今や多くのギタリストたちが愛用するようになったアンプ・シミュレーター。このページでは、IK MultimediaのTONEX Pedalを、ギタリストの小川翔による試奏レビューとともに紹介する。
文=鈴木誠 製品撮影=星野俊
*本記事は、ギター・マガジン2025年9月号の特集記事『自宅からステージまで1台で完結! アンプ・シミュレーターのススメ』の一部を抜粋し、再構成したものです。
IK Multimedia
TONEX Pedal
ソフトウェアで作り込んだ音色をコンパクトなサイズで運用


ここがポイント!
- 専用アプリケーションのTONEX Editorで詳細な音作りが可能。
- プラグインで定評のあるモデリング・テクノロジーの“AI Machine Modeling”。
- コンパクトで持ち運びやすいサイズと重量。
- TONEX MAXとAmpliTube 5のソフトウェアが無料で付属。
イタリア・モデナに本拠地を置くIK Multimedia。その定評あるプラグイン・ソフトのAmpliTubeに用いられるアンプ・モデリング・テクノロジー、“AI Machine Modeling”によって作成されたTone Modelの音色をステージに持ち出せるペダルとして開発されたのがTONEX Pedalだ。
本体には最大150種類のプリセットを保存可能。Tone Modelのほかにノイズ・ゲート、イコライザー、コンプレッサー、2種類のディレイ、5種類のモジュレーション、6種類のステレオ・リバーブも収録したオール・イン・ワン・ソリューションとなっている。
192kHz/24bitの低ノイズ・コンバーター、5Hz~24kHzの周波数特性、最大123dBのダイナミック・レンジを持ち、リアルにキャプチャーされたアンプ、アンプ&キャビネット、歪みペダルといったTone Modelの音質を損なわずに出力できる。
パネルのレイアウトはプリセット選択などの操作ダイヤル類と、3バンドEQ、ゲイン、ボリュームといったシンプルな構成。16セグメント×8文字のディスプレイがパッチ名称などを表示する。音色の管理など詳細なコントロールはPC用のソフト“TONEX Editor”から行なうことで、本体は操作系を厳選して、ボードにも組み込みやすいコンパクト・サイズに仕上げている。
また、TONEX Pedalを購入すると、TONEX MAXとAmpliTube 5のソフトウェアが無料で付属するのも見逃せない。TONEX MAXには1,250種類以上のTone Modelが付属。世界中のユーザーが作成したTone Modelもクラウドの“ToneNET”から無制限にダウンロードできる。
1つのサウンドをAmpliTube 5から楽曲制作時のプラグインとして読み込んだり、TONEX Pedalに保存してステージで鳴らしたり、それぞれの音色を一元管理できるのがメリットだ。
OGAWA’s IMPRESSION
パソコン上で音を作っておいて、
現場にはこれだけ持っていけばOK。

このモデルは本体での操作性というより、パソコン上で作ったサウンドをここに入れて持ち運ぶという性質が強いです。
なるほど、ではパソコン用のエディター“TONEX Editor”を使って操作してみましょう。音作りの仕組みは、アンプ、アンプ&ペダル、アンプ&キャビネット&ペダルを組み合わせたTone Modelを選ぶというスタイルですね。プリセットの一発目にDumbleの音が入っていましたが、いきなりちゃんとDumbleっぽいサウンドです。そしてコンプレッサーやモジュレーション、ディレイ、リバーブといった空間系を個別に配置できます。
Tone Modelは物凄い数が収録されてますね。初期状態でもたくさん入っていますけど、オンラインのToneNETからダウンロードすることもできます。例えばマーシャルの“プレキシ”とひとくちに言っても、再現のポイントが機種やメーカーによって様々なので、選択肢が多ければ自分の求めるプレキシ・サウンドにより近いものを探せて便利そうです。
本当に収録数が凄いですね。
しかも、自分のお気に入りのアンプやペダルをインターフェースにつないで“TONEX MAX”ソフトからTone Modelとしてキャプチャーしてしまう機能もあるわけですから、もう無限ですね。とことん追求していくなら、愛用の実機を自分好みのセッティングにした状態でキャプチャーしてしまえばいいわけです。それがこの持ち出しやすいサイズに全部入って、フット・スイッチやEQノブも表に出ていますから、パッと見の印象以上に現場でも扱いやすそうです。
他メーカーのフラッグシップ機のような豊富なアウトプットや“全部入り”の機能がなくても十分、という人には価格的にも魅力です。このクオリティで実売5万円台というのはちょっと驚きですね。
IK Multimediaといえば、プラグインのAmpliTubeを使ったことはありますか?
はい。AmpliTubeにはフェンダー・アンプに特化した“Fender Collection”というフェンダー公認のパッケージがあったので、それを使っていたことがあります。当時、色々と試した中で、それが一番フェンダーっぽい音をしていたんですよね。そういう風に“プラグインに強いメーカー”というイメージがあるので、あくまでこのTONEX Pedalはプラグイン出身のサウンドを持ち出すための箱で、基本的な操作はパソコンの画面 (TONEX Editor)がメインというのも納得です。
PCでは、EQノブで操作する周波数帯域をどこにするかまで設定できます。上手く使えば、例えばアンプ・モデルはDumble系を選んでいても、実機のDumbleとは異なる帯域に効くEQでサウンドメイクできたりもする。マニアックな使い方ができますね。
どんな人にオススメできそうですか?
コンパクトで持ち出しやすいので、プリプロみたいなシーンでも便利そうですよね。パソコン上で音を作っておいて、現場にはこれだけ持っていけばOK、という使い方ができそうな印象があります。
それと、このTONEX Pedalを買ったら“AmpliTube 5”のプラグインも無償でついてきて、楽曲制作向けにもひと通りのものが手に入ると思うとお買い得ですよね。プラグインのパックを買うだけでもそれなりに値段がしますから。“オーディオ・インターフェースを買ったらソフトがついてくる”、というパターンの、もっと贅沢なバージョンという印象です。ですから宅録重視というか、プラグインとしてのAmpliTubeが気になっている人は、このTONEX Pedalを買っちゃったほうが早いような気がします。宅録から始めていつかライブをやりたくなった時に、レコーディングした時の音をそのままTONEX Pedalに入れて持ち出せる。やっぱりプラグイン出身のメーカーなので、自信のあるサウンドを外にも持ち出せるようにした、という製品開発の順序が見えますよね。
最終的な出力を担う“TONEX Cab”もあるし、シリーズ全体でTONEXというシステムを使えば便利だよ、という提案がよく伝わってきました。
IK Multimedia
TONEX Pedal
【スペック】
●プリセット:150
●外形寸法:176(W)×142(D)×55(H)mm
●重量:906g
●専用アプリケーション:TONEX Editor
●付属ソフトウェア:TONEX MAX、AmpliTube 5
【価格】
69,300円(税込)
【問い合わせ】
フックアップ TEL:03-6240-1213 http://www.hookup.co.jp
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TONEX One

TONEX Pedalと同じく、AI Machine ModelingによるTone Modelが使えるミニ・ペダル。ペダルボードにも組み込みやすいサイズ感になっているのがポイントだ。
20種類のプリセットを本体内に保存可能で、小さな操作パネルながら3バンドEQやノイズゲート、コンプレッサー、リバーブのパラメーターを調整できるため、現場での対応力は高いだろう。TONEX SE、AmpliTube 5 SEのソフトウェア・ライセンスが付属する。