電子工作ビギナーでも安心! プロが教えるパッチ・ケーブルの作り方 電子工作ビギナーでも安心! プロが教えるパッチ・ケーブルの作り方

電子工作ビギナーでも安心! プロが教えるパッチ・ケーブルの作り方

エフェクター同士をつなぐ短いシールド、パッチ・ケーブル。昨今はハンダ不要のソルダーレス・ケーブルも主流になりつつあるが、今回はあえてハンダを使ったオーソドックスな作り方をご紹介! 教えてくれるのは工房Pathの代表、石川哲也氏。ハンダ付け初心者もトライしやすい材料、工具をチョイスしてもらったので、電子工作ビギナーもぜひチャレンジしてみよう!

文/写真=石川哲也(工房Path)
※本記事で紹介する作業では、ハンダごてを使用します。ハンダごては高温となり火傷や火災などの事故が発生する恐れがありますので、十分に注意したうえでご自身の責任において制作作業を進めて下さい。

用意する工具、材料(1本分)

工具はいずれもAmazonやサウンドハウスなどで購入できるものを使用しています。また今回は初心者でも扱いやすいgoot製の電子工作用ハンダを使用します。こだわりたい方は定番のハンダ、KESTER44を選ぶのも良いでしょう。

工具

  1. 簡易皮むき工具
  2. ワイヤーストリッパー
  3. 電子工作用ハンダ
  4. 洗濯ばさみ(線材固定用)
  5. ハンダごてセット
  6. エフェクター(プラグ固定用)
工具
今回使用する工具。写真左から①簡易皮むき工具(サンワサプライ/HT308)、②ワイヤーストリッパー(VESSEL/3500E-3)、③電子工作用ハンダ(goot)、④線材固定用洗濯ばさみ、⑤ハンダごてセット(HAKKO/FX600+こて台+クリーナー)、⑥プラグ固定用エフェクター(BOSS/SD-1)。

材料(1本分)

  1. ケーブル材(任意の長さ)
  2. L字型プラグ×2
材料
必要な材料。①ケーブル材(MOGAMI/2524)と②L字型プラグ(NEUTRIK/NP2RX-BAG)。

パッチ・ケーブルの制作手順

第1工程:ケーブルの処理

①ケーブルの長さを決めてカット

①ケーブルの長さを決めてカット

今回はギター・ケーブルの定番、MOGAMI 2524を使用します。音質はもちろん、作りやすさにも定評がある素晴らしいケーブルです。まずは、カットして完成品の長さを決めていきましょう。使う工具はワイヤー・ストリッパーで、根本の刃の部分で切ります。

ここでは25cmでカットしたいと思います。定規がなければザックリ長めに切っておけば大丈夫です。この時点ではケーブル材だけ見るとかなり長く思えますが、完成品になると12cmほど短くなるので、心配無用です。

このあとの工程で失敗するとどんどん短くなってしまいますので、心配な方は予定の長さより少し長めにカットしておくのがオススメです。

②ケーブルの外皮を剥く

②ケーブルの外皮を剥く

ケーブルの外皮を剥いていきます。この作業で気をつけることは、“シールド線に傷をつけないこと”です。使用するのは簡易皮むき工具。聞き慣れない工具ですが、誰でも簡単安全に外皮を剥くことができる便利なヤツです。

まずはカットした先端から約2cmくらいのところでケーブルを工具で挟み、クルっと一周するとカットラインが入ります。この時、力を入れて挟むと刃が食い込みすぎるので、あくまで力は入れないのがコツです。

カットラインのところでケーブルを折り曲げれば外皮が裂けるので、そのまま外皮を引っ張って剥きましょう。ツルッとした金色のシールド線の層が出てきたらOKです。

③シールド線をまとめて、カットしよう

③シールド線をまとめて、カットしよう

黒い芯線の周囲にある金色のたくさんの線がシールド線になります。バラバラになっているので、こちらを1本にまとめておきましょう。ティッシュでこよりを作る時のようなイメージでクルクルっとしておいて下さい。仕上げとして、長さを黒い芯線の半分あたりでカットしておきましょう。

④芯線を剥いてまとめる

④芯線を剥いてまとめる

真ん中に1本残ったのが芯線です。こちらは二重皮膜で、外側が黒皮膜、内側がクリア皮膜になっています。ワイヤー・ストリッパーを使ってこれらの皮膜を剥いていきますが、ここでの注意点も、“芯線に傷をつけないこと”。

芯線より少し大きめのホール(今回は“16”)を使い、黒皮膜の先端から約5mmのところを挟んでクルッと一周します。カットラインが入ったら、外皮の時と同じ要領で折り曲げ、引っ張って芯線を露出させます。こちらもこよって1本にまとめておきましょう。

