ギター本体、エフェクター、アンプ……さらなる良い音を求め、読者の方々は日々機材探求の旅を続けていることだろう。そして、ケーブルにまでこだわり抜いて選んでいるという人も少なくないはずだ。シールド・ケーブルは、ギターのサウンドをアンプへと送り届ける生命線。ギターにとってとても重要なアイテムの1つだ。今回、注目のシールド・ケーブル14製品を山岸竜之介に試奏&レビューしてもらった。ぜひケーブル選びの参考にしてみてほしい。
取材・文:今井悠介 デザイン:須藤廣高 写真:八島崇
※本記事はギター・マガジン2023年11月号に掲載された「こだわり派のための最新シールド・ケーブル14選」を再編集したものです。
目次
- ACOUSTIC REVIVE GB-TripleC-FM
- Allies Vemuram BBB-VM-SST/LST & BBB-VM-SST/SRA
- Allies Vemuram PPP-SL-SST/LST
- Allies Vemuram BPB-VM-SST/LST
- BOSS BIC-P10
- Classic Pro HGC030
- Fender MICHIYA HARUHATA SIGNATURE CABLE
- KAMINARI GUITARS 迅雷
- MOGAMI 3368
- NAZCA HiFC Cable LIMITED
- NEO by OYAIDE Ecstasy Cable
- Providence S101 “Studiowizard”
- Revelation Cable Black Gold Tweed
- Van Damme Silver Series Lo-Cap 55
サウンド・キャラクターのグラフについて
各ケーブルには、音の特徴(ファット/太い〜ニュートラル/原音忠実〜ブライト/きらびやか)を示すグラフを掲載している。実際にその帯域が強調されるような仕様になっているわけではなく、山岸が感じた聴感上の印象をグラフとして表わしているものだ。参考までに見てほしい。
ACOUSTIC REVIVE
GB-TripleC-FM
音響専用導体PC-TripleCとノイズ除去効果を持つ素材を採用
ケーブルを中心に、高品位なオーディオ・アクセサリーまで手掛けるACOUSTIC REVIVEの楽器用シールド・ケーブル。導体には音響専用の単線導体PC-TripleCを採用しており、撚り線で発生する迷走電流がないため、歪みや濁りの少ない純度の高い信号の伝送が可能とのことだ。また、日立金属が開発したノイズ除去素材FINEMETを使用することで、伝送ノイズを抑えることにも成功している。
YAMAGISHI’s IMPRESSION
ピッキングのアタックがクリアに音の余韻まで聴こえやすい
山岸 キラキラした部分が出ていて、ピックと弦が当たる音などの5〜6kHzあたりがはっきりと聴こえます。アタックの音の透明度に力を入れて作られているような気がしますね。そのおかげで、どのようなピッキングをしているのかが伝わりやすい。リード・ギターには凄く合うと思いますし、ストラトキャスターもしっくりくるはずです。嫌なギラつき方はせず、明るい方向性の響きが得られる。音の余韻まで聴こえやすいですね。
SOUND CHARACTER
Allies Vemuram
BBB-VM-SST/LST & BBB-VM-SST/SRA
真鍮で構成されたオリジナル・プラグを採用
国内エフェクター・メーカーのVemuramによるギター・ケーブル。ケーブル部分には二重螺旋横巻シールドを採用。柔軟性やSN比のバランスを徹底して突き詰めたという。大きな特徴はオリジナルのAlliesプラグ。真鍮とリン青銅をプラグのチップ、ボディ、キャップ部分で使い分けた3パターンがあり、それぞれで音色の方向性が異なる。このモデルはすべてに真鍮を採用したオール・ブラス・プラグとなっている。
YAMAGISHI’s IMPRESSION
超低域まで伸びたサウンドと深みあるアコースティック感
山岸 これはかなりファットに聴こえました。低域のさらに下……いわゆるサブベースにあたる帯域が出ている気がします。お腹にゴンゴン響く感じですね。とはいえ、こもっているようなサウンドではないです。深みのあるアコースティック感が強調されるので、ギターを持ち替えた時にそのギターごとの音の違いが明確に感じられると思います。コード・ストロークをメインにする人や、ソロ・ギターを弾く人などに合いそうですね。
SOUND CHARACTER
Allies Vemuram
PPP-SL-SST/LST
ワイドレンジな特性を生むリン青銅のプラグ
プラグのチップ、ボディ、キャップのすべてにリン青銅(フォスファー・ブロンズ)を使用したケーブル。リン青銅は、真鍮と比べるとクリアで低域と高域がやや強めの材とのこと。オール・ブラスを採用したBBB-VM-SST/LSTは往年のギター・プレイヤーのトーンを彷彿させる中低域を特徴としていたが、このPPP-SL-SST/LSTは全帯域が明瞭に出てくるワイドレンジなキャラクターになっている。
