ギター・マガジン編集部が注目するカッティング系エフェクター16機種を、TAIKINGが試奏する本企画。まずはカッティングの定番エフェクター、コンプレッサーの機能をおさらいしておこう。
【PR】 文:鈴木誠 採譜:PURETONE MUSIC
*本記事は、ギター・マガジン2024年8月号の「カッティングに最適なエフェクターを探せ!」を再編集したものです。
サウンドにハリとダイナミクスを生む定番エフェクター
ギター用ペダル・コンプレッサーとして今も語り継がれる代表的なモデルに、MXRのDyna CompとROSSのCOMPRESSORがある。Dyna Compは赤い筐体に2ノブ、ROSSはグレーの筐体に2ノブ。二者は回路やサウンドの傾向に共通項もあり 、ペダル・コンプレッサーの双璧とされる。
2機種はどちらも1970年代に登場し、現在もその名を継承する現行品が存在する。マルチ・エフェクターなどに内蔵されたモデリングの音色名にも、Dyna Compは“Red”や“Dyna”、ROSSは“Grey”といった、それぞれの筐体色や製品名を匂わせるネーミングが見られる。それほどエレクトリック・ギターの歴史上、重要なペダルという証拠だろう。
ギター・サウンドとコンプレッサーといえば、もちろんカッティングを筆頭に、クリーン・トーンでのリードやスライド・ギターといった、アタック感やサステインを大切にするシーンでの使用が多い。コンプレッサーの効果として、よく“大きい音は小さくし、小さい音は大きくする”と説明されるが、動作原理的には“音の大きな部分を圧縮し、全体的に下がった音量を戻す(上げる)ことで、もともと小さな音も聴こえてくる”というのが正確かもしれない。
昨今では、より多くのノブでスタジオ機材のように扱えるペダル・コンプレッサーも充実。今回の試奏ラインナップも、シンプル操作でギターの音色として取り入れやすい、あえて呼ぶなら“ペダル・コンプ系”と、前段のみならず最終的な音質補正にも使いたくなるような“スタジオ・コンプ系”に分けられそうだ。
二大名機の登場から約半世紀。現在はギター・サウンドを構築する周辺環境も進化・変容しており、コンプレッサーの用途も“サステインを伸ばす”、“アタックを強調する”だけでなく、ギター・サウンド全体にハリを持たせるバッファー的な効果や、デジタル機材の最後段にセットし、フィジカルなノブで素早く補正する“現場機材”としても活躍の場を広げている。
基本パラメーター
Threshold [スレッショルド]
これより強い信号が入力されたらコンプレッサーが音量を抑える、という“しきい値”。
Retio [レシオ]
圧縮率のこと。スレッショルドで決めた“しきい値”を超えた入力を、どれくらい抑えるかの比率。2:1であればスレッショルドを超えた分の信号レベル(dB)を半分に、∞:1であればスレッショルドを超えないように動作する。
Level [レベル]
アウトプット・ゲインとも呼ぶ。最終的な出力音量を調整。コンプレッション設定により下がった音量を適正に戻すために使われる。
Attack Time [アタック・タイム]
スレッショルドを超えた信号が入ってから、どれぐらいの時間でコンプレッションするかの値。圧縮効果が立ち上がるまでの時間を決める。
Release Time [リリース・タイム]
入力信号がスレッショルドを下回ってから、どれくらいの時間でコンプレッションのかかりをゼロに戻していくかの値。圧縮効果が消えていくまでの時間を決める。
TAIKING直伝
コンプ・ペダルに最適な試奏フレーズ
試奏の際にTAIKINGが弾いていたフレーズを抜粋。エフェクターの効果によって湧き出てくるフレーズも変わってくるが、楽器店で試奏する際は、まずこんなフレーズを試してみてはいかがだろうか?
ギター・マガジン2024年8月号
- 特集:カッティング“超”至上主義 Featuring コリー・ウォン
- カッティングに最適なエフェクターを探せ!〜注目のコンプレッサー、フェイザー、オートワウ、エンベロープ・フィルター16機種をTAIKINGが徹底試奏