ジミ・ヘンドリックスが使った“スパゲティ・ロゴ”のストラトキャスターに迫る連載企画。初回は、1966年に渡英してすぐに入手したと思われる、1963年製の黒いストラトキャスターを紹介しよう。
文=fuzzface66 Photo by Chris Morphet/Redferns/Getty Images
※文中のギターの年式表記は、各スペックから推測される最も近い年式を採用している。
1963 Fender Stratocaster Black
- フィニッシュ:ブラック
- 指板:ラウンド貼りローズウッド
- 使用期間 : 1966年11月頃~1967年1月末頃
12フレットのポジション・マークの間隔が広く、フロントPUとセンターPUの中間にピックガード・ビスが位置しているが、ローズウッド指板がラウンド貼りであることから、おそらく1963年頃に製造されたものと思われる。
4日間のツアーでいきなりボロボロに!?
デビュー翌月である1966年11月8日~11日の4日間行なわれたドイツ・ツアー(ミュンヘンのビッグ・アップルで1日2回公演)から使用され始め、翌1967年初頭のイギリスでの各クラブ・ギグなど、1月末頃まで使用しているのが確認できる(編注:本記事で使用している写真は、1967年1月29日のイギリス公演時のカット)。
この時期、ジミのメイン・ギターは、9月にアメリカから一緒に渡英した1965年製の“トランジション・ロゴ”を持つオリンピック・ホワイト・モデル(2本所有説あり)だったが、おそらくヨーロッパでの本格始動に向けてのサブのギターとして、このブラック・モデルが用意されたのではないだろうか。
また、最初のドイツ・ツアー終了時点で、すでにボディ側面の塗装がボロボロに剥げている。実はこのツアーの最終日、ジミは興奮した観客にステージから引きずりおろされ、それに憤慨してギターを投げつけ、手当たり次第にステージの物を壊し始めたというエピソードがあるので、もしかするとその時についた傷かもしれない。
ちなみに、この一連の行動がドイツの観客に大ウケしたため、以降、マネジメント陣はジミを売り込むイメージ戦略の1つとして“ギター壊し”をステージでパフォーマンス化させたという。
なお、最終的にこのモデルは、1967年2月2日、ダーリントンのインペリアル・ホテルで行なわれたライブ終了後に盗まれた可能性が高い。