切ない世界観の歌詞やキャッチーな音楽性が、若い世代を中心に人気を集めている3ピース・ロック・バンド、This is LAST。ギター・ボーカルの菊池陽報は、浮遊感のあるコード・サウンドから、“メタラー魂”が溢れ出たヘヴィな刻みまでを見事にポップスへと昇華する。2024年3月に行なわれたライブ時に撮影をした、彼の幅広いサウンド・メイクを実現する使用機材を紹介しよう。
文/撮影=福崎敬太
Kikuchi’s Guitars
Fender/American Standard Telecaster
細かなアップデートを加えながら、メインとして君臨し続ける
2019年頃に入手して以降、メイン・ギターとして活躍しているAmerican Standard Telecaster。シリアルナンバーから推測するに、おそらく2012年製。
ネック・プレートをフリーダム・カスタム・ギター・リサーチのTone Shift Plateに交換しているほか、内部の配線材をビンテージのものに、ブリッジ・サドルも黒の6連タイプに変更するなど、多くのカスタマイズが施されている。
中でも一見してわからない重要な改造ポイントは、自分の左手に合うようにナットの弦間ピッチを狭めている点。レコーディングなどでナロー・ネックのビンテージ・ギターを弾いていた時期に、その弦のタッチ感を求めて改造を施したそうだ。なお、前述のブリッジ・サドルもそのピッチに合わせたものをチョイスしている。
また、ネックを少しだけ順反りに調整しているそうで、これにより“しっかりネックが鳴ってくれる”という。
ピックアップは基本的にリアで、バラードなどではセンターをチョイスすることもある。
Gibson Custom/Murphy Lab 1961 ES-335 Reissue
入手してそのまま実戦投入!
2022年に大阪で購入し、そのまますぐにライブで使用したというES-335。現在は前述のテレキャスターとともに、メイン・ギターの1本として活躍している。
もとはストップ・バー・テイルピースだったが、ブランコ・タイプに変更。ブリッジとテイルピースの間にスポンジを挟むことで、共振を抑えてタイトな鳴りを実現している。また、音の伸びの良さを求めてブリッジ・サドルを交換しているそうだ。
ピックアップは基本的にリアをチョイスする。ボリュームやトーンなどはフルで、ニュアンスは右手のピッキングでコントロール。ちなみに、ピックアップの周りやキャビティにシールディングを施し、ノイズ対策をしている。
Gibson/1964 SG Standard Reissue
マエストロ・バイブローラを求めて
ギブソンに“マエストロ・バイブローラ搭載のSGを使いたい”とオーダーをして、借り受けた1本。改造などは施していない。
前述のES-335同様、ストップ・バーではないほうが好みのようで、曰く“独特の倍音が出るのが好きで使っています”とのこと。
Fender Custom Shop/Limited Roasted 1961 Stratocaster
購入したばかりの“未来のメイン”
東京・原宿のFENDER FLAGSHIP TOKYOで購入した、カスタムショップ製のストラトキャスター。貫禄たっぷりのハード・レリックが物語るとおり、値段は“高かった(笑)”そう。
入手の決め手はブレンダーで、フロント・ポジションの時にリアが、リア・ポジションの時にフロントのサウンドがブレンドできる。ストラトらしいサウンドからハムバッカーのような太い音まで出せるそうで、“今後はメインの1本になっていくんじゃないかなと思っています”とのこと。
Gibson/Les Paul Standard ’50s P90
P90サウンドをどう楽しむか
ギブソンから借りているというゴールドトップ・レス・ポール。本器のP90のサウンドはヘヴィで、どこで使うかは悩み中。現在は様々なセッティングで音作りを模索しているそうだ。
キッズの頃からレス・ポールを愛用してきたという菊池が、本器をどのように使うかが楽しみだ。
Pick & Capo
Kikuchi’s Amplifiers
菊池がステージで使用するアンプは2台。後述するペダルボードでプリセットごとに出力先が振り分けられているが、それはフレーズごとに細かく決められている。
大まかには、基本のサウンドがフリードマンのTwin Sisterで、コードの綺麗さや軽さを意識したい時はVOX AC30だという。
Friedman/Twin Sister Head & Buzz Feiten/212 Cabinet
海外で見つけ出した、“欲しかった”1台
