今や多くのギタリストたちが愛用するようになったアンプ・シミュレーター。このページでは、DSM & HumboldtのSIMPLIFIER Xを、ギタリストの小川翔による試奏レビューとともに紹介する。
文＝鈴木誠 製品撮影＝星野俊
＊本記事は、ギター・マガジン2025年9月号の特集記事『自宅からステージまで1台で完結！ アンプ・シミュレーターのススメ』の一部を抜粋し、再構成したものです。
DSM & Humboldt
SIMPLIFIER X
完全アナログ回路の多機能シミュレーター
ここがポイント！
- アナログ回路ならではのシンプルな操作性。
- VOX系、フェンダー系、マーシャル系の使い分け&組み合わせ。
- ステレオ・リバーブも内蔵。
- 付属フット・スイッチでチャンネル切り替えとリバーブのオン／オフが可能。
チリのエフェクター・ブランド、DSM NoisemakerとHumboldt Pedalsが共同開発したプリアンプ&アンプ・シミュレーター。ゼロ・レイテンシーの完全アナログ回路で設計され、“ゼロワット・アンプ”を標榜する。
内部には2つの独立したアンプ・ブロックがあり、それぞれにプリアンプ、パワーアンプ、キャビネット・シミュレーション、エフェクト・ループ、アウトプットを装備。
“AMP B”は各アンプ・モデルの標準バージョン、“AMP A”は改造バージョンをモデリングしており、クリーンからハイゲインまで構築できる幅広さが魅力だ。
出力のモードもパラレル、2チャンネル、デュアルモノの3種から選択が可能。
ギター・サウンドの要となるプリアンプのキャラクターは、VOX風の“AC BRIT TB（A）”と“AC BRIT（B）”、フェンダー風の“USA ROD（A）”と“USA（B）”、マーシャル風の“MS 800（A）”と“MS BRIT（B）”の6つから選択可能。
パワー・アンプとキャビネット・シミュレーションでは、それぞれのプリアンプにマッチングされた王道のチョイスを選べるだけでなく、“VOX風プリアンプにスタック・キャビネット”といった自由度の高い組み合わせにも対応。
電源部分のコンプレッション感やスピーカーのニュアンスを微調整できるノブも備えるなど、細やかな音作りに素早く対応可能な、シンプルかつ奥深い操作性となっている。
筐体上面もしくは側面のノブとスイッチですべての操作が可能なので、多くのデジタル機材のようにメニュー画面の階層深くに潜ることなく、各パラメーターに直接アクセスできるのが魅力だ。
3モードのステレオ・デジタル・リバーブを一体化しているのも便利なポイント。
チャンネル切り換えとリバーブのオン／オフに対応するフット・スイッチも付属する。
さらにAUX IN端子やヘッドフォン端子、XLR DI出力も備えており、ステージから宅録、自宅練習まで幅広く活用できる1台だ。
OGAWA’s IMPRESSION
実機アンプの仕組みを理解している人には
かなり楽しい機材だと思いますね。
まずは試奏した第一印象を教えて下さい。
音作りの部分が完全アナログ回路ということで、デジタル機材では気になることもあるレイテンシーがゼロというのは利点だと思います。レイテンシーが多い、つまり弾いてから音が出るまでのタイムラグが長いと、弾き心地に影響するんですよね。
あと、ぱっと見ではノブやスイッチが多くて扱いが難しそうな予感がしましたが、ちゃんとパネルに情報が書いてあるので予備知識がなくても読めばわかりますし、構造を理解してしまえば実にシンプルで直感的です。
上からプリアンプの列、パワー・アンプの列、キャビシミュの列という並びになっていて、チャンネルごとにマスター・ボリュームがあるから、チャンネルを切り換えながら演奏する際に音量バランスを揃えるのも一瞬ですね。
基本的にVOX、フェンダー、マーシャルのサウンドを切り替えて使えるという考え方のようですね。
そうですね。しかも、それぞれちゃんとキャラクターがよく出ています。
