2023年5月20日(土)に東京のEX THEATER ROPPONGIで開催された、NEEの5thツアー“JOKE”のファイナル公演。今回はリード・ギターの夕日が本公演で使用したギター、アンプ、ペダルボードを解説しよう。夕日自身で組んだという、独創的なサウンド・システムは必見!
取材=伊藤雅景 撮影=星野俊
夕日の使用ギター
Fender/Vintera ’60s Jaguar
“オフセット・ボディのサウンド”を求めて入手した1本
2022年の初めに入手したフェンダーのVintera ’60s Jaguar。ヘッド裏にブランド創設75周年の記念ロゴがあしらわれているので、2021年製の1本だ。“フェンダーのオフセット・ボディの音は独特で、ほかのギターとは違う倍音がある。それが欲しくて買いました”と本人談。
また、比較的最新のモデルだが、配線材やコンデンサーをギター・テックに交換してもらっている(詳細は“開けないと不明”とのこと)。2nd作『贅沢』では、「おもちゃ帝国」で本器が使用された。チューニングはレギュラーで、使用弦はSITのPOWER WOUND Nickel S1046 LIGHT。
Ibanez/YY10
新世代テクニカル・ギタリストのシグネチャー
NEE 2ndツアー“熱烈スタンプラリー2021”の際に、大阪で購入したアイバニーズのYY10。“タッピングの女王”こと、コヴェットのイヴェット・ヤングのシグネチャー・モデルだ。
ピックアップはセイモア・ダンカンのFive-Twoで、低音弦側にアルニコ5、高音弦側にアルニコ2マグネットを採用したモデル。夕日の印象としては“低音弦はズンとくるし、高音弦側はタイトに響いてくれる”とのことだ。改造点はなし。
夕日のサウンド・システム
夕日のサウンド・システム周りはセクションがいくつかに分かれているため、最初にギターからの信号順を紹介していこう。まずは、その入口となるペダルボードから。
ペダルボード
【Pedal List】
①Fender/Level Set Buffer(バッファー)
②Flying Teapot/Delta Fourth(オーバードライブ)
③BOSS/NS-2(ノイズゲート)
④Wampler/EGO Compressor(コンプレッサー)
⑤Guyatone/Wah Rocker(オートワウ)
⑥BOSS/DS-2(ディストーション)
⑦知人作ファズ
⑧September Sound/Bass Fuzz(ファズ)
⑨Ibanez/WH10(ワウ・ペダル)
⑩BOSS/CE-1(コーラス)
⑪VOX/VXT-1(チューナー)
信号はギターからバッファー①に入り、②〜⑩まで番号順に進む。⑩のモノ・アウトではないステレオのRアウトから、続くラック・システムのライン・トランス⑫へと送られる。
なお、チューナー⑪は、①のチューナー・アウトに接続。
ラック・システム
【Gear List】
⑫AMATERAS JAPAN/LINE TRANS(トランス)
⑬Line 6/Helix Rack(ギター・プロセッサー)
⑭VOX/SILK DRIVE(オーバードライブ)
⑮MXR/Duke of Tone(オーバードライブ)
⑯Roland/RE-101(テープ・エコー)
⑰ORANGE/Pedal Baby 100(パワー・アンプ)
⑱TASCAM/Celesonic US-20×20(オーディオ・インターフェース)
⑲TASCAM/Celesonic US-20×20(オーディオ・インターフェース)
⑳Classic Pro/PD12 II(パワー・ディストリビューター)
ペダルボードからの信号を受け取るのは、前述のとおりライン・トランス⑫。その後、⑬Helixへと入力される。⑭〜⑯は⑬のセンド/リターンに接続。
⑬では、ディレイやコーラスなどのモジュレーションをかけているほか、キャビネットIRを経由させて、XLRアウトからPAに信号を送っている。また、IRを経由しない信号を1/4″アウトからパワー・アンプ⑰へと送り、ステージ用のナカ音として、マーシャルの1960Aキャビネットを鳴らしている。
以上がギター関連のシステムの内容だ。なお、オーディオ・インターフェース⑱は同期音源用のもので、夕日の手元にある台に設置されたPCと接続している(⑲はサブ)。続いて、これらのラック側のシステムをコントロールする、足下のボードを見ていこう。
