MR.BIG、最後の武道館のステージで奏でられた4本のギター。それぞれの使用曲やサウンドについて、ポール・ギルバートが語る!
取材=トミー・モリー 撮影=小原啓樹
Ibanez PGM50
武道館ライブでのメイン・ギターは最新シグネイチャー
ポール 僕のシグネイチャー・モデルであるこのPGMは、これまで多くのバリエーションが作られてきたけど、どれも弾きやすいものばかりだったよ。この新しいPGMもそうだね。
実は今まで黒いギターをプレイすることがほとんどなかったんだ。でも、このギターはバインディングのお陰でシェイプがクッキリと目立っているし、黒いボディにクリームのピックアップという組み合わせがマーシャルのヘッドと並べた時にとてもクールだ。ネックも完璧なシェイプだしね。
そしてピックアップには僕のフェイバリットである、Air Classicを搭載している。Air Classicを使い始めたのはかなり昔で、初めてトライしたのはアイバニーズの2630というセミアコに搭載させた時だった。
それがあまりにもグッドなサウンドだったので、80年代のアイバニーズのRocket Rollというギターにも搭載させてツアーを行なったんだ。
これまでディマジオには僕の様々なシグネイチャー・モデル、例えばミニ・ハムバッカーやハム・キャンセリングのシングルコイルなどを制作してもらってきたけど、ハムバッカーは一度も作ってもらったことがなくてね。それだけAir Classicが気に入っているから、シグネイチャーのハムバッカーが必要ないんだ(笑)。もちろん、Tone ZoneやSuper Distortionも好きで使ってきたけど、ずっと好きなピックアップと言えば、このAir Classicなんだよね。
【GM’s NOTE】
2023年に発表された最新のシグネイチャー・モデルで、武道館公演のメイン・ギター。チューニングは全弦半音下げだが、「Road to Ruin」では6弦のみさらに一音下げるとのこと。ネックはメイプル/ウォルナット5ピース、指板はローズウッド、ボディはアメリカン・バスウッドという材構成だ。ピックアップはポールお気に入りである、DiMarzioのAir Classic(リア/フロント)と、DiMarzioのPGM(センター)という3基を搭載。
Ibanez PGM1000T
今年発表された、もう1本の新たなシグネイチャー
ポール これも新しいシグネイチャーで、PGMでは初のスルー・ネックを採用している。僕は今までスルー・ネックをあまりプレイしたことがなかったから、興味があったんだ。それで、リサーチのためにアイバニーズのスルーネックを買って弾いていたらとても気に入ってね。トーンもアメイジングだし、ステージ上でも映えるルックスだと思う。クリームっぽく変色させたカラーは、ホワイトの豪華版といった印象を受けるよ。
ネックは少しワイドだから気合を入れる必要があるけど、お陰でクリーンなプレイにつながっているね。コードにも適していると思う。
ちなみに今回のライブでやった「Just Take My Heart」では、6弦だけチューニングを“上げて”弾いている。あの曲はピアノのパートを参考にしたから、左手でベース音のFを押さえる必要があってね。でも、指がどうしても届かなかったので6弦のチューニングを上げて、開放弦をFにしたんだ。
あと今回は、アーニーボールのMighty Slinky #2228という、0.0085〜0.040のセットを使った。普段のノーマル・チューニングの時には0.008〜0.038のセットなんだけど、今回は半音下げだったから、いつもと近いテンションになるように変えたんだ。このセットはパーフェクトだったね。
【GM’s NOTE】
こちらも2023年に発表された最新シグネイチャーで、今回の武道館公演ではサブとして用いられていた。チューニングはメイン同様、全弦半音下げ。「Just take my heart」では6弦のみ“半音上げ”にするとのこと。ネックは3ピース・メイプル、指板がエボニー、ボディ・ウィングがアルダー。ピックアップは、DiMarzioのAir Classicを2基搭載。
1978 Ibanez IC200
1978年製のアイスマン!
ポール これはIC200というモデルで、Reverb.comで購入したよ。おそらく1978年製だと思う。最初はケーラーのトレモロ・ユニットが付いていたから、ポートランドのリペアマンにお願いして取り外してもらい、埋め木をしてストップテールピースに変えてもらったんだ。フィニッシュの際にかなり良い仕事をしてくれたので、ケーラーが付いていたとは思えないくらい美しいルックスだろう?
ピックアップは、他のギターとはちょっと異なるサウンドにさせたかったから、リアにTone Zone、フロントにAir Zoneを載せてみた。かなりグレイトなサウンドになったんじゃないかな。フェイズの切り替えスイッチもあるから、スタジオではサウンドのバリエーションを楽しんでいるよ。
あと、今回やった「A Little Too Loose」はキーがBだったから、このギターは3弦をF#にしてあってね。何故かというと、そうすることで、4弦でメロディを弾く時に2〜3弦の開放弦を一緒に鳴らすことができるんだ。ただし、ソロでは3弦を使うことができず、1〜2弦だけでソロを弾いていたから頭が爆発しそうだったよ(笑)。
【GM’s NOTE】
アイバニーズのオリジナル・シェイプが独特のアイスマン・シリーズ。購入した時はケーラー・ブリッジだったが、現在はストップ・テールピースに変更されている。ピックアップはディマジオのTone Zone(リア)とAir Zone(フロント)を搭載。フェイズ・スイッチやトグル・スイッチなども増設されている。
Godin Multiac Steel Duet Ambiance
感動のアコースティック・セットで登場!
ポール 以前のツアーで使っていたテイラーは、サウンドはグレイトだったけどフィードバックにかなり悩まされてね。リサーチしたところGodinはその部分に強いということで使うことにしたんだ。評判通りハウリングを起こさないところが気に入っている。僕らはステージではラウドだから助かるよ。もちろんサウンドもナイスだ。
ただ、指板のポジション・マークが6弦側に配置されていて弾きづらかったので、ダークな色のステッカーでオリジナルのポジションを隠し、白いステッカーで一般的な位置にポジション・マークを貼っている。
最後の日本公演で使用したこれらのギターは、他とは違う思い入れがあるね!
僕はいつもサウンドよりもルックスのことを重視してしまう傾向があって、MR.BIGだと黒い衣装を着ることが多いんだよね。だから今回使ったこれらのギターは、黒ずくめでキメた時にグッドなルックスとなるギター達、と言えるかも(笑)。
【GM’s NOTE】
「To be with you」、「Wild world」など、アコースティック・セットで使用されたスティール弦のエレアコ。チューニングは全弦半音下げ。ボディ6弦側にはボリューム、EQ、各種切り替えなど、様々なコントロールが内蔵されている。G弦がプレーンの、ERNIE BALL Earthwood ROCK & BLUESが張られているとのこと。