ここまで、18台の最新小型ギター・アンプを試奏した感想を鷲山和希(Suspended 4th)に聞いた。今回の企画を通じて、鷲山が思い描いた小型アンプの未来とは。
取材/文:鈴木誠 撮影:大谷鼓太郎
小さな音量でもいいから
アンプから音を出すことを味わってほしいですね。
18機種を一気に試奏してもらいましたが、いかがでしたか?
最近の小型アンプに対するイメージがだいぶ形になってきました。今回実感したのは、練習から楽曲制作まで色んな使い方ができる小型アンプだからこそ、使い勝手も含めた様々な側面から製品をチェックしておいたほうがいいなということです。もちろん音の好みだけでそのアンプを愛せればいいですが、“ワイヤレスの手軽さを重視したい”とか、“アプリの機能的にはずせないものがある”と思っている部分があれば、そのほうが優先度は高いかもしれません。
何を優先するかは悩ましいですよね。
買う前に、自分がどんなシチュエーションで、どのような用途でその小型アンプを使いたいのかをちゃんと書き出してみたりして、意志を持って選ぶことが大事ですね。マルチ・エフェクターを選ぶような感覚に近いかなと思います。自分も身に覚えがありますが、機能的に満足していない部分があったり、アプリの操作性が馴染まなかったりすると、せっかく買っても意外と使わなくなっちゃうのが小型アンプなんですよね。実際は20〜30万円するような良いギター・アンプを買うのと同じぐらいの悩ましさがあるなと改めてわかりました。
今、鷲山さんの生活に1台加えるなら、どれを選びますか?
今だったらKATANA-AIRですね。ワイヤレスも含めた使い勝手が魅力的で、これがあればもっとギターを触る機会が増えるなと思います。もっと大きな音量を出せる環境であれば、KATANA-AIR EXのほうが良いんですけど、価格も踏まえて総合的に考えると、KATANA-AIRのバランスが良いと感じました。
今回の試奏を通じて、小型アンプにどんな未来が見えましたか?
“どんなシチュエーションでも良い音を楽しみたい”というコンセプトは将来も変わらないと思うので、それが技術革新でさらに広がっていくような未来を感じますね。
昨今はワイヤレスが付属されるモデルも多くなっています。
今回試してみて、ワイヤレスでギターをつなげられるのはやっぱり良いなと思いました。無線と有線を比べれば、もちろん有線のほうが音の解像度にしてもベターですけど、小型アンプならではの利便性を考えると全然許せます。こういうアンプではむしろ、サウンドより機能面の進化を望みたいですね。トランスミッターを充電する手間がより少なくなるとか、さらなる利便性アップに期待しちゃいます。
そういえば、ジョー・ボナマッサが“小型アンプをバスルームに置いてギターはリビングで弾く”っていう練習をしているらしく、それは大きいステージで弾いている時のリバーブ感を把握する意味があるみたいなんです。ワイヤレスの電波が遮蔽物に十分強くなったら、シールドをつながなくても同じことができるなと思いました。
技術の進化によってギター練習の可能性も広がりますね。
あと、やっぱりAI技術は想像が広がります。今のところは音作りに対する提案に限定されますけど、例えば将来的には部屋の鳴りをマイクでキャプチャーして出音を自動調整してくれて、場所が変わっても同じ音場が得られるような機能が入ったりするんじゃないでしょうか? 例えばアンプをデスクに置いているのか、床に置いているのか、部屋のサイズは……みたいな要素を分析して、サウンドをチューニングしてくれたり。どこでも同じように良いサウンドを楽しめるようにという方向で、ますますの進化が期待できますね。
これから小型アンプの購入を検討しているユーザーに一言お願いします!
普段からガッツリ音量を出してギターを弾ける環境があったり、出先ではギターを弾かないような人であれば出番は少ないかもしれませんけど、自分のように出先でもギターを弾いたり、ギターの練習や音作りでも遊んでみたいという人には小型アンプが強力な相棒になります。小型アンプが手元にあることでギターを弾く時間が増えるなら、すぐに買うべきだと思います。
最近はオーディオ・インターフェース経由でPCからギター・サウンドを出したり、ヘッドフォンだけでギター演奏を楽しんでいる人も多いと思いますけど、やっぱり小さな音量でもいいからアンプから音を出すことを味わってほしいですね。いちギタリストからのメッセージとして、“空気の揺れをコントロールしている”という感覚をなるべく多くの人に育てていってほしいです。みんな、空気を揺らしていきましょう!