YAMAGISHI’s IMPRESSION
音のコシになる中高域が整った一歩前へ出てくるサウンド
山岸 オール・ブラスと比較すると、こちらのほうが中高域のキラッとする成分が出ていて、1kHzあたりの音のコシとなる部分の情報量が多いように感じます。その影響か、オール・ブラスよりも音が一歩前に出ている印象ですね。ジャキジャキとしているわけではなく、コンコンとする帯域が整っている感じで、ロックなサウンドやカッティング・プレイに合いそうです。低域の情報量が多いオール・ブラスと使い分けても良いかもしれません。
SOUND CHARACTER
Allies Vemuram
BPB-VM-SST/LST
真鍮とリン青銅を組み合わせたミックス・プラグ仕様
プラグのチップに真鍮、ボディにリン青銅、キャップに真鍮という、ハイブリッドな組み合わせて作られたオリジナルのAlliesプラグを装着したケーブル。真鍮とリン青銅の特性を上手く融合させることで、オール・ブラスのBBB-VM-SST/LSTと比べて中域をやや控えめにした、ワイド・レンジでフラットなキャラクターとなった。癖のないケーブル部分の特性もあり、非常に素直な出音を得ることができる。
YAMAGISHI’s IMPRESSION
ギターが持つ本来の音をクリアに伝えるバランス型
山岸 今回試したAllies Vemuramのケーブルの中では、僕の一番好きなタイプです! どこかの帯域を無理に持ち上げることなく、低音弦の太さと高音弦のきらびやかさをクリアに保ったまま出してくれますね。音が前に出すぎず、低域が太くなりすぎずで、バランス感がとても良い。レコーディングでもライブでも、現場を問わずに活躍できると思いますし、プレイスタイルも選ばないギター・ケーブルになっています。
SOUND CHARACTER
Vemuramカラー&シルバー・カラー
Allies Vemuramのケーブルはプラグ部分の塗装加工にも種類があり、Vemuramカラーとシルバー・カラーが用意されている(PPPはシルバー・カラーのみ)。Vemuramカラーはプラグ表面加工時のブラスト処理により、同社のペダル筐体と同じような仕上げになっているのが特徴だ。
山岸に試してもらったところ、“Vemuramカラーはブロンズとリン青銅による音の違いがわかりやすく出てくる印象です。音の変化を控えめに、スッキリと聴かせたい時はシルバー・カラーが合うかもしれません”と語った。
BOSS
BIC-P10
老舗エフェクター・ブランドのプレミアムなギター・ケーブル
BOSSのギター/ベース用プレミアム・ケーブル。ダイナミックな表現力とワイド・レンジな音像を追求したモデルだ。純度99.99%の単結晶無酸素銅を芯線に採用し、明瞭かつスピード感のあるサウンドを実現。シールド線にも単結晶無酸素銅を使用し、高密度で編み込んでいる。プラグ部分は24K金メッキ・コーティング、外装は編組構造で仕上げており、激しいステージングにも対応可能だ。
YAMAGISHI’s IMPRESSION
ダイナミクスの解像度が高くピッキングのニュアンスが出しやすい
山岸 これはダイナミック・レンジが広いですね。通常、大中小と音量のレベルを感じるとすると、このケーブルでは大大大中中中小小小というように段階が増えるようなイメージ。同じ大きな音でもダイナミクスの幅の解像度が高まったように感じます。だからピッキングのニュアンスはかなり出しやすいですね。レコーディングにはベストなケーブルだと思いますし、ニュアンスを大事にするネオソウル的なプレイが映えそうです。
SOUND CHARACTER
Classic Pro
HGC030
高純度銅を使用したコスパも嬉しいハイエンド・ケーブル
サウンドハウスがプロデュースするブランド、Classic Proのハイエンド・ギター・ケーブル。OCCという高純度な銅を使用したケーブルを採用しているのが特徴で、その純度は99.9999%。優れた解像度でサウンドをアンプへ届けることができるという。ケーブル外径は約6.2mmで、取り回しも良く癖がつきにくい。優れたコスト・パフォーマンスを実現しているのも嬉しいポイントだ。
YAMAGISHI’s IMPRESSION
少し太く聴こえつつ味付けの少ない扱いやすい音
山岸 僕が普段使っているケーブルと比較すると、少し低域が出ているファット寄りのサウンドに感じました。実際に低域が持ち上がっているのか、もしくは高域が控えめなのかもしれません。どちらにせよ極端な変化ではなく、良い意味で味付けのない扱いやすいケーブルだと思います。何より手に入れやすい価格なのが良いですよね。学園祭などのイベントでたくさんのケーブルが必要になった時なども用意しやすいと思います。
SOUND CHARACTER
Fender
MICHIYA HARUHATA SIGNATURE CABLE