⑤黒皮膜を処理しよう

⑤黒皮膜を処理しよう

先ほど剥いた二重皮膜の外側の黒皮膜は、導通性素材のため若干ですが電気を通します。そのため端子や芯線に接触すると音質が劣化しますので、接触防止のため内側のクリア皮膜だけを残し黒皮膜をできるだけ根本近くまで剥いておきましょう。黒皮膜は柔らかいので爪でつまむだけで簡単に剥くことができます。

第2工程:プラグ装着の下準備

⑥ハンダごてを準備しよう

⑥ハンダごてを準備しよう

ここでようやくハンダごての出番です。今回使用するHAKKO FX600をスタンドに差し込み電源を入れ、持ち手部分のコントローラーを370℃の位置で止めて温めておきましょう。初めて使う際は煙が出ますが、異常ではありませんので大丈夫です。1分ほど置けばコテ先が温まり、作業準備はOKです! 

※作業上の注意

作業する際は持ち手の青い樹脂部分を持って慎重に作業しましょう。ハンダごては一旦電源を入れると、コテ先だけでなく金属部分すべてがとてつもなく熱くなる、たいへん危険な工具です。作業中は可燃物を近くに置かないこと、ハンダごてから離れる際は電源を抜くことなど、安全管理を徹底して下さいね。

⑦線材に予備ハンダをしよう

⑦線材に予備ハンダをしよう

ここでは、先ほどまとめておいたシールド線と芯線にそれぞれ“予備ハンダ”という処理を施します。この作業は洗濯ばさみで線材を固定すると楽です。

まず線材にハンダごてを当て十分に加熱し、ハンダを接触させて流し込んでいきます。最初は熱が通りにくいので、ハンダはコテ先と線材のちょうど中間くらいのところで融かします。そしてハンダが融けて線材に流れ出したら、コテ先で直接ハンダを融かすのではなく、あくまで加熱した線材側で融かすイメージが良いでしょう。

かといって線材を加熱しすぎるとケーブル内の皮膜が溶けてしまい、後々のケーブル不調の原因になるので注意が必要です。本番前にケーブルの切れ端で練習しておくのも良いかもしれません。

⑧コテ先をクリーニングしよう

⑧コテ先をクリーニングしよう

一度ハンダ付けをすると、コテ先にフラックスの蒸発した古いハンダが付着した状態になります。そのまま次のハンダ付けを行なうとハンダのノリが悪くなってしまいますので、作業のたびにクリーナーを使ってコテ先を綺麗にしておきましょう。

今回使用しているコテ台付属クリーナーの場合は、クリーナーの中の金属ウールにコテ先を差し込んで使います。何度か差し込んでコテ先がピカピカになったら、次のハンダ付けの準備はOKです!

⑨ハンダ付け作業用にエフェクターを準備

⑨ハンダ付け作業用にエフェクターを準備

本来プラグへのハンダ付けは専用台があると楽なのですが、今回はエフェクターのジャック部で代用してハンダ付けをしたいと思います。L字プラグのハンダ付けの場合は、エフェクターは横置きしてジャック部が上面にくるように使います。下に畳んだクロスなどを敷くと安定感が出るのでオススメです。

第3工程:プラグとケーブルをハンダ付け

⑩まずはプラグのパーツを見てみよう

⑩まずはプラグのパーツを見てみよう
左からプラグ・キャップ、プラグ本体、ハウジング、ケーブル・クランプ。

ここでプラグの袋を開けてみましょう。袋内には①プラグ・キャップ、②プラグ本体、③ハウジング、④ケーブル・クランプの4つが入っているはずです。
どれか1つでもなくしてしまうと完成できませんので、作業中は何かの容器に入れてキープしておくようにしましょう。

⑪<重要!!>プラグ・キャップをケーブルに通す

⑪<重要!!>プラグ・キャップをケーブルに通す

ハンダ付け作業の前に、必ず先ほどの“プラグ・キャップをケーブルに通す”こと! こちらは最も大切な工程といっても過言ではありません。なにしろ、ハンダ付けが完了したあとからは通すことができませんので、うっかり通さないままハンダ付けしてしまうとあとで地獄を見るはめになります。この時点で忘れずに通しておきましょう。

⑫プラグ端子に予備ハンダをしよう

⑫プラグ端子に予備ハンダをしよう

今回使用するプラグは、断トツの堅牢さと作りやすさで、自作派ギタリストにも定評のあるノイトリック製NP2RX-BAGです。プラグをエフェクターに挿したら、HOT/COLD端子にそれぞれ予備ハンダを施しましょう。奥側の大さな端子がHOT、手前側の小さな端子がCOLDになります。