菊池のメイン・アンプは、フリードマンのTwin Sisterとバズ・フェイトンの212 Cabinetのセット。Twin Sisterの入手には紆余曲折があったそうで、まずはそのエピソードをお届けしよう。
国内で見つけたTwin Sisterにはノイズがあり、購入前に修理を依頼していたが、その楽器店は不安定な世界情勢の煽りを受け、パーツが入手できなかったそう。1年ほど待っても一向に修理の目処が立たなかったため、海外マーケットをネットでチェックして本モデルを発見。アメリカから個人輸入で入手した。
2チャンネル仕様で、CH1をクランチ気味に、CH2をヘヴィに歪むようにセッティング。“ちゃんと歪ませているけど、歌の邪魔をしたくないから、ミドルの扱いを凄く気をつけている”そうだ。各ツマミは以下の写真のとおり。
また、Twin Sisterのセンド/リターンには、インペリカル・ラボ(Empirical Labs)のEL8X Distressor(コンプレッサー)を接続。
菊池曰く“音がちょっとだけ立ち上がってくれるというか、顔がこっちを向いてくれる感覚。そのほんのちょっとの違いが、最終的に大きな感動を生むので、重要な機材だと思っています”とのこと。
VOX/30th Anniversary Limited Edition AC30
This is LASTサウンドを長年支える“じゃじゃ馬”
フリードマンの導入前からメイン・アンプとして活躍していた、VOXのAC30。1990年にAC30の30周年を記念して発表された貴重な個体で、シリアルナンバーは0248。「殺し文句」の序盤で歌とギターだけになる時などは本機のサウンドだ。
“じゃじゃ馬で現場によって音が変わる”そうで、会場によってトレブルなどを中心に調整しながら使っている。基本的な考え方は“じわっと滲むような音に”という意識でセッティングを決めている。ヴェムラムJan Ray(オーバードライブ)と組み合わせて、ちょうど良い音を探るとのこと。
Kikuchi’s Pedalboard
【Pedal List】
①Free The Tone/JB-82S(ジャンクション・ボックス)
②BOSS/ES-8(プログラマブル・スイッチャー)
③Free The Tone/Silky Groove(コンプレッサー)
④Vemuram/Jan Ray(オーバードライブ)
⑤Free The Tone/PA-1QG(EQ)
⑥Paul Cochrane/Tim Overdrive V3(オーバードライブ)
⑦Xotic/EP Booster(ブースター)
⑧Free The Tone/Integrated Gate(ノイズ・ゲート)
⑨Line 6/HX Stomp(マルチ・エフェクター)
⑩BOSS/DD-500(ディレイ)
⑪strymon/Big Sky(リバーブ)
⑫BOSS/TU-3(チューナー)
⑬Vital Audio/VA-08 MkII(パワーサプライ)
進化中のライブ用ボード
菊池がライブのステージで使用するペダルボード。ギターからジャンクション・ボックス①を経由して、各ペダルを管理するスイッチャー⑧を通過したあと、①からアンプへと出力されている。
スイッチャー⑧には、各ループに③〜⑪が番号順に接続されており、⑨と⑩だけが同じループに入っている。ただ、ラインナップをアップデート中で、撮影時は暫定的なセッティングだった。チューナー⑫もスイッチャー②のチューナー・アウトに接続。
オーバードライブ④は軸となる歪みだが、“誰も持っていないものが欲しい”ということで⑥を入手。現在はレコーディングでメインの歪みとして⑥が活躍しているそうだ。
スイッチャーからMIDI信号を受けるEQ⑤は、各パッチに合わせてミドルのキャラクターを細かく調整しているほか、音量感もコントロールしている。
マルチ・エフェクター⑨ではオクターバーやコーラスなどのモジュレーションを、DD-500では付点8分やうっすらと掛かるディレイを、スイッチャー②とMIDIで接続して切り替えている。
リバーブ⑪はスイッチにあるとおり、「結び」、「バランス」、「# 情とは」の3曲で使うリバーブ感でそれぞれプリセット。そのほかの楽曲で使う際はこれらの中からチョイスされる。
ちなみに、スイッチャーのスイッチはバンクごとに接続されるペダルが変わるが、おおむねスイッチ上のラベルにあるとおり、歪みの段階で分けられている。ただ、右下にある“ANIKI-EX”だけは、特殊な音や一瞬しか使わないようなギミック的な設定が組まれており、このパッチは必ずVOXへと出力されているそうだ。
This is LAST one man live tour “HOME”
- 2024年2月23日(金)/北海道・札幌PENNY LANE 24