象徴的なツイード柄で魅せる春畑道哉のシグネチャー
TUBEのギタリスト、春畑道哉のシグネチャー・ケーブル。数多くのテストを重ね、春畑の理想のトーンを実現したそうだ。⾼品質な単結晶無酸素銅を線材に使⽤し、プラグ部分には優れた純度と強度を誇る24Kゴールド・メッキを採⽤。外装はブランドを象徴するツイード柄で仕上げられ、プラグにはFenderと春畑のロゴが印字されている。このケーブルのほか、スタジオ仕様のリミテッド・モデルもラインナップする。
YAMAGISHI’s IMPRESSION
シングルコイルにマッチする響きでモダンなサウンドとの相性が◎
山岸 同じアンプ設定でも、ほかのケーブルと比べて音量が上がりましたね。200~400Hzあたりが少し前に出てくる印象で、高域はあえてくっきりと見せていない感じがします。やはりFenderですから、シングルコイルにマッチするように作られているのかもしれません。ジャズマスターやストラトキャスターをモダンに響かせることができると思いますね。American Performerなどの現代的なモデルとの相性が良さそうです
SOUND CHARACTER
KAMINARI GUITARS
迅雷
高い導電率により立ち上がりの速い音に
楽器本来の音色を最大限に引き出すために製作されたケーブル。高純度の銀メッキ無酸素銅を使用し、さらに静電容量を抑えることで高い導電率に。原音に忠実な伝送と、立ち上がりの速い音を実現した。外装には柔軟性と耐久性を両立したPVC素材を独自配合。プラグも独自設計の真鍮削り出しとなっている。また、小島半田製造所の音響用はんだ“HMXシリーズ”が使われているのもポイント。
YAMAGISHI’s IMPRESSION
激しい歪みでも破綻しない中域がキレイな優等生サウンド
山岸 レベル的にはおとなしめで、優等生なサウンドに感じます。全帯域をしっかり見せるというよりも、800~2kHzあたりのコンコンする部分をなめらかに聴かせる代わりに、高域や低域はあまり目立たせないようにしている印象です。中域がキレイなぶん、ファズやディストーションをかけた時にドンシャリにならず、音が破綻しないと思います。エフェクト乗りが良さそうですね。国内生産による丁寧さも感じられます。
SOUND CHARACTER
MOGAMI
3368
低静電容量を実現して優れた伝送特性を獲得
オーディオ・ケーブル・ブランドのMOGAMIが2022年にオフィシャル・パッケージとして発売したシールド・ケーブル。限りなく低静電容量を実現しているのが特徴だ。半導電層という、導体と絶縁体の間の層を設けることで外来ノイズの影響を受けにくくなり、伝送特性を改善している。編組シールドによるしなやかさを備え、取り回しも良くなっている。プラグはNeutrik製を採用し、堅牢性も確保した。
YAMAGISHI’s IMPRESSION
前向きな明るさを持った透明性の高い癖のない音
山岸 癖のないサウンドなんですが、キラッとした明るさがあります。でも高域が強調されているとか、低域が控えめだとかではなく、音の方向性が“陽”で“前向き”なイメージ。原音の明るい部分をしっかり見せてくれる感じです。きらびやかなフレーズや歪んだサウンドのリード・ギターにはピッタリですね。透明性の高さによってギターを持ち替えた時の違いもハッキリ出ますし、エフェクターの特性も十分に活かせると思います。
SOUND CHARACTER
NAZCA
HiFC Cable LIMITED
微量なチタンを添加した高機能純銅HiFCを使用
国産軽量ギグバッグで定評のあるNAZCAブランドのハイエンド・ケーブル。銅材にチタンを配合し、銅中の不純物を制御した高純度銅のHiFCに“CRYO処理”を施しているのが特徴だ。冷却ガスによる超低温での処理で耐久性が向上し、音の密度も増すことで通常モデルよりもさらに押し出し感あるサウンドになっているとのこと。高域のハッキリとした輪郭と低域のタイトさを兼ね備えている。
YAMAGISHI’s IMPRESSION
パキッとした硬い成分を抑え低域に透明度を持たせた音
山岸 中域よりも低域に透明感があるようなケーブルだと思います。音の硬い成分が前に出てこないですね。パキッとする部分は一歩引いて抑えていて、低域のふくよかさは一歩前に出して透明感を持っている感じ。メロウなプレイはもちろん、指弾きでのフレーズとかはその良さが一番出てくれる気がします。ボーカル曲よりも、バラードやローファイ・ヒップホップなどのインスト曲と相性が良いと思いますね。
SOUND CHARACTER
NEO by OYAIDE
Ecstasy Cable
気持ちの良いトーンにこだわった7年ぶりとなるシールド・ケーブル
