キタニタツヤのサポート・ギタリスト、yeti let you noticeの秋好佑紀が使用する機材を紹介! 今回は、2024年1月11日に開催されたキタニタツヤの“UNFADED BLUE (Re-colored)”公演のリハーサルに潜入し、ライブで使用予定の機材を撮影した。また、キタニの代表曲「青のすみか」をライブで演奏する際のサウンド・メイクについても徹底的に深掘り!
取材/文=伊藤雅景 写真=大谷鼓太郎
Guitars
Fender Custom Shop/1959 Stratocaster Journeyman Relic
「青のすみか」のライブ映像に登場するストラトキャスター
2021年に入手したというカスタムショップ製のストラトキャスター。秋好曰く“ザ・ストラトな感じから、オルタナティブな雰囲気まで、なんでもいけるギター”という1本だ。そのサウンドは、2023年に発表されたキタニタツヤの代表曲「青のすみか」のライブ映像(1分14秒頃で本器にカメラがフォーカス!)で聴くことができる。
メインで使用するピックアップ・ポジションは、フロントとハーフ・トーン(フロント&センター)。目立った改造は施していないが、トレモロ・スプリングの本数を試行錯誤しているそう。撮影時のフローティングは1mmほどだった。チューニングは半音下げで、弦はアーニーボールのPower Slinky(.011-.048)を使用している。
Fender Custom Shop/1996 Jazzmaster Masterbuilt by Fred Stuart
自分好みのカスタマイズを施した1本
マスタービルダー、フレッド・スチュアートが手掛けた1996年製のジャズマスター。秋好が所属するバンドのyeti let you noticeや、サポート・ギターを務めているIvy to Fraudulent Gameのステージなどでは本器をメインで使用している。キタニタツヤのライブではサブ・ギターとしてスタンバイ。
ピックアップはフロントとリア+フロントのハーフ・トーンを使用しており、リア単体のサウンドは出ないようになっている。また、プリセット・スイッチの配線もカスタムされており、キル・スイッチとして機能させている。ブリッジはマスタリーをチョイスしていたりと、改造点は多い。チューニングや使用弦は上述のストラトキャスターと同様だ。
Sound System
【Gear List】
①Neural DSP/Quad Cortex(ギター・プロセッサー)
②HOTONE/SOUL PRESS(ワウ・ペダル)
③Devi Ever Fx/SHOEGAZER(ファズ)
④Line 6/HX Stomp(マルチ・エフェクター)
⑤Empress Effects/Reverb(リバーブ)
⑥Red Panda/Tensor(ピッチシフター/ディレイ/グリッチ/ホールド)
⑦Chase Bliss Audio/MOOD MKII(ディレイ/ルーパー)
⑧toneczar effects/OTP fuzz(ファズ)
⑨KORG/microKORG S(シンセサイザー/ボコーダー)
⑩KORG/DT-7(チューナー)
⑪strymon/Ojai(パワー・サプライ)
秋好がキタニタツヤのライブで使用しているサウンド・システム。ギターと⑨のシンセサイザーの音色はQuad Cortex(①/ギター・プロセッサー)で作り、PA卓へ直接送られる。
クリーンやクランチ、オーバードライブなどの基本となるサウンド・メイクは①で完結させ、コンパクト・エフェクターは飛び道具やファズなどの特徴的な音色を鳴らす際に使っている。
ギターからの信号は、ギター・プロセッサー①のINPUT 1に入力され、OUT 1/LからPA卓へ出力。
そのほかのペダルは、すべて①のFXループに接続されている。②〜⑦は番号順にFX 1のセンド/リターン内に接続。FX 2には⑧のみ。なお、⑨のシンセサイザーは、①のINPUT 2に入力されている。
ここからは各ペダルの使い方を解説しよう。まず、FX 1に接続された②〜⑦だが、これらは直接オン/オフをコントロールしている。
③のファズは、おもに左側のチャンネル(Torn’s Peaker)を使用。ファズファクトリーのような“グシャ”っとしたサウンドが欲しい際は右側のチャンネル(Soda Meiser)も同時に踏んでいる。
④のマルチ・エフェクターは、ディレイやリバーブなどの空間系エフェクトを担っており、“Quad Cortexよりも音の癖が強い、変化球的なサウンドが作れる”とのこと。⑤のリバーブは、ルーム、アンビエントなど、用途に合わせた残響音を複数プリセット。
ピッチシフト、ディレイなど様々な音色を生み出せる⑥は、グリッチ・ペダルとして活用。ライブではおもに「スカー」の2番Aメロ手前でそのサウンドを聴くことができる。
⑦は⑥と同様にグリッチ系サウンドを担う。ツマミをリアルタイムで操作しながら、ランダムな波形パターンを演出するため、テーブル上に設置されている。
「青のすみか」のサウンド・メイクを解剖!
