A4ーEarthQuaker Devices/Hizumitas(ファズ)
A5ーMORLEY/Bad Horsie Liberty Wah(ワウ・ペダル)
A6ーValkyrie Spear/Violence Booster MK II(クリーン・ブースター)
A7ーJ.Rockett Audio Designs/ARCHER(オーバードライブ)
A8ーFREE THE TONE/RM-2S(リング・モジュレーター)
A9ーJHS Pedals/Little Black Buffer(バッファー)
A10ーBOSS/DM-3(アナログ・ディレイ)
A11ーEarthQuaker Devices/Disaster Transport SR(MODディレイ/リバーブ)
A12ーPastFx/Chorus Ensemble(コーラス)
A13ーValkyrie Spear/Violence buffer(バッファー)
A14ーGamechanger Audio/PLASMA COIL(ファズ)
A15ーFREE THE TONE/PA-10G(プログラマブルEQ)
A16ーFREE THE TONE/PT-5D(パワーサプライ)
A17ーFREE THE TONE/PT-1D(パワーサプライ)
A18ーSonic Research/ST-300(チューナー)
A19ーFREE THE TONE/MB-5(MIDIスルー・ボックス)

ボードB

B1ーG-LAB/MWW-1(ワウ・ペダル)
B2ーThird Man/Triplegraph Pedal(デジタル・オクターブ・ペダル)
B3ーBOSS/TE-2(エコー)
B4ーBOSS/DM-2w(アナログ・ディレイ)
B5ーDEMEDASH/T-120(ビデオテープ・エコー)
B6ーDeath By Audio/ROOMS(リバーブ)
B7ーErnie Ball/Ambient Delay(ディレイ・ペダル)
B8ーEarthQuaker Devices/Brain Dead Ghost Echo(リバーブ)
B9ーEarthQuaker Devices/Disaster Transport Jr.(MODディレイ/リバーブ)
B10ーDanelectro/Back Talk(リバース・ディレイ)
B11ーEarthQuaker Devices/Astral Destiny(オクターブ・モジュレーション・リバーブ)
B12ーFREE THE TONE/MOTION LOOP ML-1L(モジュレーション・ショート・ルーパー)
B13ーElectro-harmonix/KEY9(ピアノ・シミュレーター)
B14ーBOSS/PS-5(ピッチシフター)
B15ーFREE THE TONE/DIRECT VOLUME(エクスプレッション・ペダル)
B16ーFREE THE TONE/ミュート・スイッチ
B17ーFREE THE TONE/PT-1D(パワーサプライ)
B18ーFREE THE TONE/PT-3D(パワーサプライ)
B19ーFREE THE TONE/JB-82S(ジャンクション・ボックス)

※画像右上のGame Changer Audio/PLUS Pedal(サステイン・ペダル)はつながれていない。
※写真左下の“降車ボタン”は、SEや同期を流す合図としてマニュピレーター側の“とまります”ランプを点灯させるためのスイッチ。

ミヤこだわりのペダルがずらりと並ぶボードA&B。ギターからの信号は、プリアンプ(ボードC/C8)を通ったのち、FREE THE TONE/JB-82S(A1)を通過し、ミヤのサウンド・システム全体をコントロールするスイッチャー、FREE THE TONE/ARC-4(A2)へと向かう。

ボードBのペダルも、スイッチャーA2ですべて管理されている。スイッチャーA2を通過後は、A1のジャンクション・ボックスを経由し、アンプ・セクションAのラック裏側に配置されたスイッチャー(ARC-53M)に向かう。取材時はラックの奥に配置されており撮影ができなかったが、後述のボードCのオーバードライブ(C6)、ファズ(C7)がスイッチャー(ARC-53M)に接続されていた。

スイッチャーA2で制御しているペダルは下記のとおり。

プログラム名 *1ペダル番号と接続順
LOOP1/FuzzA4
LOOP2/WahA5→ボードB(B1〜B2)
LOOP3/CEN/SZA6〜A8
LOOP4/DLYA9→A10→A1→ボードB(B19→B3〜B11→B19)→A1→A11
LOOP5/CHOA12
LOOP6/PitchA13→A1→ボードB(B19→B12〜B14→B19)→A1→A14
LOOP7/EQA15
LOOP8/KPA※KEMPER/Profiler Head(プロファイリング・アンプ・シミュレーター)へ
*1:A12に貼られたテープに書かれたプログラム名

