今や多くのギタリストたちが愛用するようになったアンプ・シミュレーター。このページでは、KemperのKemper Profiler Playerを、ギタリストの小川翔による試奏レビューとともに紹介する。
文=鈴木誠 製品撮影=星野俊
*本記事は、ギター・マガジン2025年9月号の特集記事『自宅からステージまで1台で完結! アンプ・シミュレーターのススメ』の一部を抜粋し、再構成したものです。
Kemper
Kemper Profiler Player
プロファイル技術の先駆者による最小タイプの最新モデル


ここがポイント!
- 本プロファイル分野の代表格であるKemperによる最もコンパクトな最新モデル。重量はわずか約1kg。
- 10個のバンクに50のリグを登録可能。
- 専用アプリケーションのRig Managerと連携してリグのエディットや管理が可能。
- 世界中のユーザーが共有しているリグや公式プロファイルを自由にダウンロードできる。
実機のアンプやエフェクターのサウンドを取り込む“プロファイル”を広めた先駆者であるドイツのKemper。2011年に登場した“Kemper Profiling Amplifier”は、ツアーやレコーディングなどで環境が変化しても常に同じサウンドと弾き心地を得られるとして受け入れられ、地位を確立した。
そんなKemperでは現在、原点であるアンプ・ヘッド・タイプだけでなく、19インチのラックマウント・タイプ、パワーアンプを持たないフロア・タイプ・モデル、そして今回取り上げるペダル・タイプのシリーズ最小モデル、Profiler Playerもラインナップしている。
Kemperでは本機を“コンパクト・エフェクター2台分のサイズに収まるアリーナ・グレードのツアー機材”と表現しており、Kemper独自のプロファイリング技術によって抽出されたトーンとフィールを最小サイズで持ち出せるのが魅力だ。Profiler Playerは10個のバンクに合計50のリグを登録できる。
本体手前側に備わる3つのフット・スイッチは、左右がリグ(パッチやプリセットのこと)の切り換えで、中央がエフェクトのオン/オフ。パネルの左上には、2つのエフェクトを操作するボタンとノブも装備。これらで操作したいエフェクトは、あらかじめPCソフトやスマートフォン用アプリの“Rig Manager”で指定できる。表示ディスプレイこそ持たないものの、ノブ自体も“押しながら回す”ことで別パラメーターを調節できるなど、シンプルながら操作性に配慮されている。
Kemperといえばプロファイリングだが、必ずしも自分の機材を取り込んで使うことだけが魅力ではない。プロのミュージシャンやエンジニアが制作し、実機と聴き比べるA/Bテストに合格した公式プロファイルがKemperから公式で提供されており、それらのサウンドを使うだけでも十分にプロファイル技術の恩恵は受けられるのだ。
もちろん、世界中のユーザーが共有しているリグをダウンロードすれば、サウンド・バリエーションは無限だ。

OGAWA’s IMPRESSION
アンプの仕組みを理解している人が使い込めば、
かなり理想の音を追求できそうです。

プロ・ギタリストにもユーザーが多いKemperですが、こちらはその中でも最小のモデルです。
Kemperということは、プロファイリング・データを入れて持ち出すタイプの機種ですね。自分のシステムに組み込んだことはありませんが、何度か弾いたことはあります。このプロファイリングという機能や、最近広まってきたキャプチャーという概念はKemperがパイオニアだと思いますし、そういう意味では偉大なメーカーだと思います。
Kemperといえばアンプ・ヘッド型の印象が強いですけど、ラック・タイプとか、大きめのフロア・タイプもありましたよね。これは、あそこまで多くのフット・スイッチはいらないとか、アンプ・ヘッドを持っていくまでもない状況だったりする時に、ギター・ケースのポケットに入れていける感じ。アマチュアの人でもリハスタに持ち込みやすそうですね。
音色はどうでしょう?
もともと用意されていたリグを試していますが、第一印象としてはマーシャル系の歪みサウンドが良い感じです。特にプレキシ風のサウンドは音も弾いた感触も凄く良いですね。これなら実機をプロファイルする使い方をしなくても、プリセットだけでかなり遊べるんじゃないでしょうか。アンプの仕組みを理解している人が使い込んだら、かなり理想の音を追求できそうです。
パワー・サギング(Power Sagging)とか、コンプ感、チューブ・シェイプといった、かなりマニアックなパラメーターにアクセスできるのも面白いなと思います。やはりプロファイリングは、ある1つの場面の音色を切り取る感覚なので、キャプチャーするスタジオの環境などによって結果はけっこう変わりそうですね。世間で配布されているIRも有料や無料でクオリティに差がありますし。
そういう意味でも、“Kemper=自分でプロファイル”というイメージにとらわれず、もともと用意されているリグのサウンドを使いこなすのも1つの使い方だと思います。
KemperシリーズがMK2 (マークツー)になるというタイムリーなニュースがあります。このProfiler Playerに限っては、最新機種ということもあり、もともとMK2相当のハードウェア性能を持っているため、ソフトの無償アップデートで進化するそうです。
MK2ではエフェクト専用のスロットが7つ用意されて、合計20のエフェクト・ブロックが使えるようになるんですね。スロットが増えるならライブ・ユースでのメリットが増えますし、これ単体でより作り込んだサウンドを扱えます。本体を買い換えずに中身が大幅進化するのは嬉しいですね。
Kemperはこのジャンルの製品では登場が早かったこともあってか、今となってはエフェクトのスロットが少ないイメージでした。なので、そこが強化されるなら、足下の機材を1台で完結させられる可能性もさらに高まりそうです。
最初のアンプ・ヘッド型が出てから10年以上が経過して、色んなライバルも出てきて盛り上がっているモデラー市場に合わせて、ついに大型アップデートという感じでしょうか。作り込んだデータ類はそのまま使えるのでしょうから、長年のKemperユーザーも置いてかない感じに好感が持てますね。
この製品はどんなギタリストにマッチすると思いますか?
やはり一番に、既存のKemperユーザーが思いつきます。何年も使い込んでリグを作ったり、プロファイルした音が揃っていたりという人にはフィットする機種なのかなと。
立ち位置で言うと、例えばTONEXはプラグイン・ソフト、つまりPC側から始まっている製品群ですが、これは実機ありきのプロファイルという観点から出発していますよね。好みもあると思いますが、ライブと楽曲制作で同じ音を使いたいとか、お気に入りの機材をワン・パッケージにして持ち出したいという人の選択肢の1つになると思います。
この機種を単体で見ると、やっぱり物理的に小さくて軽いのは良いですね。パッと見はディスプレイもなくて操作が難しそうというか、現場で細かな調整はできないのかなと思ったのですが、よく見ればEQノブがあったり、チューナー機能も内蔵していたり。想像以上に現場の足下でも扱いやすい機種なのかなと思いました。
Kemper
Kemper Profiler Player
【スペック】
●保存可能なリグ数:50種類
●外形寸法:145(W)×166(D)×68(H)mm
●重量:1.11kg
●専用アプリケーション:Rig Manager
【メーカー希望小売価格】
132,000円(税込)
【問い合わせ】
コルグお客様相談窓口 https://www.korg.com/support_j/