Quad Cortexを使用した、綿密なサウンド・メイク
キタニタツヤの代表曲「青のすみか」をライブで演奏する際に、秋好がQuad Cortexで使用しているエフェクトと、そのパラメーターを紹介しよう。まず、プリセット内のシグナルチェーンから解説。
- Obsessive Drive(オーバードライブ)※常にオン
- Vemural Ray(オーバードライブ)
- FX 1 (※1)
- Parametric-8(イコライザー)
- Poly Octaver(オクターバー)
- Plate(リバーブ) or Ambience(リバーブ)
- Watt D103 Normal(ギター・アンプ)
- 412 Range PPC V30 ’02(キャビネット)
※1:FX 1では④Line 6/HX Stomp(マルチ・エフェクター)を使用。エフェクトの詳細は記事最下部で解説。
各エフェクトの詳細なパラメーターは以下の表のとおり。セクションによって細かく微調整しているが、基準となる数値を見ていこう。
Obsessive Drive(オーバードライブ)
このオーバードライブは常にオン。サビのカッティングや、コード・ストロークのクランチ・サウンドなどを担う。
DRIVE | 2.3 |
PEAK | LP |
TONE | 4.4 |
VOLUME | 7.8 |
Vemural Ray(オーバードライブ)
Obsessive Drive(オーバードライブ)のサウンドをブーストする際に使用する歪みエフェクト。サビに入る前の決めや、サビ終わりのオクターバーを使ったフレーズなどでオンにする。また、2Aのハイスピードなパッセージではボリュームを下げた設定をプリセットしている。
GAIN | 2.3〜5.0 |
TREBLE | 6.6〜7.3 |
BASS | 2.2〜3.8 |
LEVEL | 3.4〜3.6 |
Parametric-8(イコライザー)
イコライザーはパラメーターを動かしていないため、詳細は割愛。秋好曰く、このモデリングを入れるだけで好みの音色に近づくとのこと。
Poly Octaver(オクターバー)
サビ終わりのフレーズで使用するオクターバー。ここではObsessive Drive、Vemural Ray、Parametric-8、Poly Octaver、Ambienceと5種類のエフェクトを重ねがけしている。
DRY | 100.0% |
OCT | 80.7% |
SUB | 72.0% |
Plate(リバーブ)
イントロのクリーン・アルペジオで聴ける自然な残響音を生むリバーブ。ペダルボードに配置している⑤のReverb(リバーブ)だと生々しすぎる音色になってしまうため、このモデリングをチョイスしているとのこと。
MIX | 35% |
DECAY | 70% |
PRE DELAY | 60.0ms |
HIGH PASS | 200Hz |
LOW PASS | 3100Hz |
LF DAMPING | 50.0% |
HF DAMPING | 50.0% |
MOD DEPTH | 50.0% |
TRAILS | On |
Ambience(リバーブ)
サビ終わりのオクターバーを使ったフレーズで掛けているリバーブ。“自分が使えるリバーブの中で一番冷たい印象”と本人談。
MIX | 35.2% |
SIZE | Mod |
PRE DELAY | 7.8ms |
HIGH PASS | 80Hz |
LOW PASS | 6000Hz |
TRAILS | Off |
Watt D103 Normal(ギター・アンプ)
アンプ・タイプは、ハイワットのDR103をモチーフにしたモデルをチョイス。歪みは各種エフェクトを使用するため、クリーン・サウンドにセッティングされている。
GAIN | 4.3 |
BASS | 3.2 |
MID | 7.5 |
TREBLE | 7.4 |
PRESENCE | 6.4 |
MASTER | 5.0 |
OUTPUT | 3.2dB |
412 Range PPC V30 ’02(キャビネット)
セレッションのVintage 30を2発搭載した、オレンジのPPC412をシミュレートしたキャビネット・モデル。スピーカーごとに種類を変えているマイク名も記載した。
POSITION | 4.0 |
DISTANCE | 0.0 |
LEVEL | 0.0dB |
PAN | C |
MIC | Dynamic 57 |
POSITION | 4.0 |
DISTANCE | 0.0 |
LEVEL | -0.1dB |
PAN | C |
MIC | Ribbon 160 |
以上がQuad Cortexの設定だが、FX 1で使用するLine 6/HX Stomp(マルチ・エフェクター)の設定は以下のとおり。
FX 1:Line 6/HX Stomp(マルチ・エフェクター)の設定
AメロとCメロで使用しているディレイとリバーブのパラメーター。Cメロでは、ディレイのLevelを若干下げているのがポイント。
ディレイ(モデル:Dig w/Mod)
Time | 390ms |
Feedbk | 33% |
Speed | 35% |
Depth | 58% |
Mix | 59% |
Level | +2.6〜3.0dB |
Trails | Off |
リバーブ(モデル:Hall)
Decay | 7.8 |
Predly | 65ms |
Low Cut | 166Hz |
Hi Cut | 2.8kHz |
Mix | 100% |
Level | +2.0dB |
Trails | Off |
作品データ
『ROUNDABOUT』
キタニタツヤ
ソニー/SRCL-12719/2024年1月10日
―Track List―
- 私が明日死ぬなら
- 青のすみか
- Moonthief
- キュートアグレッション
- 化け猫
- 月光 (feat. はるまきごはん)
- 旅にでも出よっか
- ナイトルーティーン (cover)
- スカー
- 大人になっても
―Guitarists―
キタニタツヤ、秋好佑紀