我らが永遠のアイドル、ランディ・ローズといえば白いレス・ポール・カスタムであり、白いレス・ポール・カスタムといえばランディ・ローズである。今回は、この象徴的な1974年製の1本について紹介しよう。
文=細川真平 Photo by Michael Ochs Archives/Getty Images
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ロック・ファンに希望を与えたギター・プレイ
ブラック・サバスを脱退したオジー・オズボーンの初のソロ・アルバム『Blizzard of Ozz(ブリザード・オブ・オズ〜血塗られた英雄伝説)』の衝撃は大きかった。日本でこのアルバムが発売されたのは1981年2月25日のこと(イギリスでは1980年9月、アメリカでは1981年3月)。
1980年はロック・ファンにとっては悲しい年で、9月25日にレッド・ツェッペリンのドラマー、ジョン・ボーナムが亡くなり、12月8日にはジョン・レノンが射殺された。
日本では(アメリカでもそうだろうが)、そんな重苦しさの中で『Blizzard of Ozz』が登場したのだった。
ラジオから流れるリード曲「Crazy Train」は、ハードでありながらも明るさと開放感があり、パワーと勢いがあり、“救い”というと大げさになってしまうが、でもそれに近いものを、高校1年生だった筆者は確かに感じていた。
ギタリストはランディ・ローズ。
そのプレイは、今聴いても鮮烈さを感じるほどだから、当時どれほど衝撃だったかは言葉にしづらいほどだ。
彼のプレイは非常に明快で、ただもう身体が感じるままに聴けばいい……と思わせながら、どこかにほんの少しの憂いというか翳のようなものがあり、ストレートなハード・ロック・ギターの背景にほんのりとクラシックの薫りが漂っている。そういう要素にふと気づきながら、しかし、それらをすべてひっくるめて、やっぱり身体の感じるままに聴く。
これこそが、ランディのプレイを最大限に味わうやり方のような気が、個人的にはしている。
また、彼の王子様のようなルックスは、そのプレイと合わせて最大の相乗効果を上げていた。だが同時に、彼にはこの世のものではないような印象もあった。聖なる空気をまといながらも、儚い何かをも感じさせた。
白のレス・ポール・カスタム=ランディ・ローズ
その彼の愛器が、ホワイト・フィニッシュの74年製レス・ポール・カスタムだ。カール・サンドヴァルというルシアーが作ったポルカ・ドット・フィニッシュのフライングVタイプや、ジャクソンのランディ・ローズ・モデルなども使用するようになるが、デビュー時から愛用していたカスタムの印象はやはり強い。
この時期のカスタムの特徴は下記のようになっている。
- 3ピースのメイプル・トップ
- マホガニー材の間に薄いメイプル材を挟んだパンケーキ構造ボディ
- ヘッドのGibsonインレイのiにドットなし
- 14度のヘッド・アングル
- 3ピースのマホガニー・ネック(75年に3ピース・メイプル仕様に変更になる)
- ボリュートあり
ランディのカスタムは、ボリューム/トーン・コントロール・ノブがゴールドのスピード・ノブに、ペグがシャーラーのM6に交換されていた。ピックアップ・セレクター・ノブもゴールドのものに替えられていて、1981年の夏頃までにはそれが、全長の短いものに再度変更されるようなのだが、詳細は不明だ。また、ピックガードに小さく、“RANDY RHOADS”と名前が刻まれていた。
このギターは、ランディがオジー・バンドに加入する前、クワイエット・ライオットに在籍していた1975年の半ば頃に、デニス・ウェイジマンというバンドの初代マネージャーからプレゼントされたものだ。ただし、コントロール・ノブやペグや改造がどの時点で施されたものかはさだかではない。
ランディは何故かこれを63年製と勘違いしていて(レス・ポール・カスタムに63年製は存在しないのだが)、雑誌のインタビューなどでもそう発言していた。だが、オジーのバンドでの1980年のイギリス・ツアー中に、バッジーというバンドのメンバーに74年製だと指摘され、がっかりしたという話が残っている。
しかし、63年製だろうが74年製だろうが関係なく、このギターは“ランディ・ローズのカスタム”と認識されるように。そして、このカスタムから飛び出してきた音とプレイは、多くのロック・ファンの光となった。
しかし、その光は長くは続かなかった。
1982年3月19日、オジーの2ndアルバム『Diary of a Madman』後のUSツアー中に、遊覧飛行で乗った軽飛行機が墜落し、彼は25歳にしてその生涯を終えた。
こうしてロック・ファンはまた、暗闇に閉ざされることとなる。だがその一方で、彼はやっぱり本当に星の王子様だったのかもしれないと妙に納得してしまう気持ちも、多くの人が抱いたのだった。
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