菰口雄矢が清 竜人『FEMALE』で使用したギター、アンプ、エフェクター 菰口雄矢が清 竜人『FEMALE』で使用したギター、アンプ、エフェクター

菰口雄矢が清 竜人『FEMALE』で使用した
ギター、アンプ、エフェクター

菰口雄矢が使用するギター、アンプ、ペダルボードをご紹介。清 竜人『FEMALE』のモダンなサウンドを生み出した機材は要注目!

取材・文:小林弘昂 機材写真:西槇太一

Guitars

Xotic
XSC

Xotic/XSC(前面)

Xotic/XSC(背面)

こだわりを詰め込んだレコーディングのメイン器

 菰口のメイン・ギターは、2〜3年ほど前にXoticにオーダーしたSTタイプのXSC。デヴィッド・ギルモアの“ブラック・ストラト”のルックスをイメージしているとのこと。ボディはアッシュ、ネックは1ピース・メイプルを採用。本来ネックはオイル・フィニッシュだが、本器にはラッカー・フィニッシュが施されている。ピックアップは3基ともエナメル・ワイヤーを使用した特注のRaw Vintage製に交換済みで、このピックアップは60年代後半のサウンドを狙っているという。“ピークを中域に集中させたくない”という理由から、スプリング(Raw Vintage製)を5本張ってサウンドを引き締めている。

 “アッシュだけど軽いので音の重心が下がりすぎることがないんです。あとは音が速いしアタックもしっかり出る。凄く使いやすいシングルコイルのギター”ということで、『FEMALE』のレコーディングでもメイン的に使用された。本器はツアーに持ち出すことはなく、レコーディングやセッションで登場するという。

 菰口は同じくXoticのXTCというノーキャスターをモチーフにしたTLタイプも所有しており、そちらも『FEMALE』のレコーディングで活躍したそうだ。


Collings
I-35 LC

Collings/I-35 LC(前面)
Collings/I-35 LC(背面)

「nothing…」で魅せたジャジィなセミアコ・サウンド

 Collingsのセミ・アコースティック・モデル、I-35 LC。本器が新製品として発表されたタイミングで菰口はNAMM Showに足を運んでおり、その時にCollingsのブースに展示されていた本個体を購入したという。“試奏してみたらボディが薄いのに生鳴りが大きくて、その個体が欲しくなったんです(笑)”と話してくれた。ボディはES-335などよりも小ぶりな15インチ幅を採用している。ボディはメイプル・ラミネート、ネックはホンジュラス・マホガニー、指板はローズウッドという材構成だ。ピックアップはLollarのLow Wind Imperialを搭載。

 『FEMALE』のレコーディングでは、エレキはXoticのXSCとXTCの2本をメインにし、ジャジィな「nothing…」では本器を、そしてサイケな音像を求められた「愛が目の前に現れても僕はきっと気付かず通り過ぎてしまう」ではP-90が3基搭載されたノン・リバースの65年製ファイアーバードを使用したとのこと。


Atkin Guitars
The Forty Three

Atkin Guitars/The Forty Three(前面)
Atkin Guitars/The Forty Three(背面)

1943年のJ-45をリスペクトしたイギリス製

 2020年に新潟の“あぽろん”から購入したイギリス製のアコースティック・ギター。本器は43年製のJ-45をリスペクトしたモデルで、実際に音を出してみると40年代のJ-45と似ていたとのこと。ボディ・トップはシトカ・スプルース、バック&サイドとネックはマホガニー、指板はパーフェローを使用している。アフター・ケアを考慮し、デタッチャブル・ネックが採用されているのがポイントだ。

 日夜様々な現場でギターを演奏する菰口は、トラブルが少なく、なおかつビンテージ・フィールのあるギブソン系のアコギを探していたそうで、YouTubeでたまたま本モデルを見つけたという。手に入れてからはライブでも使用できるようにL.R.Baggsのピックアップを搭載したが、生鳴りが大きいためレコーディングで登場することが多いそうだ。

 “独特のローのなさが特徴(笑)。いわゆる60〜70年代のUKロックで聴けるギブソンのアコギの音がするんです。だから竜人さんの曲にも合うのかなと思いました”とのことで、『FEMALE』のレコーディングでは「コンサートホール」で使用された。

Amplifier

Divided by 13 JRT9/15
Magnatone Super Fifty-Nine MK.I 2×12 Cabinet

Divided by 13 JRT9/15 & Magnatone Super Fifty-Nine MK.I 2×12 Cabinet

レコーディングでは2台のヘッドを使い分け

 菰口がレコーディングで使用するアンプ・ヘッドは2台。写真のDivided by 13のJRT9/15はクリーン/クランチ用で、歪ませる際はMagnatoneのSuper Fifty-Nine MK.Ⅰを使用する。そのためエフェクターで音作りをすることはないそうだ。『FEMALE』のレコーディングもこの2台のアンプで行なわれたという。JRT9/15を鳴らす場合もキャビネットはSuper Fifty-Nine MK.Ⅰの2×12のままだ。ちなみに、ライブでは23W出力でマスター・ボリュームを搭載したDivided by 13のBTR23を使用している。

 JRT9/15はEL84(15W)と6V6(9W)が切り替えられるモデル。“これは3年くらい前から使い始めました。とにかく音が太いです。いわゆるEL84のAC30と6V6のDeluxe Reverbの音が切り替えられる感じなんですけど、曲によって使い分けていて。個人的にはEL84のほうが歌ものにマッチしています”とのこと。

