2024年2月7日(水)にTOKYO DOME CITY HALLで開催されたクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ(以下、QOTSA)の来日公演。当日、2人のギタリストが使用する機材を撮影した。今回は、ディーン・フェルティタ(g,k)の使用機材を紹介。理想のサウンドを徹底的に追求した機材チョイスは必見。
取材・文:村田善行 通訳:トミー・モリー 機材撮影:小原啓樹
Guitars
Gibson USA/SG Standard
ArcaneのPUを搭載したSGスタンダード
王道のSGスタンダード。詳細は不明だが、現行品だと思われる。ピックアップはフロントにArcaneのSuper Foil Goldを搭載。リアはおそらくArcaneのPAFタイプのハムバッカーだと思われる。全弦2音下げのチューニング(C-F-A♯-D♯-G-C)にセッティングされていたので、ブリッジのオクターブ・サドルがかなりテイルピース側に寄っているのが確認できた。この日は未使用。
Echopark Instruments/Custom Guitar
メインとして使用されたカスタム・モデル
メイン・ギターとして使用された、ディーンによるEchopark製Bakersfieldのオーダー品。ピックアップはネック側にEchoparkのGold Foilタイプ、ブリッジ側はEchoparkによるカスタム品のハムバッカーが搭載されている。ブリッジはPigtail。ネックとボディはオールド・マホガニー材を使用。指板はブラジリアン・ローズウッドだと思われる。
使用楽曲
- 「No One Knows」
- 「Into The Hollow」
- 「Smooth Sailing」
- 「My God Is The Sun」
- 「Time & Place」
- 「Emotion Sick」
Echopark Instruments/Custom Guitar
グリーンが印象的なワンオフ・モデル
Echoparkのダブル・カッタウェイ・モデル。詳細は不明で、おそらくワンオフ・モデルだろう。特徴的なフロント・ピックアップはEchoparkのFoil Goldタイプで、リアのフィルタートロン・タイプもEchoparkのカスタム・モデルだ。ラップアラウンド・ブリッジはPigtail。この日は未使用。
Echopark Instruments/Custom Guitar
ハワイアン・コアが超烈なゲットー・バード・タイプ
EchoparkオリジナルのGhetto Birdをもとにしたオーダー品。ノン・リバース・タイプのヘッドや、オールドのハワイアン・コア材を使用したボディなど、特別仕様のワンオフ・モデルとなっている。チューン・オー・マティック仕様。ピックアップはEchopark製のハムバッカーだ。
使用楽曲
- 「Obscenery」
Fender/Troy Van Leeuwen Jazzmaster
ディーンも愛用するトロイのシグネチャー
ディーンが使用した、カッパー・カラーのトロイのシグネチャー・ジャズマスター。メイプル指板にブロック・インレイというルックスがトロイの美的センスを象徴している。オリジナル・ジャズマスターに忠実な仕様だが、65年型のグレイ・ボビン・ピックアップやプリセット・トーンのスイッチがトグル型になっているところなど、プレイヤー視点での仕様変更が興味深い。オリジナルはムスタング・タイプのサドルが採用されているが、本器はブリッジとトレモロ・ユニットがMastery製に交換されていた。
使用楽曲
- 「Make It Wit Chu」
Amplifier
Echopark Instruments/Vibramatic 23 & GMI 33F6(Head Amp)
Echopark Instruments 3×12(Cabinet)
2台のヘッドを1台のキャビネットで使用
ディーンのアンプはEchopark InstrumentsのVibramatic 23(上)とGMI 33F6(下)という、2台のヘッドがセットアップされている。
上段のVibramaticは23W出力で、6V6パワー管を搭載したアメリカン・スタイルのモデル。フェンダー系というよりもMagnatoneやギブソンのアンプに近いイメージかもしれない。コントロールはTONEとDRIVE、トレモロ/ビブラートのDEPTHとSPEEDのみ。トレモロ/ビブラートは使用されておらず、Ch.1に接続されていた。
ヘッドの上にはLehleのP-SPLIT Ⅲ(パッシブ・スプリッター)が置かれており、インプット直前に本機を経由しているが、ISOアウトから出力されているので、GMI 33F6との位相調整とグラウンド・ループ対策だと思われる。
下段のGMI 33F6は基本的にトロイの所有機と同じ仕様らしい。ディーンの個体はシリアルが4番。コントロールはVOLUME Ⅰ、VOLUME Ⅱ、HIGH、MIDDLE、BASS、PRESENCEの6つ。バック・パネルがはずされており、初段のEF86にはカバーがかけられ、パワー管にはPhilipsの5881/6L6が搭載されている。INPUT 2に信号が送られており、トロイとは異なりCh.1と2をリンクさせているのが確認できた。
2台のヘッドは1台のキャビネットに接続。スピーカーは3発で、すべて12インチのEchopark 75w WGSを搭載しているが、トロイと同じく2発と1発にセパレートして使用している。Vibramaticが2発、GMIが1発にそれぞれ接続されていた。
キャビネット内部にはPalmer PDI-09(DI)が2台配置され、2台のアンプの信号をそれぞれライン化しているようだ。マイキングはShure SM57をそれぞれのユニットに配置。スピーカーのエッジ方向を狙ってセットされていた。
Rack Systems
【Rack List】
①iConnectivity / Play AUDIO12(オーディオ/MIDIインターフェイス)