オヤイデ電気のプロ向けブランド、NEOからリリースされたケーブル。7年ぶりとなる新作で、演奏者が求める気持ちの良いトーンを実現するために開発された。精密銀メッキ導体による高い解像度と滑らかな高域成分を持ち、強化繊維や編組シールドで耐久性を高めながら屈曲性も確保。激しいステージングにも対応できる。真鍮削り出しのオリジナル・プラグは堅牢性と原音に忠実な特性で、継ぎ目のない見た目も美しい。
YAMAGISHI’s IMPRESSION
コンプ感を感じないまさに原音忠実なケーブル
山岸 どんなケーブルでもコンプ感というものは多少あると思っていますが、Ecstacy Cableはまったくコンプ感がありません。まさに原音忠実でハイ落ちもなく、ピッキングのニュアンスが出しやすいです。ケーブルの音に左右されず、ギターやエフェクター、アンプのサウンドを活かせると思います。あとグレーの見た目や“Ecstasy”という名前がカッコいい! そういう要素はモチベーションにもつながるので、個人的には重要だと感じています。
SOUND CHARACTER
Providence
S101 “Studiowizard”
原音の特性を損なわず演奏者のストレスを最小限に
レコーディングで重要な低域から高域までカバーするワイド・レンジかつ抜けの良い音で演奏者のストレスを最小限にする設計。通常、長いケーブルは高域の減衰が起きるが、S101は独自の芯線構成のNSC2 OFCを使用し、インシュレーターに新素材NAP ELASTOMERを用いることで、原音の特性を損なわないようになっている。また、超過密編組シールドとカーボン含有の導伝ビニルが外来ノイズを防ぐ。
YAMAGISHI’s IMPRESSION
速いフレージングが映える抜けの良い明るさを持った音
山岸 少しブライトめなサウンドですね。僕は普段、余韻を聴かせるようなプレイよりも速いフレージングをすることが多いんですが、そういう時はこういったブライトな音のほうが抜けが良くて合うんです。音のアタック、サステイン、リリースまで明るいまま出てきてくれるので、リード・ギターを弾く人にはピッタリですね。どの楽器店でも手に入れやすいProvidenceであるということも、ギタリストにとっては大切なことだと思います。
SOUND CHARACTER
Revelation Cable
Black Gold Tweed
手作業での仕上げが美しいバンクーバーの新興ブランド
Revelation Cableは、2018年に創業したバンクーバーのケーブル・ブランド。Black Gold Tweedはケーブル部分にSommer CableのSC-Spirit XXLを使用し、耐久性の高い無酸素銅導体による透明度の高い音と編組シールドによる柔軟性を兼ね備えている。外装のMDPCスリーブはツイード生地のような高級感を演出。手作業で製造されており、美しい仕上がりとなっているのもポイントだ。
YAMAGISHI’s IMPRESSION
1080pから4Kになったような音の解像度アップが感じられる
山岸 見た目的に色付けが濃い感じかと思いましたが、けっこう素直な出音です。色付けはないながらも、解像度が高まることでくっきり見えるというか。映像でいえば、色補正をしたのではなく1080pから4Kになったことでもとの色がしっかりと見えるようになったようなイメージです。同じ白色でもその中で200色の違いがあるのがわかる感覚。トーンとしては中域に特徴があり、音の姿勢が正されるような印象ですね。
SOUND CHARACTER
Van Damme
Silver Series Lo-Cap 55
録音に重点を置いて開発された高域の減衰が少ないケーブル
アビイ・ロード・スタジオで使用されているケーブル・ブランド、Van Dammeのギター・ケーブル。レコーディングでの音質を重視しており、太めのケーブルと堅牢で大きめのノイトリック製プラグが採用されている。Lo-Cap 55、Flat-Cap 90、Hi-Cap 125という3種類があり、このモデルは高域の減衰が少ないLo-Cap 55。パッシブのハムバッカーにとって理想的なトーンになっているという。
YAMAGISHI’s IMPRESSION
ダイナミクスの幅が広がり太く繊細に聴かせられる
山岸 凄く真面目なサウンドですが、そのぶん全帯域が見えやすくなっているケーブルです。クリーン・トーンが太く、繊細に聴こえてきます。また、ダイナミック・レンジの最大が100だとしたら、それが105くらいまで少しだけ広くなったように感じました。ギターがメインで活躍する楽曲では、そのダイナミクスの表現幅が活きてくると思います。見た目や音から、“作品の録音のために作った”という気持ちが伝わってきますね。
SOUND CHARACTER
総評〜山岸竜之介のシールド・ケーブル考
ここまで14製品のケーブルを山岸に試してもらった。最後に総評と、山岸が考える良いケーブルについての考えを語ってもらおう。
良いシールド・ケーブルは良い演奏を透明度高く伝えてくれる。
山岸さんがケーブルを選ぶ時に気をつけていることはなんでしょうか?