キャビネット・シミュレーションもそれぞれのプリアンプ・タイプに合わせたものが3種類用意されていて、本来の組み合わせと違うものも選べますが、ちゃんと音色の変化がありますね。アナログなのに音色がしっかり変わってくれるのはいいと思います。ギター・アンプに関する一定の知識があれば、プリアンプ、パワーアンプ、キャビネット、スピーカーの各モードの名前が伝えようとしているイメージもわかりますから、音作りは早いです。セパレート・タイプの実機アンプを使ったことがあって、仕組みをよく理解している人にとってはかなり楽しい機材だと思いますね。
音色の再現度はどうですか？
いい感じだと思います。僕は日頃からフェンダー・アンプのクリーンを愛用しているんですが、ハムバッカーのギターをつないでもちゃんとフェンダー・アンプらしいクリーンな下地を作れるところに感心しました。
デジタル機材のフェンダー系サウンドは、レス・ポールのようなハムバッカーのギターをつなぐといきなり少し歪んだところから始まってしまうことも少なくないのですが、このモデルはまったく歪んでいない状態のクリーンが作れて好印象です。
使い勝手はどうでしょうか？
現場でも全然使えるなという印象です。例えばステージ上などで、音量の制約を受けずにプリアンプ部分を思いきり歪ませられるのは便利ですし、歪ませてみてもノイズを感じませんね。
個人的にはフェンダー系の“USA”というプリアンプをクリーンにして、ストラトキャスターをつないだ音が一番のお気に入りです。
どういった場面で活躍してくれそうですか？
アウトプットで2つのチャンネルの音を混ぜるモードも選べたり、かなりマニアックな使いこなしができそうです。パワー・アンプのところにレゾナンスとプレゼンスのコントロールがあるのも“わかってるなあ”という気持ちにさせてくれます。とても実践的な機材ですね。シンプルに使うなら、これ1台に空間系とブースターだけあれば困らないんじゃないかな。
ヘッドフォン端子があるので、忙しく飛び回るミュージシャンなら地方へライブに行く時にホテルでの練習用に使ったりしても便利そうです。ライブ・シーンとかちょっとした宅録、プリプロであれば、いつものエフェクト・ボードにアンプとしてこれを1台加えれば便利に使えますね。2チャンネルあるので、日頃からチャンネル切り換えのできるアンプを使ってる人にも馴染みやすい設計でしょう。
もしくは真空管アンプのバックアップとしてこれを用意しておいて、もしアンプがトラブったらSIMPLIFIER Xにそのままエフェクト・ボードをつなぎ替えるという使い方もアリだと思います。コンパクトな機材だからこその活用法ですね。
DSM & Humboldt
SIMPLIFIER X
【スペック】
●チャンネル数：2
●プリアンプ：【A】AC BRIT TB / USA ROD / MS 800 【B】AC BRIT / USA / MS BRIT
●パワーアンプ：AC BRIT / USA / MS BRIT
●キャビネット：COMBO / TWIN / STACK
●外形寸法：125（W）×105（D）×65（H）mm
●重量：490g
【価格】
77,000円（税込）
【問い合わせ】
フックアップ TEL：03-6240-1213 http://www.hookup.co.jp
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DSM & Humboldt
SIMPLIFIER MKII
2ch仕様のSIMPLIFIER Xに対し、こちらはシングルchのシンプルな構成。プリアンプはVOXのAC30、フェンダー・ベースマン、SIMPLIFIER XのAMP Bのもとになったプレキシ・マーシャルがモデルだ。
キャビネット・シミュレーターはステレオ構成で、3種類のキャビネットを選ぶスイッチと、3タイプのスピーカーを連続可変で調節できるノブがL/Rのそれぞれに備わる。
コンパクトだが出力端子の充実ぶりも健在。デジタルのプレート・リバーブも内蔵している。
DSM & Humboldt
SIMPLIFIER MkII
【価格】
55,000円（税込）
【問い合わせ】
フックアップ TEL：03-6240-1213 http://www.hookup.co.jp