ケーブルに予備ハンダした要領とほぼ同じですが、こちらも温めすぎるとプラグが破損しますので、慎重に作業しましょう。端子が十分に温まるとハンダがスゥーっと端子に流れ込んでいくはずです。ここでは端子が隠れるくらい、少し多めに盛っておきましょう。

⑬シールド線とCOLD端子をハンダ付けしよう

※確実にプラグ・キャップを通したことを確認してからこの作業を始めて下さい。

⑬シールド線とCOLD端子をハンダ付けしよう

プラグをエフェクターに挿したまま、予備ハンダを行なった線材側と端子側をつないでいきます。まずはシールド線とCOLD端子から作業していきます。位置的に少し作業がしにくい箇所ですが、洗濯バサミでケーブルをプラグに固定すると楽に作業できます。

COLD端子の上にシールド線を乗せ、お互いの間に面で当たるようにハンダごてを当てつつ、ハンダをほんの少しだけ足してあげます。双方に熱が伝わると双方のハンダがドロっと融けて融合します。シールド線は熱容量が高くハンダを融かしにくいので、温度設定を一段上げて420℃にしてもOKです(ただし、過加熱になりやすいので気をつけましょう)。

※良いハンダ付けのコツ

パーツ側の加熱が足らないと端子や線材にハンダが流れず、塊になってしまいます。うまく流れない時はハンダごてを当てながらゆっくり5秒くらい数えてみましょう。

しかしながら、逆に温めすぎてしまった場合は、端子がグラついたり、線材の皮膜が溶けてしまうこともあります。“慎重かつ大胆に”がハンダ付けを成功させるコツです。

ハンダ付けが上手くいくとハンダの表面がキラッと艶やかに輝きます。加熱しすぎている場合、フラックス(ハンダの劣化を防ぐ成分)が揮発して、艶がなくなりくすんだ色になるので、基準にしてみて下さい。

⑭芯線とHOT端子をハンダ付けしよう

⑭芯線とHOT端子をハンダ付けしよう

続いて、芯線とHOT端子をつなぎましょう。先ほどよりは作業性が良い箇所なので、ハンダ付け自体はやりやすいと思います。前項同様にハンダを少し足しつつ、双方のハンダを融合させます。

ただ、こちらの場合は加熱しすぎるとクリア皮膜が溶けやすいので、あまりに慎重すぎると失敗のもとになります。ハンダを大胆に手早く流し込むのがコツです。

第4工程:プラグの組み立て〜完成

⑮ケーブル・クランプを装着しよう

⑮ケーブル・クランプを装着しよう

先ほどのハンダ付け部を覆うようにケーブル・クランプを取り付けます。プラスチック製の黒いパーツです。先端に分割できる部分がありますが、こちらは折ってから取り付けます(折った部分はクランプのトルク調整の役割があり、今回よりも細いケーブルの場合には折らずに使用します)。プラグ側の銀色の金属板に先端が当てるように、端まで寄せておきましょう。

⑯ハウジングを装着しよう

⑯ハウジングを装着しよう

最後に残った金属製のパーツがハウジングです。ケーブル・クランプの上に端からスライドしながら被せていきます。

⑰プラグ・キャップを締め込もう

⑰プラグ・キャップを締め込もう

前もってケーブルに通しておいたプラグ・キャップをプラグに締め込んでいきます。時計回りにプラグ・キャップを回していくと、クランプがケーブルをしっかりホールドしながら締まっていきます。今回のMOGAMI 2524の場合はプラグ・キャップのネジきりがすべて見えなくなるまでギュッと締めていただいて大丈夫です。

⑱反対側も同じように作業しよう

⑱反対側も同じように作業しよう

一方が完成したら、反対側も⑨〜⑯までの作業を同じようにくり返しましょう。何度もお伝えしておきますが、最初にプラグ・キャップを通すことだけは忘れずに……!!

⑲完成! サウンドチェックをしよう

⑲完成! サウンドチェックをしよう

両端にプラグがついたら、仕上げとしてサウンドチェックをしておきましょう。いつもどおりエフェクターの間に入れて音を出してみて、問題がなければ無事完成です!


※失敗してしまったら

音が出ない・音が細い・ハイ落ちしているなどの場合は、残念ながらどこかで失敗している可能性があります。悔しいですがくじけずに手順をさかのぼって再トライしてみましょう。

一度ハンダ付けした部分の線材を何度もやり直すと耐久性が低くなってしまうので、何度やっても音が出ない場合はすっぱり切って新しい線材でやり直したほうが成功率が上がるはずです。キレイに仕上がると音質も耐久性も高くなるので、見た目にも美しいハンダ付けを目指しましょう。