マンスール・ブラウンがビルボードライブ東京のステージで使用した機材 マンスール・ブラウンがビルボードライブ東京のステージで使用した機材

マンスール・ブラウンがビルボードライブ東京のステージで使用した機材

UKジャズ・シーンに現われた新星=マンスール・ブラウンの初来日公演が、2023年6月にビルボードライブで行なわれた。ギター・マガジンWEBでは彼の幽玄なサウンドの秘密に迫るため、東京公演での使用機材を撮影。しかし、最も気になっていたペダルボードは、本人の意向で撮影/取材がNGに……。ということで、今回は使用ギターとアンプの写真をお届けする。ペダルボードについては、ライブを観た編集部による(ベールで包んだ)レポートでご容赦を!

文=福崎敬太 撮影=小原啓樹 協力=ビルボードライブ東京

GUITAR

Fender/American Professional II Jazzmaster

Fender/American Professional II Jazzmaster(前面)
Fender/American Professional II Jazzmaster(背面)

来日公演時のエレキ・ギターは最新ジャズマスター1本!

マンスール・ブラウンが来日公演に持参したエレキ・ギターは、フェンダーのAmerican Professional II Jazzmasterの1本だった。カラーは鮮やかな“マイアミ・ブルー”。改造点などはなし。セレクターやツマミ類を演奏中に操作することはほとんどなく、基本的にフロント・ピックアップを選択していた。

なお、“今日はこれがメイン・ギターだけど、PRSのCustom 24も使っているし、80年代のクレイマーPacerや8弦のアイバニーズ(ARZIR28)、エピフォンのSheraton IIも使うよ”とのことで、メイン・ギターはタイミングによって変わるようだ。


Godin/Multiac Nylon ACS KOA HG

Godin/Multiac Nylon ACS KOA HG(前面)
Godin/Multiac Nylon ACS KOA HG(背面)

民族音楽的な響きを演出するエレガット

ほとんどエレキ・ギターと変わらない使われ方をされていたゴダンのMultiac Nylon ACS-SA。ジャズマスター同様、エフェクターを介してアンプから出力されていた。

コア・トップを採用した1本で、バック・パネルのフィルムも貼りっぱなしでバーコードも剥がされていないのを見てわかるとおり、ほぼ新品で改造点はなし。

本人曰く“フラメンコとかラテンぽい曲の時に使うんだ”とのことで、民族音楽的な雰囲気を持つリフが印象的な「Serious」、「No Way」、「Sweet」などで使用された。

AMPLIFIER

Fender/Twin Reverb & Roland/JC-120

Fender/Twin Reverb & Roland/JC-120

サウンドの“広がり”と“芯”を両立する2台使い

今回のライブで使用したのは、国内でレンタルしたフェンダーのTwin Reverb(写真左)とローランドのJC-120(中央)の2台。

Twin Reverbが各種エフェクトを通過したウェット音用で、JC-120はドライ・サウンド用。右のTwin Reverbはサブとして設置されていたが、スプリッターを使用してウェット音を2台で鳴らすこともあるそうだ。

ドライ・サウンド用のアンプは、キーボードがいる編成の際にクリアな音の芯を加味するために設置している。

両アンプのセッティングは以下のとおり。

フェンダーTwin Reverbのセッティング
フェンダーTwin Reverbのセッティング。VIBRATOチャンネルの1にインプット。ブライト・スイッチはオン。VOLUME=5、TREBLE=6、MIDDLE=5、BASS=5、リバーブはオフ。
ローランドJC-120のセッティング
ローランドJC-120のセッティング。チャンネル2のHIGH側にインプット。ブライト・スイッチはオフ。VOLUME=2、TREBLE=5、MIDDLE=5、BASS=5、DISTORTIONとREVERBは共にオフ。

PEDALBOARD REPORT

マンスール・ブラウン来日公演の模様
Photo by Masanori Naruse

ステージ上に設置されたエフェクターの撮影/取材については、本人の“秘密にしたい”という意向で残念ながらNGに。とはいえ、何かで隠されていたわけではないので、もしライブ会場に足を運んだ知人がいれば、ぜひその人に聞いてみてほしい。

ということで、今回はその概要だけをお伝えしよう。足下にあったのは以下のようなペダルだ。

  1. 北欧を感じるメタル・グレーの多機能ギター・プロセッサー
  2. グレー筐体のストロボ・チューナー
  3. 白くて小さいチューナー
  4. 印象的な(フランケン)ストライプ柄の赤いフェイザー
  5. 銀色に輝くノイズ・ゲート
  6. 西海岸発の“鋼鉄系”アンプ・ブランドによるディストーション
  7. 2台目の銀色に輝くノイズ・ゲート
  8. “ナノ”サイズのポリフォニック・オクターブ・ジェネレーター
  9. 中央の黒いホイールが印象的な白い空間系マルチ・エフェクターが2台

と、ほぼ答えを書いているようなものだが(笑)、以下にライブでの使用方法を推測を含めて簡単に解説しよう。

Twin Reverbがウェット音、JC-120がドライ音ということなので、おそらくまず①で出力を分岐しているのだろう。ライブ中に踏む様子はなかったため、基本的なクリーン・トーンをここで作り出していると思われる。

そのクリーン・サウンドを軸に、ハードなソロ・パートで⑥をオンにし、厚みを出すために⑧を加え、さらに空間的な演出を加えるために④を踏む、という使い方だった。⑥と⑧の組み合わせが、彼のシグネチャー・トーンという印象だ。

⑨を踏むタイミングはほとんどなかったため、1台には基本的なリバーブが、もう1台では「Mashita」などで使用していたディレイが割り当てられていたと思われる。

なお、②は当然チューナーだが、③についてはギター持ち替えの際などにミュートする目的で踏まれていた。

後日公開するインタビューでは、好みのエフェクターなどについて話を聞いたので、ぜひそれを参考に彼のサウンドメイクの秘密を探ってほしい。

作品データ

『Desta – The Memories Between』
マンスール・ブラウン

配信/2023年5月10日リリース


『Heiwa』
マンスール・ブラウン

輸入盤/2021年9月3日リリース

―Guitarist―

マンスール・ブラウン