山岸 ギターの弦と同じく、シールド・ケーブルも消耗していくものだと思うんです。“断線しているかもしれない”と思った時に、すぐ楽器店で買えるような定番性だったり、メインテナンス性の良さというのはトラブルを回避するために重要だと考えていますね。
音の面でも、何か特徴を持っている製品よりも、オーソドックスなケーブルをメインとして選ぶようにしているんです。そのサウンドを基準としておくことで、“じゃあこのレコーディングではこういったケーブルを使ってみよう”という考え方ができるんですよね。
今回、たくさんのケーブルを試してもらいましたが、特に印象に残った製品はありますか?
山岸 まずBOSSのBIC-P10ですね。やはりダイナミック・レンジの広さと癖のないサウンドに安心感を覚えました。BOSSのケーブルを使ったことがなかったので、意外な印象でしたね。
もう1つがVan Damme Silver Series Lo-Cap 55です。レコーディング用ということで、振り切った仕様になっていることに驚きました。作品を残すうえで最高な音を目指すことにフォーカスされているので、取り回しや持ち運びのしやすさという部分は二の次なんですよね。どういうシーンで何のために使ってほしいのかが明確化されていて、丁寧に作られている印象でした。
では山岸さんにとって良いシールド・ケーブルとはどんな存在でしょうか?
山岸 ギタリストのプレイを良くしてくれるものというよりも、良い演奏を透明度高くそのまま伝えてくれるものですね。自分の殻を破ってくれる、ストレスを取り除いてくれる存在になると思います。例えば低域豊かなケーブルを使うことで、頑張ってピッキングで迫力を出す必要がなくなったりするかもしれませんよね。
ProvidenceやMOGAMI、OYAIDEなどの老舗から新興ブランドのものまで色々とレビューしましたが、読者の方には記事を読むだけでなく、ぜひ実際に弾いて試して感じてもらいたいです。
試奏者:山岸竜之介(やまぎし りゅうのすけ)
1999年、大阪府生まれ。2013年にムッシュかまやつ(g)、KenKen(b)と共にLIFE IS GROOVEを結成。ジャズ・ピアニストの小曽根真とも共演し、レコーディングに参加した。また、ギタリスト/アレンジャー/プロデューサーとして、様々なアーティストのレコーディングやライブに参加するなど幅広く活躍している。今年8月にはギター・インスト・アルバム『THE GUITAR』をリリースした。
『THE GUITAR』 山岸竜之介
試奏時の機材
ギター:68年製Gibson Les Paul Standard
アンプ:Fender ’65 Twin Reverb
今回のケーブル試奏を行なった時のセッティング。ギターは、山岸が10代の頃にバイトをしていたというビンテージ・ギター・ショップ、Guitar Tribeで今年の8月に購入したギブソンのレス・ポール・スタンダード。1968年製で、もともとはP-90が載っているモデルだが、前オーナーの手によってPAFレプリカのピックアップに換装され、1957年仕様のような見た目に。重量は4kgほどで少し軽く、抜けるサウンドになっているようだ。山岸曰く、“ビンテージすぎない音で、現代のトラックの中でも馴染みが良い”とのこと。アンプはStudio Bpm常設のFender ’65 Twin Reverbを使用した。