まず、ファズ系のループにはA4を接続。ボードCに用意しているもう1台のファズ・ペダル(C7)と曲によって使い分けているとのこと。ワウもA5とB1の2台体制。同じループに接続されているB2は、ミヤ曰く“MUCCのサウンドのキモになっているペダル”だそう。

ディレイをコントロールするループには、大量の空間系ペダルを配置。中でもB7は最近入手したミヤ一押しのディレイ・ペダル。エフェクト・レベルをスムーズに可変させられるので、今までにはできなかった新しいディレイのアプローチが可能になったという。

また、今回のセットで新たに導入されたA8は、B15でSHIFTパラメーターをリアルタイムでコントロール。

ボードC(テック操作用)

ボードC(テック操作用)
※タブレットにはセットリストが表示されているため、こちらでモザイク処理を施しております。

C1ーFREE THE TONE/ARC-53M(プログラマブル・スイッチャー)
C2ーFREE THE TONE/EFS-3(EXスイッチ)
C3ーFREE THE TONE/ARC-53M(プログラマブル・スイッチャー)
C4ーLee Custom Amplifier/12AU7(バッファー+ブースター)
C5ーGFI SYSTEMS/Specular Tempus(ディレイ+リバーブ)
C6ーIbanez/Tube Screamer 40th Anniversary Limited Model(オーバードライブ)
C7ーVoigt-Kampff/Big Muff Mod(ファズ)
C8ーValkyrie Spear/Violence Booster MK II(クリーン・ブースター)
C9ーChase Bliss Audio/CXM 1978(リバーブ)
C10ーFREE THE TONE/MB-5(MIDIスルー・ボックス)
C11ーFREE THE TONE/PT-1D(パワーサプライ)
C12ーSonic Research/ST-200(チューナー)
C13ーSonic Research/ST-300(チューナー)
C14ーPETERSON/StroboStomp HD(チューナー)

※画像右上のapi/TranZformer GT(コンプレッサー/イコライザー)はつながれていない。

ボードCにはテック操作用のスイッチャー/ペダルが並ぶ。

スイッチャーC1&C2はスイッチャーA2のスレイブになっており、各種プログラムをテックがコントロールする。

スイッチャーC3は、アンプ・セクションBのKEMPER(B2)に出力するサウンドを制御しており、C4、C5とボードDのD1が接続されている。このC3はおもに飛び道具系のサウンドを担う。C4のバッファーは、KEMPERのサウンドに真空管の温かみを加える目的で採用しているとのこと。

リハーサル時に仮で設置されていたクリーン・ブースター(C8)は、ボードAのスイッチャー(A1)へ向かう前のプリアンプの役割を担っており、アンプ・セクションAのワイヤレス・システム(A1)から信号を受け取っている。また、C9はディレイ(E1)のセンド・リターンに接続されているリバーブだ。

ボードD&ボードE(ラック内に配置)

ボードD(KEMPERに接続する空間系)

D1ーFREE THE TONE/ARC-53M(プログラマブル・スイッチャー)
D2ーThe Pill Pedal/The Pill Pedal Mono(ダッキング・エフェクト・ペダル)
D3ーFREE THE TONE/MB-5(MIDIスルー・ボックス)
D4ーFREE THE TONE/JB-21(ジャンクション・ボックス)

ボードE(ミキサー用ディレイ)

E1ーKORG/SDD-3000(プログラマブル・ディレイ)

アンプ・セクションBのラック内に設置されたボードD&E。ボードDはC3のスレイブとして管理されており、ダッキング・エフェクトをかけるために用意されたボードだ。MUCCでは楽曲のクリック音をThe Pill Pedal(D2)に送り、その入力に合わせてギター・サウンドにエフェクトをかけている。

ボードEに配置されているのはKORGのSDD-3000のみ。このディレイはミキサー=Solid State Logic/BiG SiXのセンド・リターンに接続されており、マイクプリ通過後のギター・サウンドに空間系のエフェクトをかける用途で使用。

作品データ

『新世界 別巻』 MUCC

『新世界 別巻』
MUCC

朱/MSHN-173/2022年12月21日リリース

―Track List―

  1. 空 -ku- (Mixed by Miya)
  2. 猿轡
  3. I wanna kiss
  4. 別世界
  5. HOTEL LeMMON TREE
  6. SLAVE
  7. 終の行方
  8. 猿轡 (Original Karaoke)
  9. I wanna kiss (Original Karaoke)
  10. 別世界 (Original Karaoke)
  11. HOTEL LeMMON TREE (Original Karaoke)
  12. SLAVE (Original Karaoke)
  13. 終の行方(Original Karaoke)

―Guitarist―

ミヤ