②iConnectivity / Play AUDIO12(オーディオ/MIDIインターフェイス)
③FURMAN / M-8Lx(パワー・コンディショナー)
④Radial / ProD8(DI)
⑤RJM Music Technology / Effect Gizmo(MIDIスイッチャー)
⑥RJM Music Technology / Effect Gizmo(MIDIスイッチャー)
⑦Gamechanger Audio × Third Man Records / PLASMA COIL(ディストーション)
⑧Electro-Harmonix / MEL9(メロトン・エミュレーター)
⑨Spontaneous Audio Devices / Son of Kong(EQ)
⑩Electro-Harmonix / Stereo Polychorus(コーラス)
⑪BOSS / DM-2W(ディレイ)
⑫BOSS / RE-20(ディレイ/リバーブ)
⑬Eventide / H9(マルチ)
ギターと鍵盤の信号をまとめるシステムの心臓部
ディーンのラック。しかし、この状態でしか撮影させてもらえず、ラックの奥に設置されているペダルが確認できなかった。ディーンの足下に置かれたMastermind GT(㉑)のパネルから推測すると、残りのペダルは下記のとおり。
- Electro-Harmonix / POG(ピッチ・シフター)
- ProCo / RAT(ディストーション)
- Ten Years / Decade(ディストーション)
- Dr. No Effects / Kafuzz!!!(ファズ)
- Way Huge / Atreides(ギター・シンセ/フィルター)
ラック内のペダルは、12個のループを備える後述の⑤⑥Effect Gizmoの各ループに接続されている。これらの一括オン/オフはMIDI接続された足下の㉑Mastermind GTで行なう。⑥Gizmoから2台のアンプ・ヘッドへと信号が送られている。
⑪DM-2Wはスラップ・バック・ディレイとして使用。
④ProD8には3台の鍵盤が接続されており、そこからPA卓に信号が送られていた。
Pedalboards
ボード❶
【ボード❶】
⑭Morley / WVO Effect Pedal(ワウ/ボリューム・ペダル)
⑮正体不明のシルバーのボックス
⑯Jim Dunlop / DVP1(ボリューム・ペダル)
⑰正体不明のシルバーのボックス(パワーサプライの横)
⑱KORG / Pitch Black Mini(チューナー)
⑲Jim Dunlop / DVP1XL(ボリューム・ペダル/エクスプレッション・ペダル)
⑳MXR / Iso-Brick Power Supply(パワーサプライ)
シンプルにまとめた足下
ディーンのギター・シグナルは、まず足下に置かれたボード❶内の⑭WVO Effect Pedalに接続され、その後、銀色のハンドメイド品らしき⑮ボックスに送られる。そこから⑯DVP1を通り、その後段にも⑰銀色のカスタム・ボックスが接続されているのだが、このボックスは電源もツマミ類もないので、おそらく単純なロッキング・ボックス(ケーブルをロックするためのもの)、もしくはトランス内蔵のパッシブ/バランス変換機ではないだろうか? ⑰からラックに信号が送られる。
同じボード❶には、ラック内の⑬H9のパラメーター・チェンジ用のエクスプレッション・ペダル(⑲DVP1XL)が配置されており、本機は㉑Mastermind GT/16に接続。
ボード❷
【ボード❷】
㉑RJM Music Technology / Mastermind GT/16(MIDIコントローラー)
㉒Radial / SGI TX(ギター・インターフェイス)
㉓Jim Dunlop / DVP1XL(ボリューム・ペダル/エクスプレッション・ペダル)
㉔Jim Dunlop / DVP1XL(ボリューム・ペダル/エクスプレッション・ペダル)
㉕Radial / JDI(DI)
㉖Handmade Junction Box
ボード❷を見てみると、ギター・サウンドをロスすることなく離れた位置にある機材同士をつなぐため、㉒RadialのSGI TX(バランス伝送システム)を介してラック内の⑤⑥Effect Gizmoと㉑Mastermind GTが接続されていた。ディーンのギター・シグナルはシステムの随所で補正や調整が行なわれており、ピュアな信号に対するこだわりが感じられる。
ボード❷の中のペダルは、㉑Mastermind GT/16と㉒SGI TX以外はすべて鍵盤用。
Keyboards
QOTSAを支える3台の鍵盤
ディーンのキーボードは3台。Moog Little Phatty(上段)、Nektar Panorama P6 Midi Keyboard(中段)、詳細不明のエレクトリック・ピアノ(下段)となっている。
ライブでのキーボード類は基本的にアンプを通過せず、ラック内の⑭Radial ProD8に接続されており、そこからメイン・コンソールへと送られていた。
作品データ
『In Times New Roman…』
クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ
BEAT RECORDS/Matador/OLE1947CDJP/2023年6月16日リリース
―Track List―
- Obscenery
- Paper Machete
- Negative Space
- Time & Place
- Made to Parade
- Carnavoyeur
- What The Peephole Say
- Sicily
- Emotion Sickness
- Straight Jacket Fitting
―Guitarists―
ジョシュ・オム、トロイ・ヴァン・リューウェン、ディーン・フェルティタ