17:00開場/18:00開演 -SOLD OUT- - 2024年3月3日(日)/福岡・DRUM LOGOS
16:00開場/17:00開演 -SOLD OUT- - 2024年3月30日(土)/大阪・Zepp Namba(OSAKA)
17:00開場/18:00開演 -SOLD OUT- - 2024年3月31日(日)/愛知・Zepp Nagoya
16:30開場/17:30開演 -SOLD OUT- - 2024年4月21日(日)/東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
16:30開場/17:30開演 -SOLD OUT-
This is LAST one man live tour 2024 Autumn
- 2024年9月1日(日)/千葉・LOOK
17:00開場/17:30開演 - 2024年9月4日(水)/埼玉・HEAVEN’S ROCK SAITAMA SHINTOSHIN
18:30開場/19:00開演 - 2024年9月5日(木)/神奈川・F.A.D YOKOHAMA
18:30開場/19:00開演 - 2024年9月8日(日)/茨城・水戸LIGHT HOUSE
17:00開場/17:30開演 - 2024年9月14日(土)/岩手・盛岡the five Morioka
17:30開場/18:00開演 - 2024年9月15日(日)/宮城・仙台Rensa
16:30開場/17:30開演 - 2024年9月19日(木)/三重・四日市CLUB ROOTS
18:30開場/19:00開演 - 2024年9月21日(土)/京都・KYOTO MUSE
17:30開場/18:00開演 - 2024年9月22日(日)/奈良・NEVERLAND
17:30開場/18:00開演 - 2024年9月25日(水)/長野・CLUB JUNK BOX
18:30開場/19:00開演 - 2024年9月28日(土)/鹿児島・CAPARVO HALL
17:30開場/18:00開演 - 2024年09月29日(日)/熊本・B.9 V1
17:00開場/17:30開演 - 2024年10月3日(木)/山口・周南RISING HALL
18:30開場/19:00開演 - 2024年10月5日(土)/福岡・DRUM LOGOS
17:00開場/18:00開演 - 2024年10月6日(日)/広島・HIROSHIMA CLUB QUATTRO
16:30開場/17:30開演 - 2024年10月8日(火)/愛知・NAGOYA CLUB QUATTRO
18:00開場/19:00開演 - 2024年10月12日(土)/北海道・札幌PENNY LANE 24
16:00開場/17:00開演 - 2024年10月16日(水)/兵庫・神戸VARIT.
18:30開場/19:00開演 - 2024年10月18日(金)/石川・金沢AZ
18:30開場/19:00開演 - 2024年10月19日(土)/新潟・LOTS
17:00開場/18:00開演 - 2024年10月24日(木)/鳥取・米子AZTiC laughs
18:30開場/19:00開演 - 2024年10月26日(土)/愛媛・松山WStudioRED
17:30開場/18:00開演 - 2024年10月27日(日)/香川・高松DIME
17:00開場/17:30開演 - 2024年11月2日(土)/静岡・浜松窓枠
17:30開場/18:00開演 - 2024年11月3日(日)/愛知・DIAMOND HALL
17:00開場/18:00開演 - 2024年11月9日(土)/大阪・Namba Hatch
17:00開場/18:00開演 - 2024年11月21日(木)/神奈川・KT Zepp Yokohama
18:00開場/19:00開演
※情報は記事公開時のものです。最新のチケット情報や詳細は公式HPをチェック!
This is LAST公式HP:https://thisislast.jp/
作品データ
『HOME』
This is LAST
SDR/ZXRC-2107/2024年3月27日リリース
―Track List―
- カスミソウ
- 恋愛凡人は踊らない(retake)
- アウトフォーカス
- Any
- ラブソングにも時代がある
- バランス(retake)
- # 情とは
- 殺文句(retake)
- もういいの?
- おやすみ
- 結び(retake)
- 言葉にして
- 病んでるくらいがちょうどいいね(retake)
- 君と生きる
- 拝啓、最低な君へ(retake)
- ヨーソロー
―Guitarist―
菊池陽報