コントロール・システム
【Pedal List】
㉑Line 6/Helix Control(フット・コントローラー)
㉒Mission Engineering/EP1-L6(エクスプレッション・ペダル)
㉓BOSS/FL-5L(フット・スイッチ)
㉔Route-R/RI-FP3MG(USBフット・スイッチ)
㉕BOSS/VE-20(ボーカル・プロセッサー)
㉖BOSS/MT-2(ディストーション)
メインのペダルボード横に設置されている、ラック・システムのコントローラーが中心のボード。
㉑が⑬Helix Rackのコントローラーで、そこにエクスプレッション・ペダル㉒が接続されている。㉓はテープ・エコー⑯のオン/オフ・スイッチだ。
㉔は同期音源の再生/停止やセレクトをするためのUSBフット・スイッチで、おそらくPC側に接続されている。
ボーカル・プロセッサー㉕は、NEEの5thツアー“JOKE”で演奏する楽曲で、自身のボーカルにエフェクトをかける必要があったため導入。これはギター・ボーカルのくぅから借りているものだ。
㉖は2年ほど前から使っていないにも関わらずステージに鎮座し続けているというディストーション。“ほかのペダルは頻繁に踏んでいる中で目に入ると、無視しているようで心苦しい”そうだ(笑)。
各エフェクターについて
前項は接続順の説明だけで終わってしまったので、ここでポイントとなるエフェクターの使い方を簡単にご紹介しよう。
まず①Fender/Level Set Buffer(バッファー)は、ギターを持ち替えた際の音量バランスを合わせるために導入されたもの。オート・ワウなどのボリュームに追従するかかり方のエフェクターで、効果が変わってしまうのを防ぐために購入したところ、“音も良かった”そうだ。
②Flying Teapot/Delta Fourth(オーバードライブ)はブースターとして使用。⑥BOSS/DS-2(ディストーション)はマレーシア製の個体で、最近入手した日本製のものと入れ替える予定だそう。
⑦のファズは、ジョン・フルシアンテ・フリークの知人が作ったFuzzriteのクローン。氏はジョンが使用していたモズライトのFuzzriteをコピーしており、筐体にはタコの絵が描かれていたが、夕日は“イカの絵にしてほしい”と頼んだそうだ。⑨Ibanez/WH10(ワウ・ペダル)もジョン・フルシアンテ愛を感じるチョイス。
また前述のとおり、⑩BOSS/CE-1(コーラス)はステレオのRアウトからのみシールドが挿されており、エフェクトをオンにするとウェット音の片側だけが出力される。ビブラートのツマミもdepth=フル、rate=2時と深めにかかっているので、独特なサウンドが得られるだろう。
また、⑯Roland/RE-101(テープ・エコー)は基本的にかけっぱなしで、⑩と合わせて、それ単体でもインスパイア・モデルが出るバッファーを2機経由しているのもポイントだそう。
ここで改めて、サウンド・システムの全景を掲載しておこう。
夕日の使用ピック
夕日の使用ピックはマスター8ジャパンのジャズ・タイプ。“そろそろ変えては?”と言いたくなるほど、先端が削れている……。
NEE 6th TOUR「EXOTIC METTYA YANKEE」公演情報
- 9月9日(土)/新潟・GOLDENPIGS RED STAGE
- 9月16日(土)/北海道・PENNY LANE 24
- 9月18日(月)/宮城・darwin
- 9月21日(木)/京都・KYOTO MUSE
- 9月23日(土)/福岡・DRUM LOGOS
- 10月7日(土)/名古屋・DIAMONDHALL
- 10月21日(土)/大阪・なんばHatch
- 10月29日(日)/東京・豊洲PIT
※情報は記事公開時のものです。最新のチケット情報や公演詳細は公式HPをチェック!
作品データ
『贅沢』
NEE
Getting Better/VICL-65807/2020年4月26日リリース
―Track List―
- 破棄
- 生命謳歌
- TAX!!!
- おもちゃ帝国
- なんで
- 本日の正体
- 病の魔法
- ハッタリ
- 月曜日の歌
- 緊急生放送
- 年頃です。
- DINDON
- バケモノの話
- ごめんなさい
―Guitarists―
夕日、くぅ