 今回は撮影できなかったが、歪み用として使用しているMagnatoneのSuper Fifty-Nine MK.Ⅰはマスター・ボリューム搭載の45W出力モデル。菰口曰く“Super Fifty-Nine MK.Ⅰは密度が濃い音がするし、トレモロが気に入っているんです”ということで、トレモロのサウンドが欲しい場合はペダルではなく本機に搭載されたトレモロを使用する。

 キャビネットはクローズド・バックで使用。スピーカーはWarehouseのET90が2発搭載されている。本機の注意点として“MatchlessやVOXみたいにスピーカーのコーンの前に柱があるので、痛い感じにはならないんです。でも、柱の前にマイキングしちゃうと音が全然抜けなくなるので、そこだけは気をつけています(笑)”と話してくれた。

Pedalboard

菰口雄矢のペダルボード
【Pedal List】
①Origin Effects / Cali76-SE(コンプレッサー)
②Maxon / PAC9(コーラス)
③FREE THE TONE / IG-1N(ノイズ・リダクション/ノイズ・ゲート)
④Mesa/Boogie / SWITCH-TRACK(ABスイッチャー)
⑤Custom Junction Box
⑥Xotic / XVP-25K(ボリューム・ペダル)
⑦strymon / DIG(ディレイ)
⑧strymon / FLINT(リバーブ/トレモロ)
⑨strymon / MINI switch(拡張スイッチ)
⑩strymon / MINI switch(拡張スイッチ)
⑪Magnatone / Foot Switch(Super Fifty-Nine MK.Iトレモロ用フット・スイッチ)
⑫KORG / Pitchblack(チューナー)
⑬VooDoo Lab / Pedal Power 2 Plus(パワーサプライ)

 セッション用に組んだという菰口のボード。ワンマン・ライブやツアーなどでは別に組んでいる大きいボードを使用するが、レコーディングやセッションではコンパクトなこちらを使用するという。ギターからの接続は、まず①Cali76-SEから④SWITCH-TRACKまで①〜④の番号順につながれている。

 ④SWITCH-TRACKからは信号が2つに分かれており、1つは⑤特注ジャンクション・ボックスを通ってMaganatone Super Fifty-Nine MK.ⅠのNORMAL ch.のインプットへ。もう1つは同じく⑤を通りSuper Fifty-Nine MK.ⅠのVIBRATO ch.のインプットへ。Super Fifty-Nine MK.Ⅰを使用する場合、④SWITCH-TRACKでNORMAL ch.とVIBRATO ch.を切り替える。VIBRATOがバッキング用、NORMALがソロ用だ。曰く“VIBRATO ch.のほうが若干ゲインが低い”という。⑫Pitchblackは④SWITCH-TRACKのチューナー・アウトに接続されている。

 ⑥XVP-25K、⑦DIG、⑧FLINTはアンプのセンド/リターンに接続。アンプのセンドから⑤ジャンクション・ボックスを経由して⑥〜⑧の番号順で信号が流れ、もう一度⑤を経由してアンプのリターンへ。⑨⑩MINI switchは⑦DIGと⑧FLINTのプリセットを呼び出すためのもの。

 各ペダルの使い方だが、①Cali76-SEは常にオンにしてダイナミクスを狭め、音を整えている。②PAC9はレスリー的な設定にし、「If I stay out of life…?」のレコーディングで使用された。ここは歪みペダルと入れ替えることもあるという。③IG-1Nは①Cali76-SEで増えたノイズを抑えるために常時オン。本機は発売のタイミングですぐに導入しており、“音が変わらないという点ではダントツですね”とお気に入りの1台。基本的にレコーディングでは①Cali76-SEと③IG-1N以外はあまり使わないとのことで、⑥XVP-25K、⑦DIG、⑧FLINTはセッション用だ。

 また、アンプで再現できないファズの音色が必要な場合もあるため、BOSSのFZ-1WやZ.VexのFuzz Factoryなどもスタンバイさせているほか、ワウが必要な場面ではXoticのXW-1を使用する。ワウは「Love is over…」、「Knockdown」、「Someday」など『FEMALE』のレコーディングで活躍しており、菰口は“ワウって凄くリズムが聴こえてくるので、グルーヴが出しやすいんですよね”と語っていた。

 電源供給は⑧FLINTの下に設置されている⑬Pedal Power 2 Plusで行なっている。使用しているシールドはOyaideのEcstasy Cableで、パッチ・ケーブルはXoticでMOGAMIをもとに製作してもらったもの。

LIVE INFORMATION

清 竜人 弾き語りコンサート 2023 春

■会場:自由学園明日館講堂
■日時:2023/3/18(土)
一部 開場/開演:13:15/14:00
二部 開場/開演:16:15/17:00

詳細はこちら

作品データ

『FEMALE』
清 竜人

ソニー/ESCL-5740~4/2022年11月30日リリース

―Track List―

01.フェアウェル・キス
02.コンサートホール
03.If I stay out of life…?(feat. Leo Uchida from Kroi)
04.Love is over…(feat. さらさ)
05.愛が目の前に現れても僕はきっと気付かず通り過ぎてしまう
06.Knockdown
07.nothing…
08.離れられない
09.Someday
10.いない

―Guitarist―

菰口雄矢